吉田麻也をはじめ、南野拓実、冨安健洋、菅原由勢ら日本代表メンバー、 英国プレミアリーグの超一流選手たちからもオファーが殺到する治療家・木谷将志氏が、日本人の3大不調「腰痛」「肩こり」「股関節痛」がみるみる改善する“身体ほぐし”を伝授。ポイントは“筋肉の端っこ”をほぐすことだという、木谷流リカバリー術とは? 『世界が認めた神リカバリー』(サンマーク出版)の一部を抜粋して紹介する。【その他の記事はこちら】

リカバリーを早めてくれる「起始・停止」
「起始」とは、筋肉の両端のうち、身体の中心に近いほうを指す。
「停止」とは、筋肉の両端のうち、身体の中心から遠く、手先足先に近いほうを指す。
そして最も大切なことだ。痛覚の受容体は「起始・停止」に集中している。痛覚というのは痛みのこと。受容体というのは、刺激をキャッチするアンテナのようなものと思ってもらえばいい。
「痛覚が集中している」というのを言い換えれば、「ほとんどの痛みや疲れはココで感じている」とも言える。
経験上、筋肉の端っこにあたる「起始・停止」あたりには、少しさわっただけでビーンと電気が走るような痛点が密集している。この「痛み」はグッグッと揉んであげたり、圧をかけながら筋肉を何度か動かしたりすることで、少しずつ痛みが和らいでいく。
だから、身体のどこかに不調があるなら、まずはそこにある筋肉の「起始・停止」部分を揉みほぐすことが、最も効果的なアプローチとなる。
それではいったいなぜ「起始・停止」を攻めると、筋肉が緩まって疲労回復が早まるのか。
筋肉の起始・停止あたりには「腱紡錘(けんぼうすい)」(ゴルジ腱器官)というセンサーが多く存在している。じつはこの「腱紡錘」というセンサーには、「硬くなった筋肉を効率よく緩めてくれる」働きがあるのだ。
たとえば長時間同じ姿勢をとり続けることや、ストレスなどの緊張によって硬くなった筋肉は、張力が高くなる。さきほどの「荷物を運んで腕がパンパン」の状態をイメージしてほしい。
このとき「腱紡錘」というセンサーに刺激を入れて働きかけると、筋肉に「緩め」「脱力せよ」「伸長せよ」と指令を出す。パンパンに張っている筋肉に対して「緩め」という指令を送ってくれるのが、この「腱紡錘」への刺激というわけだ。
筋肉は、闇雲に圧をかけたからといってほぐれるわけではない。また、長い間ほぐしたからといって、柔らかくなってくれるわけでもない。だからこそ、起始・停止あたりにピンポイントで圧をかけるケアに大きな意味があるのだ。
起始・停止に局所的に圧をかけると、そこにある腱紡錘は「筋肉に張力がかかり過ぎている」と勘違いをする。結果、腱紡錘からの「緩め」という指令が脊(せき)髄(ずい)から放たれる。この指令が出ている間こそ、いわば〝ボーナスタイム〟。筋肉に対するケアや、自分で行う動きによる好影響が数倍になり、筋肉の硬さがほぐれて緩んでいく。
一方で、「筋腹」のような筋肉の中央部あたりには、疲労回復につながるような痛点や感覚の受容体はとても少ない。重い荷物を運んで腕がパンパンに張ったとき、多くの人が無意識に腕の真ん中あたりの「筋腹」をさすったり、揉みほぐしたりするが、それは根本的な疲労回復になりにくいのだ。
パンパンにむくんだ足をほぐすコツ
同じようなケースを見てみよう。
仕事やプライベートなどでかなり歩いたり、長時間イスに座っていたりして、足がむくんで重たく感じる日。あるいは、ジョギングなどをして筋肉に疲労がたまり、足がパンパンに張っている日。「あー疲れたなぁ」と無意識に、太ももを揺らすことがあると思う。
このとき多くの人が、太もも真ん中の「筋腹」をブルブルと揺らしたり、両手を使って揉んだりしている。もちろん筋腹にも多少なりとも疲労はたまっているだろう。
しかし、繰り返すが、本当の意味で疲労がたまっているのは、太ももの筋肉の端っこにある起始・停止部分であり、そのこわばりが関節をつまらせている。
だから、最も効率よく疲れを取るには、太ももの端っこ(起始・停止)を指圧しながら、ひざから下を曲げ伸ばしすることだ。起始・停止に、ほどよく痛気持ちいい程度の圧力を加えて、足を動かしてみよう。

国際治療家/My Natural Clinicディレクター。世界のトップアスリートから厚い支持を得る治療家。プレミアリーガーを筆頭に、世界中のサッカー代表選手とプライベート契約を結ぶ。クライアントには欧州の代表チームのキャプテンや国民的人気選手も名を連ねる。英国を拠点にしながら欧州各国や米国に赴き、足も使う独自の施術でリカバリー治療に当たっている。日本時代は柔道整復師として10年以上にわたりJリーガー、プロ野球選手、大相撲力士ら幅広いトップアスリートを施術。治療をきっかけに吉田麻也選手と出会ったことで後年、専属トレーナーに。2020東京オリンピックや2022カタールW杯などで、当時日本代表キャプテンの吉田選手を全面的にバックアップした。多数の日本代表選手からも熱心に支持されており、トップ選手たちを陰で支える。



