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2024.02.22

新井カープ躍進の立役者、広島・床田寛樹のターニングポイント

チーム最多の11勝を挙げ、防御率はリーグ3位の2.19と自己最高をマーク。新井カープ1年目、リーグ2位躍進の立役者である広島東洋カープの床田寛樹がスターとなる前夜に迫った。連載「スターたちの夜明け前」とは

Unsplash/Mike Bowman ※写真はイメージ

怪我を乗り越え、広島左腕のエースに

2023年は新井貴浩監督が就任し、4年連続のBクラスから2位へと躍進した広島。その最大の立役者と言えるのが、左のエースへと成長した床田(とこだ)寛樹だ。

毎年のように良いピッチングを見せながらも、怪我などもあって1年を通じて活躍できないシーズンが続いていたが、2023年は開幕から順調に勝ち星を重ね、自身初の二桁勝利となる11勝をマーク。

セ・リーグ3位となる防御率2.19もマークするなど大きな飛躍の1年となった。

大学2年までは無名の投手

そんな床田は兵庫県尼崎市の出身で、高校時代は大阪の箕面(みのお)学園でプレー。2年夏からエースとなったものの、大阪府内でも上位進出を果たすことはできず、全国的には無名の存在だった。

大学は岐阜県学生リーグの中部学院大へ進学。2学年上には現在のチームメイトである野間峻祥(のまたかよし)も在籍していた。大学では1年春からリーグ戦で起用され、1年秋には明治神宮大会でも登板しているが正直、印象には残っていない。

その存在を認識したのは2年秋の明治神宮大会出場をかけた「愛知・東海・北陸大学王座決定戦」の対愛知学院大戦でのことだ。

この試合はすでに広島からドラフト1位で指名を受けていた野間がツーベース1本、スリーベース1本を含む4安打と大暴れし、中部学院大が延長10回の末に3対2で勝利をおさめている。

この試合で床田は同点の8回から登板。迎えた先頭打者は、現在西武で活躍している源田壮亮だったがキャッチャーファウルフライに抑えると、その後も3イニングを1人の走者も許さないパーフェクトピッチングでチームの勝利に大きく貢献したのだ。

ただ当時のプロフィールを見ると180cm、70kgとまだまだ細身で、ストレートも130キロ台後半と決して目立つ数字ではなく、残りの2年間で体が大きくなれば楽しみだというくらいの認識だった。

続く明治神宮大会でも2試合にリリーフ登板していずれも無失点と好投したが、その印象が大きく変わることはなかった。

別人のように力強くなった大学4年

ようやく床田をドラフト候補として意識するようになったのは大学4年春、2015年5月17日に行われた春のリーグ戦、対朝日大戦でのことだった。

この日は前の試合で登場した中京学院大の吉川尚輝(現・巨人)が最大の注目選手であり、会場となった長良川球場のスタンドにはNPB全12球団、合計47人ものスカウトが集結していた。

床田は吉川の“ついで”に視察されていた立場とも言えるが、そこで5回を無失点、5奪三振と見事なピッチングを披露し、強烈にアピールしたのだ。当時のノートにも以下のようなメモが残っている。

「2年秋からの成長著しい。ひじの使い方と腕の振りは今中慎二(元・中日)を彷彿とさせる。少しクロスにステップするのは気になるが柔らかく、しなやかで強さもある腕の振りは素晴らしい。

上半身に無駄な力が入っておらず、楽に腕を振って投げられ、140キロ台前半のストレートでも打者の手元での勢いは十分(この日の最速は144キロ)。体重がもう少し増えれば150キロも出そうな雰囲気。高めだけでなく、低めも勢いが落ちない。

(中略)110キロ台のカーブで緩急をつけ、決め球も縦、横のスライダー、チェンジアップ、ツーシームと多彩」

ちなみにこの時のプロフィールを見ると180cm、72kgと体が劇的に大きくなっていたわけではないが、メモにもあるように腕の振りが2年秋とは別人のように力強くなっていたのをよく覚えている。

さらに床田はその年の8月24日に行われた東海地区大学選抜チームと巨人二軍とのプロ・アマ交流戦でも先発投手を任され、2回を無失点と好投を見せており、この頃にはドラフト候補として十分な評価を得るようになっていた。

さらなる飛躍が期待されるサウスポー

ただプロ入り後の床田は決して順風満帆だったわけではない。

入団1年目の夏に左ひじを痛めてトミー・ジョン手術を受けて長期離脱。2019年に2年ぶりに一軍復帰を果たしたが、2022年8月には試合中にベースカバーに入ろうとして転倒し、右足を骨折する怪我も負っている。

しかし、そんな度重なる怪我を乗り越えて、現在は大学時代とは見違えるほど体格も立派になり、ピッチングも年々すごみを増している印象が強い。

2024年も6年ぶりのリーグ優勝を目指すチームの柱として、2023年を上回る成績を残してくれることを期待したい。

■連載「スターたちの夜明け前」とは
どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。

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スターたちの夜明け前

どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。

TEXT=西尾典文

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