スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する、吉田洋一郎コーチの人気ゴルフ連載から「パター」に関する記事をまとめてお届け! ※2024年1月、2月、4月、6月、11月掲載記事を再編。
1.パターが入らない時に…試すべきグリップの握り方
プロゴルファーで、パッティングで苦労したことはないと胸を張って言える選手は少ないだろう。
パッティングはショットに比べて振り幅が小さく、わずかな動きの違いによっても大きな影響を受けるため、調子の波が出やすい。
PGAツアー選手が、パッティングを追求するなかで、クローグリップやソーグリップといった変則グリップにたどり着くケースがある。クローグリップとソーグリップはどちらも右手をグリップに軽く添える握り方で、右手の形の違いによって呼び方が異なる。
クローとは、英語でタカなどのかぎ爪のことで、クローグリップは右手の指先でつまむようにパターを持つ。
一方のソーグリップは、人差し指から小指の4本の指の中央部分と親指で挟むようにしてパターを持つ。ソーとは英語でノコギリのことで、右手の形がノコギリに似ていることが由来。クローグリップもソーグリップも左手は通常のグリップと同じように握ることは共通している。
右手をこのような変則グリップにする理由は、右手(利き手)の使い過ぎを抑えるためだ。
多くの人が普段の生活では使い慣れた利き手を使っており、その器用な利き手がインパクトの瞬間に無意識に反応して、プッシュアウトや引っ掛けのミスパットを誘発してしまうことがある。
シビアな状況でプレーをするプロは、肝心の場面でこのような意図しない動きが出ないように、右手のグリップを工夫しているのだ。
2.ボールの転がりが悪い! パターのタッチが合わない理由は、利き手にあり
パッティングストロークはシンプルな動作だが、ボールを強く打ってしまったり、逆に緩んでしまったりと、思うように距離感が合わないことはないだろうか。
距離が合わないのは単純に練習不足ということもあるが、打ち方が問題でタッチが合わないケースもある。
特に、ボールを下から上にすくい上げるようなストロークになると、パターヘッドのロフトがついた状態でボールにコンタクトするため、ボールの転がりが悪くなる。
その結果、ショートしやすくなるだけではなく、カップに届かせようと強くヒットしてオーバーする場合も出てくる。このような悪循環に陥ると、強く打てばいいのか弱く打てばいいのかわからなくなり、3パットを連発してしまう。
こうした傾向の人は、パッティングで利き手を使い過ぎる傾向がある。特に、利き手の手首を手のひら側に曲げて使うケースをよく目にする。
一般的に人が何かの道具を使う際、利き手に頼るのは自然なことだ。しかし、ゴルフではできるだけ手先などの末端部分を使わずに、動作の再現性を高める必要がある。
手を使うことは本能的なことのため、使わないようにすることは簡単なことではなく、PGAツアーのトップ選手がグリップの握り方を試行錯誤するのも、利き手の使い方に悩んでいるためだ。
それだけ利き手の使い過ぎを抑えることは難しいのだが、意識して練習を繰り返すことで、利き手の使い過ぎを防ぐことができる。
3.右へ左へパターが安定しない…再現性が高まるストロークのコツ
2024年4月11日から14日、米国ジョージア州で開催された男子ゴルフ世界四大メジャー大会のひとつ「マスターズ・トーナメント」では、トッププロがオーガスタナショナルGCの高速グリーンに苦しめられるシーンを目にしたかもしれない。
世界のトッププロたちは、オーガスタのような高速グリーンに対応するために、再現性の高いパッティングストロークを身につけようと日々技術を磨いている。
そのパッティングにおいて、ストロークの軌道は非常に重要な要素だ。
パッティングストロークには大きく分けて2種類ある。パターヘッドを真っ直ぐ引いて真っ直ぐ打ち出す「直線型」のストロークと、インサイドイン軌道で緩やかな弧を描くように打つ「振り子型」のストロークだ。
トッププロはどちらかのストロークタイプを採用し、再現性の高い軌道を身につけるために地道な練習を行っている。
アマチュアゴルファーのなかには、自分では理想的なストロークをしているつもりでも、実際にはインサイドやアウトサイドにパターヘッドを引いている場合がある。
特にバックストロークでアウトサイドに引いてしまう人は多い。
そのような傾向のある人は、フェース面を目標に正対させたまま、手でストローク軌道をコントロールしようとするため、アウトサイドにヘッドが上がりやすくなる。
パターヘッドがアウトサイドに上がると、そのまま打てばアウトサイドイン。まっすぐ打ち出そうとするとアウトtoアウトの軌道となり、左右にボールがちらばってしまうため安定したパッティングが難しくなる。
4.ロングパットは気軽に打てるのに、1mのショートパットは力んでしまう…を解消するパッティング法、伝授します
先日ラウンドをした際に、短い距離のパットをことごとく外している人がいた。
カップまで5mほどなら「近くまで寄せて2パットで入ればいい」と比較的楽な気分で打てるが、1m前後の距離だと「外してはいけない」という気持ちから、つい手に力が入ってしまうものだ。
その人も1、2mの距離から強く打ちすぎたり、カップに届かずショートしたりと、気持ちよくカップインの音を聞くことができずにいた。
パッティングに限らず、人は細かな作業をしようとすると力が入ってしまうものだ。パッティングでもデリケートなタッチが要求されるため、手や腕に力が入りやすい。
プロゴルファーでもパッティングの際に、手や腕に余計な力が入らないように腐心している。クローグリップやクロスハンドグリップなど、試行錯誤を繰り返して自分に合ったパッティンググリップを採用しているのだ。
グリップの種類はさまざまだが、その前にパッティングにおいて守るべき原則がある。それは手や腕でパターを動かすのではなく、上半身の大きな部分を使ってストロークするということだ。
この原則を身に付けることで、再現性の高いパッティングストロークを行うことができるようになる。
5.パットの曲がるイメージがわからない…うまくカップインさせる“プロライン”と“アマライン”の違いとは
グリーンの傾斜がわからず迷ったとき、キャディーさんに「どれくらい曲がりますか?」と聞くことがあるかもしれない。その際に、ボール何個分曲がるのかなどと細かくラインを聞く場合は注意が必要だ。
キャリアのあるキャディーさんなら「強めに打てば、ほぼストレート。距離を合わせにいくと、カップの手前で右に切れます」などと教えてくれる。しかし、ボールが転がるスピード次第で曲がり幅が変わるので、前提条件になるタッチを共有したうえでラインを聞くようにしたほうがいいだろう。
ボールを強めに打ってカップの奥にぶつけて入れたい人もいれば、最後の一転がりでカップインしたい人もいるように、好きなタッチは人それぞれ異なる。
強めに打てばボールの曲がりは少なくなり、弱めに打てば曲がり幅は大きくなるので、ラインを読む前にボールをどれくらいの強さで打つのかを決めておくことが必要だ。
打つ前に曲がり幅を考えがちだが、自分のタッチを決めたうえで曲がり幅を考える習慣を身につけたほうがいいだろう。
ラインを読む場合、多くの人は1つのラインしかイメージしないが、複数のラインをイメージしてみてほしい。
強く打つ場合と、弱く打つ場合の2つのラインをイメージすることで、その中間の第3のラインがわかる。その3つのラインのうち、自分のタッチの傾向に合わせ、どのラインを選択するのか決めるのだ。
このように、自分のイメージ通りのラインにボールを転がすためには、普段からタッチを考えて練習する必要がある。