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2017.04.03

山中伸弥「研究者魂 経営者脳 ~iPS細胞実用化を目指して~」Study6

世界にはまだまだ治せない病気があります。親交があったラグビー元日本代表監督の平尾誠二さんが患(わずら)っていたのは、胆管細胞がんでした。神戸大学医学部時代にラグビー部に入ったのは、実は平尾さんに憧れたのがきっかけです。数年前に仕事を通じて出会ってから、彼のかっこよさ、人柄に魅了され、大好きになりました。そして、心から尊敬していました。

研究者魂6

Study6「iPS細胞を使ったがん研究の現在地」
平尾誠二さんから学んだ、人を叱る4つの心得

同学年の彼が昨年10月に53歳の若さで亡くなり、一緒に呑んでいた時に教えてくれた、さまざまなことをよく思い返すようになりました。一番心に残っているのが「人を叱る時の4つの心得」です。

1 プレイは叱っても人格は責めない
2 あとで必ずフォローする
3 他人と比較しない
4 長時間叱らない

彼のような素晴らしい人と一緒に過ごすことができて本当に幸せでした。彼には感謝の気持ち、そして病気を治してあげることができなかったことへの申し訳ない気持ちがあります。

iPS細胞から、がんと戦うT細胞を大量に作る研究

研究者魂6-1

(C)京都大学iPS細胞研究所 京都マラソン2017で自己ベストを15分以上更新し、3時間27分45秒でゴール。日課とする地道な練習の積み重ねのお陰です。

がんは現代の死因1位といわれており、身近な人をがんで亡くされた方も多いと思います。iPS細胞研究所(=CiRA[サイラ])では金子新准教授、山田泰広(やすひろ)教授の研究グループがiPS細胞を使ったがんの研究を進めています。これまでの研究でがん患者さんの身体の中では、がんと戦うTリンパ球(=T細胞)が弱っていたり、がんに抑えこまれていることがわかってきています。免疫細胞であるT細胞はがん細胞を攻撃する能力があるため、iPS細胞からT細胞を大量に作り、それを患者さんに移植する研究を進めているのです。数年以内の実用化を目指していますが道のりは険しく、ここからが正念場です。また、がんはこれまで遺伝子の異常によって起こるとされていましたが、その他の原因によってがんが発生する例も報告されてきています。iPS細胞技術を利用し、遺伝子そのものではなく、その働き方の異常によるがん発生の仕組みを解明することを目指した研究も同時に行っています。

こうした研究によって健康寿命を延ばし、多くの方の命を救えるようになれば、いつか平尾さんに報告できるなと思っています。

山中伸弥の今月のひと言。
研究の進捗はCiRA(サイラ)公式ウェブサイトやCiRA Newsletter(年4回発行)でご紹介しています。iPS細胞研究に関心を持っていただくことが研究者たちの励みになりますので、ぜひご覧ください。
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/publication.html
また、読者の方の声も聞いてみたいと思っていますので、この連載に関してご感想やご希望がありましたら、ips-kikin@cira.kyoto-u.ac.jp にメールでお送りください。

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