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2024.06.25

和田秀樹の医者ではなく、大先輩に聞け 不妊治療に来る人の9割は、若い頃にダイエットをしていた人!?【柴田博×和田秀樹③】

健康に長生きするには「コレステロールは下げる」のが常識。でも実はこれ、間違いなのです。実証研究に基づく対談は“目から鱗”の連続。日本人の生活を根本から変えてしまうかも。『80歳の壁』著者・和田秀樹が“長生きの真意”に迫る連載。今回の対談者は医学博士・柴田博氏。第3回。

柴田博/Hiroshi Shibata(左)
医学博士。1937年北海道生まれ。北海道大学医学部卒業。桜美林大学名誉教授。東京都健康長寿医療センター研究所名誉所員。老年学についての研究と教育を一貫して続けている。著書に『長寿の噓』『なにをどれだけ食べたらよいか。』など著書多数。

痩せ願望は危険!

和田 日本は高齢化率が上がっているのに健康常識はそのまま。この状況を変えなきゃいけないと僕は思っています。

柴田 本当にそうですね。

和田 高齢者だけじゃなく、若い人の意識も変える必要がある。僕の知り合いに「日本一の不妊治療の名医」と言われる人がいて、北九州の病院に全国から人が訪れる。その医師が「不妊治療に来る人の9割は若い頃にダイエットをしていた人だ」と言っています。

柴田 子宮が育たないんです。

和田 そうです。ダイエットは危険なんですよ。

柴田 痩せる必要がないのに痩せようとしている。

和田 先日も朝の情報番組で女性アスリートの生理の話をしていました。摂取カロリーより運動の消費量のほうが高くなると痩せてくる。そのうちに生理が来なくなるんですが「そうなったらアスリートとして一人前だ」と評価されていたらしい。そんなおかしな理論がまかり通っていたんですよ。

柴田 若い頃から痩せるのは危険と言えます。

和田 脳についても、低栄養がよくないことはわかっています。朝食を抜く子は成績が悪いとか、食べる品目が少ない子ほど成績が悪いことは、データからも明らかです。でもこれは当たり前の話なんですよ。だって栄養は人間が生きる源なんですから。高齢者も若い人も、それは同じことです。

柴田 それなのに、痩せるのがいいと思い込んでいる。

日本、韓国…痩せることを煽っている国は、少子化に苦しんでいる

和田 おそらく世界的に見ても日本と韓国だけですよ。痩せるほうを煽っている国は。その結果、日本と韓国は少子化に苦しんでいるわけです。

柴田 僕も子どもの問題では過去に大議論をやりました。「小児肥満が増えてる」と問題になった時です。実際は体重が多い児童と少ない児童に2極分解していて、僕の計算では“痩せ”のほうが増えてました。それなのに「肥満が増えていて大変だ」と宣伝されてしまいました。

和田 はい、そうです。

柴田 1990年代には、「2500g未満の低体重児は、将来、様々な成人病になりやすい」という研究報告が出されています。なのに日本は、妊婦の体重制限を始めてしまった。

和田 よせばいいのに。

柴田 1980年代は日本の栄養状態が少し改善して2000kcalを超えていたんです。その時には低体重児の割合は5%もいなかったのですが、今では10%になった。倍増しているんです。

和田 これはかなりやばい。

柴田 20世紀を境にカロリーが減った国は世界でも2つしかない。日本と北朝鮮だけです。先進国もアフリカも横ばいです。日本はそのぐらいいい加減なことをしてるんです。

和田 日本の平均寿命もこれからは危ないですね。

柴田 そうですね。若い人が今すぐに死ぬことはないけど、将来的に日本は「長寿の国」と言えなくなるかもしれません。

和田秀樹/Hideki Wada(右)
精神科医。1960年大阪市生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て現職。30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わる。『80歳の壁』『70歳の正解』など著書多数。

元気な高齢者は栄養がいい

和田 僕は高齢者を診ていますが、元気な人は栄養状態がいい人なんですよ。

柴田 そうですね。

和田 長生きするなら元気でいたいですよね。柴田先生がまさにそうですが、頭が冴えているから仕事もバリバリできるし、何をしても面白い。

柴田 やはり活力の基は栄養ですよ。

和田 森鴎外の時に反省すればよかったのに、日本の医学界は逆に意固地になり、いわゆる”栄養学”を軽視しました。ビタミンB1の歴史を見ても、鈴木梅太郎が見つけた抗脚気因子を医学会は長い間認めなかった。

柴田 医者は治療だけをすればいいと思ってますからね。

和田 国民皆保険になって、どんな病気をしても薬は出す、検査データを見て異常値を正す、ということにはなったけど、本当は病気になる前に、患者さんを元気にしなきゃ。コロナの時なんてひどいもんですよ。高齢者を家に閉じ籠もらせ、弱らせてしまった。

柴田 そうそう。

和田 運動しないし、動かないと食べなくなるから、フレイルみたいな高齢者がすごく増えてしまいました。

柴田 「人と会うな」とは言うけど、大事なことを言わない。

和田 「ちゃんと栄養を摂ってくださいね」とか「外に出られないなら、せめて家の中では運動してくださいね」と、誰も言いませんでした。高齢者は注意して、と言う割には、高齢者を全然見ていない。

柴田 全く見てない。年を取ると健診も受けなくなるんだけど、そもそもデータがあっても無視ですよ。2001年に「コレステロール値を一定以下にすると死亡率が上がる」というデータが雑誌に出たことがありました。「総コレステロール220㎎以上でシンバスタチンという低下薬を投与された5241人を6年間追跡した」という極めて重要な調査です。『日経メディカル』というメジャーな健康雑誌に載ったのに、誰もこれを引用しない。みんな無視ですからね。

和田 人命より利益優先。

柴田 コマーシャリズムですよ。警戒しないといけませんね。

※第4回に続く

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和田秀樹の「医者ではなく、大先輩に聞け!」

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=鈴木規仁

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