ゲーテ読者に薦めたいとっておきの1冊をピックアップ! 今回は、クィン・スロボディアン、ベン・ターノフの『マスキズム 新たな独占の時代』をご紹介。

クィン・スロボディアン、ベン・ターノフ 著/樋口武志 訳 飛鳥新社 ¥2,200
人類をどこへ連れていくのか?
多くの評伝がそうであるように、本書はイーロン・マスクの生い立ちを丹念に掘り起こし、人物像に迫っている。ひと味違うのは、彼の過去をたどっていくと、人類がたどる未来が見えてくる点だ。これは稀代のイノベーターであるマスクの評伝にしか立ち現れない芸当であり、読み応えだろう。
火星に人類を移住させる壮大なビジョンを持つ天才実業家、あるいは過激な妄言によって人種も国家も分断していく破壊者。誰もがマスクに対する評価や見解は違うが、彼のバックグラウンドに目を向け、言動を精査していくと、その正体が浮かび上がってくる。なぜTwitter社を買収したか? なぜトランプと蜜月になり、後に袂を分かつことになったのか? なぜ急激に右傾化したのか? これまでの疑問符が氷解し、私は神経衰弱のカードが小気味よく合わさるような感覚になった。
実像がわかってくると、彼が描く未来や野望も見えてくる。詳細は控えるが、「最終目的」の原点に、幼少期に見た日本のアニメがあるとは知らなかった。果たして彼は、私たち人類をどこへ連れて行こうとしているのか。本当に火星なのか。本書からる未来を考え、備えを始めることは無意味ではない。
桝本壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として数々の人気番組を担当。NSCの講師も務め、令和ロマンなど教え子をM-1に輩出。著書に『時間と自信を奪う人とは距離を置く』がある。

