35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第188回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
月の裏側にいます!?
2週に1度ほどスカイプで話すアメリカ人の方がいます。
その彼女がある日、スカイプに出た瞬間にこう言いました。
I am over the moon with my new laptop!
直訳すると「新しいパソコンと月の向こう側にいる」となります。
きっとアメリカンジョークなのだろう、意味はわからないけど。
そう思ってスルーしたのですが、そこから彼女はペラペラの日本語で、新しいパソコンを買えた喜びを語っていました。
どうやらこういうことでした。
be over the moon=とても嬉しい、幸せ
「新しいパソコンがあってすっごく嬉しい!」と彼女は言っていたのです。
確かにこれまでスカイプをしていた時は、パソコンのカメラが良くないのか映し出される彼女の顔は常に画質が悪く、ぼんやりとしかその表情を把握できませんでした。
けれども新しいパソコンに変えてからは、毛穴まで見えるのではないかというほどくっきり彼女の顔が写っています。
これまで、突然画面がフリーズしたり、動作が遅かったりとパソコンが古いことでかなりのストレスを溜めていたようなので、とにかく今は何をクリックするにも嬉しいのだそうです。
オックスフォードの英英辞典では、be over the moonのことを
extremely happy; delighted(ものすごく幸せ、嬉しい)
と説明しています。
単なるhappyではなくextremelyがついていますので、通常の嬉しいよりも、もっともっと嬉しいことがあった時に使う言葉のようです。
例文はこうなっていました。
They're going on holiday on Wednesday so they're all over the moon.
(彼らは、水曜日は休暇なので、みんなものすごく幸せ)
確かに水曜日に祝日があるとものすごく幸せな気分になりますし、通常の土日の幸せとはまた違った喜びがあります。
be over the moonは「嬉しい」を強調したい時に使う言葉なのでしょう。
日本語だと「天にも昇る思い」と言いますが、英語では「月の向こう側に行っちゃうくらい嬉しい」となっているのかもしれません。
もとは、16世紀の童謡から生まれたというこのフレーズ、イギリスのサッカーの試合後のインタビューで、チームのマネージャーが言ったことから広がったなどさまざまな説があります。
正直「天にも昇る思い」という日本語のフレーズは日常会話ではあまり使わないですが、このbe over the moonは結構な頻度で使うようです。使っていい嬉しさのレベルを彼女に聞いたところ、いくつか例をくれました。
I got the job! I am over the moon!
(就職決まった!すごく嬉しい!)
Their children were over the moon when they were given a puppy.
(子犬をもらった時、子供たちはとても喜んだ)
確かに、希望した会社に就職が決まった時の喜びは、アイスでアタリが出た時に感じる喜びとはまた違った、大きなものです。子犬をもらった時と、お菓子をもらった時では子供たちの喜び方も違うでしょうから、やっぱり普通よりも少し大きい喜びの表現であることがわかりました。
「でも、別に人生を変えるほどの喜びでなくてもいい、パソコンが新しくなったとか、道でお金を拾ったとか、嬉しかったら使えてしまう。だってこれスラングだからさ」
ということ。ちなみに彼女は、上司に仕事を無茶振りされた時、一切笑わず嫌味っぽくこう言うんだそうです。
I am over the moon about it!
(それやりたかったんです、ちょー嬉しい)
アメリカ人でもこういう嫌味を言うんだなぁとなんだか感心しました。
私も以前上司に無茶振りされた時、無表情で「ハイよろこんで〜」と言って「ここは居酒屋か?」と怒られたことがあります。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者による英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。