英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第243回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは
ハンバーガーとフライドポテトで満足する男は平凡!?
最近彼氏ができたという、日本語ペラペラのアメリカ人女子とオンラインで話していました。
「今の彼は、元彼と全然違う」とあんまりにも言うものだから、そもそも元彼はどんな人だったのかと聞いてみたら、彼女は突然英語でこう言いました。
He is a meat and potatoes kind of guy.
「彼は、肉とジャガイモのような男です」と言われても、ちょっと意味がわかりません。
ジャガイモっぽい男の人はなんとなくいるような気がしますが、「肉とジャガイモっぽい」とはどういうことでしょうか。
聞いてみたらこういうことでした。
meat and potatoes kind of person=特徴のない、シンプルな人
複雑な味わいの料理より、肉とジャガイモ食べていれば満足する、飾り気のない人。
そんな意味合いだそうです。
肉とジャガイモを、アメリカ人が大好きなハンバーガーとフライドポテトだと考えてみると「まぁ、彼はハンバーガーとフライドポテトで満足する、平凡な人だから」というようなことを言っているのだと思います。
日本で言えば「まぁ、彼は牛丼屋さえ行けたらいい人だから」みたいなことでしょうか。
特徴がない、平凡である、飾り気がない、ハンバーガー屋または牛丼屋で満足する、というのはけっして悪いことではありません。しかし彼女は続けてこう言いました。
My ex is a meat and potatoes kind of guy, but Ken is very experimental and open-minded about trying new things.
「元彼は、ハンバーガーとフライドポテトで満足する、平凡な人。だけどケンはすごく実験的で、新しいことにもどんどん挑戦するの」
ケンはもちろん新しい彼氏の名前です。
ハンバーガー屋に行き続けている平凡な元彼より、新しいレストランをどんどん開拓していくような、アグレッシブなケンが、今はいいということでしょう。
「平凡である」ということは悪いことではないのですが、この文脈だと多分彼女は元彼の悪口を言っている感じがします。
“meat and potatoes”は人間以外にも使える
meat and potatoesは、人間を説明する以外にも使われるフレーズということで、その場合は少し意味が変わるようです。ケンブリッジの英英辞典にはこういう例文が書かれていました。
Teachers have a lot to do, but time spent in the classroom is the meat and potatoes of the profession.(教師はやることがたくさんあるが、教室で時間を過ごすことはプロとして基本的なことである。)
この場合のmeat and potatoesは「基本的な」とか「もっとも大事な」という意味になるようです。確かにアメリカの人にとって肉とジャガイモはもっとも基本的で、もっとも大事な食材です。日本人で言ったら米と魚、みたいなものでしょうか。
その日は、しばらくケンがどんなに素敵か彼女は語り続けていました。
けれど肉とジャガイモが頭から離れなかった私は、彼女と別れるとすぐにファミリーレストランに飛び込み、普段あまり食べないハンバーグ定食を注文してしまいました。付け合わせはもちろんフライドポテトです。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
英語力ゼロのまま渡英、行けばなんとかなると思いつつなんともならなかった2年間のイギリス生活。帰国後はせっかく覚えたいくつかの英単語も忘れ去り、それでも時々は英語と格闘してみる現在、40歳。
「その英語でよく外国に行ったね」「めちゃくちゃカタカナ英語だね」と、なぜか日本人に笑われながらも、覚えたフレーズの数々。いつかはうまくなりたいから、恥を忍んで今日もブロークンイングリッシュ。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。人のイングリッシュを笑うな。