好評いただきました、山中伸弥の研究者魂 経営者脳 Studyは最終回を迎えました。そこで今までの全12回を振り返ります。
Study1「iPS細胞論文発表から10年の時を経て」
最初のiPS細胞(※1)論文を発表してから、今年で10年の節目を迎えます。「ノーベル賞を受賞して人生が変わったのではないですか?」とインタビューなどで質問されることがありますが、私の人生が変わったのは、iPS細胞を作製した瞬間です。
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Study2「研究者としてのジレンマ。経営者としての学び」
亡くなった私の父は、東大阪市で小さな町工場を経営していました。「お前は経営者に向いていない」と言われ、医師を志すように。そんな私が今や500人近くを率いる立場になり、経営者の難しさを痛感しています。研究者として頑張ってきた自負はありますが、経営者としては自信も経験もないのです。
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Study3「日本ならではの創薬の道筋を作る」
iPS細胞の医療応用というと、細胞を移植して治療する「再生医療」のイメージが強いですが、iPS細胞を使った「新しい薬の開発(創薬)」も非常に重要なテーマです。ひとつの薬を開発するには、20年、30年という長い時間と、膨大な資金を要します。私の父が患(わずら)っていたC型肝炎も父の死から25年後に特効薬が開発され、今では治せる病気に。私たちはiPS細胞技術で、現在の創薬プロセスを変えたいと思っています。
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Study4「研究所におけるビジョンの共有の仕方」
毎年、CiRAでは仕事始めに年頭集会を行っています。年に数回は、CiRAメンバーの前で話をする機会があるのですが、心がけていることが2つあります。
1「あまり堅くならず、ユーモアを交える」
2「研究所のビジョンを 思い起こさせる」
皆が集まる貴重な機会なので、紋切り型のスピーチにならないように、年頭集会では正月休みのエピソードに触れ、ユーモアを忘れないようにしています。
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Study5「人に伝えるための密かなるトレーニング」
研究者が自分の研究成果を一般の方にわかりやすく、正確に伝えることは、とても大切なことです。しかし、研究者は「どう伝えるか」というトレーニングをあまりしません。私は、アメリカ留学時代に初めてプレゼンテーションをきちんと習ったことで、伝えることの重要さに気づきました。私の人生にとって大きな収穫で、当時学んだことは今でも役に立っています。
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Study6「iPS細胞を使ったがん研究の現在地」
世界にはまだまだ治せない病気があります。親交があったラグビー元日本代表監督の平尾誠二さんが患(わずら)っていたのは、胆管細胞がんでした。神戸大学医学部時代にラグビー部に入ったのは、実は平尾さんに憧れたのがきっかけです。数年前に仕事を通じて出会ってから、彼のかっこよさ、人柄に魅了され、大好きになりました。そして、心から尊敬していました。
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Study7「日本とアメリカの研究サポート体制の違い」
先日、世界的な科学誌『ネイチャー』に衝撃的な記事が載りました。科学研究において、日本からの論文発表数が減少していることなどから、科学のトップランナーとしての日本の地位が危ない、という記事でした。たしかに、残念ながら日本の研究者は、本来の研究以外の仕事に追われすぎています。私も、これでは創造性のある研究が生まれにくいと考えています。
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Study8「安藤忠雄さんのこと」
「マラソンランナーの山中です」。最近、講演の冒頭では、こんな自己紹介でウケを狙うことがあります。とはいえ、研究者でマラソンランナー、というくらいのギャップでは、プロボクサーを経て、世界的に有名な建築家になられた安藤忠雄さんには敵いません。
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Study9「iPS細胞で寿命を延ばす!?」
iPS細胞を使った再生医療研究について話をすると、「人間は永遠に生きられるようになるのでは?」という質問をされることがよくあります。事実、世界には老化を防ごうと本気で研究している人たちがいますが、私はiPS細胞研究によって不老不死を目指しているわけではありません。
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Study10「時間の使い方」
ここ数年は、京都にあるiPS細胞研究所(CiRA[サイラ])と、研究者として所属している、米・サンフランシスコのグラッドストーン研究所を行き来する生活が続いています。加えて、国内や海外の出張があるため、CiRAに丸一日いることができなかったり、出勤が少ない月もあります。そんな時でも所長として判断すべきことが多々ありますから、滞りなく進めるために時間の使い方は工夫しています。
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Study11「発信していくことの大切さ」
テレビや新聞等の取材をよく受けているのですが、メディアの影響力は大きいので誤解を与えないように、話す時は言葉を選び、緊張感をもって臨んでいます。
所長としての職務のうち、エネルギーの半分をiPS細胞研究に関する周知や寄付募集に費やしているわけですが、こうしてメディアの取材を受けるのには理由があります。
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最終回「55歳を迎えて」
先日、誕生日を迎え55歳になりました。医学で多くの人の役に立ちたいと、臨床医から研究者の道に進んで20年以上が経ちます。アメリカ留学から戻ってきて、アメリカと日本の研究環境の違いから、うつのような状態になったり、大きな研究成果をなかなか出せず、その苦しさから研究者を辞めようとしたこともありました。辞めずに続けたからこそ、今があるわけですが、当時は約500名が所属する研究所の所長になるとは思いもしませんでした。
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*本記事の内容は17年9月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)