友人宅に急にお呼ばれした場合やちょっとしたプレゼント、自宅でのカジュアルなランチ会などの際に、近所のスーパーやデパートなどで5,000〜1万円で買える“ちょっといいワイン”を知っておくと大変便利なもの。おいしいのは絶対条件で、ちょっと蘊蓄も語れると最高ですよね。そんな「街中で買える、1万円以下の“お宝ワイン”」を、年間1000種類近いワインをテイスティングし、つねにおいしいワインを探し求めているワインブロガー・ヒマワイン氏がご紹介。

「農協の造るワイン」の実力
関東を中心に、ほぼ全国に出店しているワインショップに「ヴィノスやまざき」があります。
1913年の創業。1994年からワインの直輸入をはじめ、現地のワイン商を通さずに生産者から直接買い付けるシステムを「蔵直®」と名付けたパイオニア的存在。
ショップとしての大きな特徴はそんな企業としての成り立ちと深く関わっていて、そのほとんどが直輸入ワイン(ヴィノスやまざき的に言うところの蔵直®ワイン)である点。
そのため、店内が独自の生態系というか、ここでしか見られないワインばかりという印象になります。ヴィノスやまざきでしか買えないワインがあるという、そういうワインばっかりなのです。
必然、ヴィノスやまざきでワインを選ぶ場合、店員さんに相談して選んでもらうか、あるいは己の野生の勘を頼りに「これだッ」というものを探すか、ふたつにひとつということになります。そして今回は、後者の方法で1本のワインを選んでみました。
ワインの収穫を行っているのでしょうか、カゴのようなものを肩に担いだ女性がラベルには描かれています。よく見ると女性の髪の毛はぶどうの房と葉。なんとなく、これ赤ワインで着彩したんじゃない? っていう淡い色調も素敵です。というわけでいわゆるジャケ買いをしたのですが、これが大正解だったのでした。
ワインの名前は「ユニメドック 2019」。価格は税込で3,608円という、お得といえばお得だし高いといえば高い絶妙な値段。産地はフランス・ボルドー地方のメドック地区。品種はメルローが60%、カベルネ・ソーヴィニヨンが40%とあります。
2019年ヴィンテージと、ほんの少し熟成が進んだ状態。ボルドーのワインは、ときにリリース直後は渋みや酸味を強く感じがちですが、7年の時を経て、ワインも少し肩の力が抜けてきたのでしょうか、いい感じに柔らかくなっています。
ボルドーというと渋い! 重い! というイメージがあったりもしますが、このワインはラベルの印象の通りにとても柔らかく、ジューシー。スルスルと体に染み込むような旨さがあり、ぶどうの品質の高さを思わせます。
メインで使われているメルローは、カベルネ・ソーヴィニヨンと並ぶボルドーの二大品種のうちのひとつですが、なんといっても穏やかな渋みと柔らかい果実味が魅力の品種。そのよさが爆発しています。
なんだこりゃ、めちゃくちゃうまいな、とワインについて調べてみると、生産者である「ユニメドック」は約140軒の栽培農家と契約をしている協同組合。キャッチコピーは「30年前に出会った無名の農協のメチャ旨赤!」なのでした。140軒のネットワークを活かし、その年とくにいい区画のぶどうを使用してワイン造りを行っているのだそうです。
みなさんにぜひ覚えていただきたいワインの豆知識として、「協同組合の造るワインは大概、安くてうまい」というものがあります。
自社の畑だけでワインを造る場合、いい年もあれば悪い年もあるのは必然となりますが、多くの契約農家からぶどうを仕入れる協同組合の場合、いい年・悪い年の差が少なくなり、品質が安定。毎年そこそこ以上にうまくてしかも安い、みたいなワインが生まれやすいような気がするのです。
「農協の造るワイン」というとロマンチックなイメージは失礼ながらあまりないかもしれませんが、質実剛健、名より実、みたいなたしかな品質があるケースが多くあり、この「ユニメドック 2019」は私の珍説を強く補強する証拠のひとつとなってくれそうです。
というわけで、お近くに「ヴィノスやまざき」がある方は、髪の毛がぶどうの女性が描かれたラベルを目印に、ぜひこのワインを探してみてはいかがでしょうか。
ヒマワイン
年間約1000種類のワインを飲み、「ヒマだしワインのむ。」というブログを運営するワインブロガー。高いワインも安いワインも、地球上で造られるすべてのワインが好き。

