英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第319回。

疲弊するスタッフを救った“top banana”
最近よく仕事で一緒になるイギリス人カメラマンと、また現場で再会しました。その現場にはクライアントや広告代理店の人がたくさん来ていて、みんなそれぞれに撮影やインタビュー内容に意見するため、いったい誰がOKと言ったら撮影終了になるのかわからず、スッタフは疲弊していました。
そんな中で、ひとり、人の良さそうなおじさまが現場に入ってきました。その瞬間たくさんいた広告代理店やクライアントサイドの人たちがピリッとした雰囲気に。それを見てイギリス人カメラマンはこっそりこう言いました。
He may be the top banana here.
直訳すれば「彼はここのトップバナナかもしれない」となります。
「トップバナナ」ってなんでしょうか。私も疲れてイライラしていたので「は?」とちょっとキレ気味で聞いてしまいましたがこういうことでした。
top banana=グループの中で一番偉い人、中心人物
こっそりchatGPTに語源を聞いてみたら、1920年代のアメリカの舞台では「バナナの皮で滑るギャグ」が人気で、そこから派生して1番人気のコメディアンのことをtop bananaと呼んでいたことが始まりだということ。
他にはこんな使い方ができるそうです。
Ever since the promotion, she’s been the top banana in the marketing department.
(昇進して以来、彼女はマーケティング部のトップになっている)
となると、こんな言い方もできるということです。
Steve Jobs was the top banana at Apple.
アップルなのにバナナ。
もちろん「スティーブ・ジョブズはアップルのトップだった」ということですが、1文にフルーツが盛りだくさんで、なんだかフルーツパフェが頭の中に浮かびました。
それまで、広告代理店やクライアントに「やっぱりこうしたほうがいい」「いやこっちだ」といろいろ言われ、ちょっとうんざりしていた我々スタッフ陣は「あそこにたくさんいる人たちはみんな働くバナナだ」と思うことで、殺伐とした現場を乗り切りました。
たくさんのバナナが一生懸命意見を交わし、冠を被ったトップ・バナナの一存で、もろもろが決定。バナナたちがパチパチと拍手をしていると思うと、なんだかかわいらしく感じられます。
バナナのことばかり1日考えてしまったので、帰りにコンビニで数十年ぶりに「まるごとバナナ」を買って帰りました。とても美味しかったです。