ゆっくり上げるバックスイングは、手先でクラブを持ち上げる癖を出しにくくするメリットがあるが、飛距離が出にくい。今回はウィンダム・クラークに学ぶシャフトをしならせて飛距離を出す方法を紹介する。
速いバックスイングが飛距離を生む
バックスイングが手上げにならないように、ゆっくりクラブを上げようと気をつけている人は多いかもしれない。バックスイングをゆっくりすることで、体を使ってバックスイングでクラブを上げられるメリットがある。
しかし、その一方でゆっくり上げることのデメリットもある。バックスイングが遅いと、切り返しで下半身を動かすタイミングがとりづらく、上半身を使ってボールを打ちにいってしまう原因になる。
また、バックスイングが遅いとクラブの反動動作を使ってシャフトをしならせることが難しくなり、飛距離が出にくい傾向がある。
バックスイングのスピードを上げると、クラブが勢いよく上がる動きと、逆方向の動きが拮抗することでシャフトがしなり、その勢いをインパクトに向けて開放することでクラブを加速させることができる。
切り返しでシャフトをしならせるためには、釣り竿をしならせるような動きの「反動」が必要だ。この反動を使うためにはバックスイングのスピードと、切り返しのタイミングが重要になる。
トップで手首をリラックスさせ、バックスイングの勢いを反動につなげ、下半身を使ってダウンスイングをすることで、クラブを最大限に加速させることができる。
スピーディーなバックスイングと反動をうまく使って飛距離を出しているのが、PAGツアーで活躍するウィンダム・クラークだ。
クラークはパワフルなスイングで、平均ドライビングディスタンス314ヤード(2024年8位)を記録している飛ばし屋。バックスイングで速いスピードでクラブを振り上げ、トップでシャフトをしならせることで、PGAツアートップクラスの飛距離を生み出している。
遅咲きのクラーク
ウィンダム・クラークについて知らない人もいると思うので、ここで簡単に紹介したい。
PGAツアー選手のなかには、プロ入り直後から華々しい活躍を見せる選手がいる一方で、何年もかけてトップ選手に上り詰める選手もいる。ウィンダム・クラークは後者の遅咲きの選手といえるだろう。
クラークは高校時代から地元コロラド州の大会で優勝するなど活躍し、オレゴン大学を卒業した後にプロ転向。2018年秋にPGAツアーに昇格したが、その後は何度か優勝争いを演じるものの、なかなか勝利に手が届かない時期が続いていた。
2023年にパターを変更することで苦手のパッティングを克服。昇格大会のウェルズファーゴ選手権で初優勝を手にした。その翌月の全米オープンも勝利し、メジャー初制覇を果たしてトップ選手の仲間入りをした。
2024年もAT & Tペブルビーチ プロアマでツアー3勝目を挙げ、プレジデンツカップの米国代表にも選ばれるなど、好調を維持している。
足の踏み込みと手首を意識する
クラークのようにバックスイングを速く上げ、反動を使ってクラブを振り下ろす感覚を身につけるためのドリルを紹介しよう。
まず、バックスイングでは右足を踏み込み、その踏み込んだ反力の勢いで素早くクラブを上げる。自分の右上に重いメディシンボールを放り投げるように、体全体を使うことがポイントだ。
バックスイングで加速するのは左腕が地面と平行になるあたりまでにして、その後は惰性でクラブを上げる。トップでは手首をリラックスさせて、ヘッドが下に垂れ下がり、少しオーバースイングになるようにしてクラブの重みを感じてほしい。
そして、切り返しでは左足を踏み込み、腕が地面と平行になるくらいで止めるようにする。
地面反力を使って素早くクラブを上げることと、トップでシャフトをしならせて反動をつけることを意識してドリルを繰り返してほしい。
切り返しで手に力が入ると反動がうまく使えないので、力を抜いてクラブの重さを感じながらスイングするのがポイントだ。
シャフトをしならせるためには、左足の踏み込みのタイミングが重要になる。
多くの人はクラブがトップ・オブ・スイングに到達してから左足を踏み込もうと思っているが、それでは実際の踏み込み動作のタイミングが遅くなってしまう。バックスイングの左腕が地面と平行になるポジションで左足を踏み込む意識を持つことで、ちょうど切り返すタイミングで左足を踏み込む動きを行うことができる。
バックスイングを速く上げることに慣れるのは時間がかかると思うが、ポイントを押さえながら何回も繰り返してドリルを練習してほしい。
クラークのように速いバックスイングと反動を身につけることができれば、飛距離を伸ばすことができるだろう。
動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。