GOURMET

2025.06.04

谷崎潤一郎も愛した、美しき懐石料理「辻留 赤坂店」

季節の設いに品格が息づく空間で提供されるのは、伝統の技と研ぎ澄まされた美意識が響き合う懐石料理。歴史の風格を纏う名店で、日本文化の奥深さに触れたい。今回は、東京・赤坂見附の「懐石 辻留 赤坂店」を紹介する。

「懐石 辻留 赤坂店」のお椀
6月のお椀の主役は淡路産の鱧の葛たたき。蓋を開けると一番出汁と柚子が香る。椀づまは蔓菜、長ひじき。輪島塗のお椀は奥田五衛門作。日本酒1合¥1,898〜。

魯山人の流れを汲む、調和美に溢れた茶懐石

初代・辻留次郎が裏千家の家元から手ほどきを受け、1902年に京都で創業した「懐石 辻留」。東京・赤坂店はオフィス街の喧騒から離れた小道にあり、地下の趣ある玄関に着くと、たおやかな和装の女将と巨匠の日本画に迎えられる。

季節の設いが調えられた座敷で味わう懐石料理は、器の色や形、味わい、料理を出す流れにいたるまでのすべてが「調和」するように計られた、正真正銘の正統派。北大路魯山人のもとで修業した3代目・辻義一氏の技を受け継ぐ料理長の藤本竜美氏が大切にしているのは、よい食材を選び、持ち味を生かすこと。

「素材が引き立つように昆布と鰹のバランスを重視した」出汁は、淡いのに深みがあり、引きこまれるような味わいだ。淡路沖産の鱧(はも)の旨みを生かした6月の椀種は、かつて常連だった作家の谷崎潤一郎が「牡丹のような綺麗な鱧」と褒め称えたとおりの美しさ。

「季節をよく表し、彩りよく、受け継がれた形を踏まえ、きっちりとスキなく盛り付けられた一椀は、計算された舞台のように美しいもの。そこに食欲をそそられるのが、人の文化といえるものではないか」という先代の言葉に、大きく頷くしかない。

懐石 辻留 赤坂店/Kaiseki Tsujitome Akasaka
住所:東京都港区元赤坂1-5-8 虎屋第2ビル B1
TEL:03-3403-3984
営業時間:12:00~14:00、17:00~21:00
定休日:日曜 
座席数:38席(個室4室)
料金:昼 松花堂弁当¥18,975〜、夜 懐石¥37,950〜
※完全予約制

TEXT=小松めぐみ

PHOTOGRAPH=田村浩章

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