食に対して圧倒的な情熱とこだわりを持つ秋元康、小山薫堂、中田英寿、見城徹が選ぶ、最強にして超最新レストランガイド「ゲーテイスト2025」。「名料理人の矜持」を感じる店から、今回は東京・麻布台の「富小路 やま岸」をご紹介。

見城「美しい日本文化が融合した食と空間に果てなきロマンを感じる」
京都屈指の日本料理店としてその名を知られる『富小路 やま岸』が東京に初出店。月曜と火曜日は、店主の山岸隆博氏が客人をもてなすために自ら旬の食材を携えて上京。国宝級の器や調度品を愛でながら、美食の時に浸る贅沢が心に沁みる。
秋元 言わずと知れた茶懐石の名店が東京に、と聞いて楽しみにしていたのですが、京都と時差ゼロの料理は想像以上でした。僕がうかがわせていただいた時は、朝掘りの筍を山岸さんが京都から新幹線で運ばれてきて。
見城 見事な筍だったよね。東京に出るお店は増えているけれど、店主がその日のお客さんのためだけに食材を運ぶというのはすごいことだよ。
秋元 筍の根元の部分だけを輪切りにしたお椀は、あまりの余韻の長さに思わず感動のため息が出ました。出汁の味を左右するひとつは水と言われますが、西と東では水質が違うから、お弟子さんと手分けして京都から日々、60㎏の井戸水を運んでくるそうです。
中田 店主自らが奔走する、まさにご馳走ですね。
秋元 本当にそう思います。大御所ではあるけれど、すごく物腰が柔らかくて、ファンが多いのもうなずけます。

秋元「文化的価値に溢れる名店の東京出店に期待が高まります」
見城 旬の野菜を使った料理やお椀も心にじんと沁みました。器使いも素晴らしい。
秋元 安土桃山時代の器ですよね。
見城 そんな価値のある器を“用の美”として捉えているところもすごいよね。山岸さんは職人であり、目利きであり、サービス精神に溢れる人。
秋元 若いお弟子さんたちもその背中を見ることができて人生勉強になりますよね。美味しいものを作るだけではなく、相手に心をいかに尽くすかという学びは簡単に得られるものではないから。東京でお店を開くと決めたのも、料理の世界で生きる楽しさや厳しさを後続の世代に身をもって教えたいという思いあってのことかもしれません。
見城 料理というものはつまるところ、人だと。自分がどれだけ苦悩しても、いかに他者を想えるか。僕はそういう心に深く共鳴します。
この記事はGOETHE 2025年9月号「特集:陶酔レストラン ゲーテイスト2025」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら