今回は自分のクセを中和するアレックス・ノレンの練習法を紹介する。
“大根切りスイング”を熱心に練習
PGAツアーの取材では練習日に試合会場に足を運ぶことが多い。選手ごとに独自のドリルやこだわりの練習があり、見ているとどのようなスイング構築をしようとしているのかがわかる。
もし、試合会場で選手の練習を見る機会があれば、何を目的にどのような練習をしているのかを考えてみると上達のヒントになるかもしれない。
PGAツアー選手のなかでユニークな練習に取り組んでいるのが、スウェーデンのアレックス・ノレン(42歳)だ。
ノレンは欧州ツアーで10勝を挙げており、ショットの正確性に加えて、ショートゲームやパッティングなどの小技を武器に、安定したプレーを持ち味としている選手。
ノレンは練習だけではなく、ラウンド中でも頻繁に素振りやシャドースイングをしているが、そのスイングが実にユニークだ。
トップ・オブ・スイングで止まり、そこから急激に腰を回してクラブを外から振り下ろし、アウトサイド・イン軌道の大根切りスイングを繰り返す。遠くから見ると、まるで斧を振り下ろしているような不思議な動きをする。
ノレンはこの練習を長年行っているので、PGAツアー会場では見慣れた風景になっているが、これだけ長く続けているということは、ノレンにとってよほど重要な練習なのだろう。
だが、この動きはお世辞にも見た目がいいものではないうえに、スライスに悩んでいる人がノレンの真似をすると余計にスライスがひどくなりかねない。
ゴルフ初級者によく見られる極端なアウトサイド・イン軌道のため、なぜこのような動きをしているのか不思議に思うかもしれない。
振り遅れの動きを解消するドリル
なぜノレンがこのような変わった素振りをするのかというと、体に染みついた動きのクセを消すためだ。
ジュニア選手にありがちな動きの一つに、腰が目標方向に流れる動きがあるが、ノレンはこの動きを中和するために行っていると推測することができる。
腰が目標方向に流れすぎてしまうと、その影響でクラブの振り遅れが発生しやすくなるので、意図的に腰を切るようにしてクラブをアウトサイドから振り下ろし、下半身が流れるクセと相殺してニュートラルな動きにしようとしているのだろう。
「それにしても、そこまで極端な動きで練習しなくてもいいのではないだろうか」と思う人もいるかもしれない。だが、スイング動作を身につけるには、オーバーに動かしたほうが身につきやすい。
人間のクセというのは恐ろしいもので、動きを意識した程度では実際の動きはほとんど変わらない。レッスンの際には、信じられないほど大げさに直したい動作を行ってもらって、やっと直るということが多い。
実際に、ダウンスイングでクラブがインサイドから下りて振り遅れてしまう人に、ノレンのような素振りを行ってもらうことで、ちょうどいいオンプレーンスイングに改善したケースもある。
腰が目標方向に流れやすい人は、ノレンと同じようにアウトサイドから振り下ろすシャドースイングを練習に取り入れてみるといいだろう。
逆にアウトサイドからクラブを下ろす傾向のある人は、腰を目標方向へ動かしながら極端にインサイドアウトにクラブを振る練習をするといいだろう。
また、トップでフェースが空を向くようなシャットフェースでスイングをするタイプもこの素振りと相性がいい。フェードをイメージして素振りを繰り返すことで、振り遅れのミスを減らすことができるだろう。
自分のスイングの癖や傾向がわかっている人は、ぜひ、自分の癖を中和する練習に取り組んでみてほしい。
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◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。