連載「ヴィンテージウォッチ再考」の第65回は、ロレックス「コスモグラフ Ref.6239」の“ル・マン”モデルを取り上げる。

「コスモグラフ デイトナ」の最初期に見られる希少モデル
ヴィンテージロレックスの頂点に立つ、手巻きデイトナ。なかでも「コスモグラフ デイトナ Ref.6239」の“ル・マン”は、格別の存在感を放っている。
そもそも“ル・マン”とは、デイトナのファーストモデルである「Ref.6239」の最初期型につけられた通称。
“ル・マン”の文字盤にはブラックとクリームホワイト(後者は特に希少性が高い)があるが、これは1963年にのみ製造されたもので、希少性においてはあの“ポール・ニューマンダイヤル”を上回る。
“ル・マン”と他の「Ref.6239」では使用しているパーツに大きな違いがあり、そのひとつがステンレススチール製のタキメーターベゼルだ。時速300kmまで計測できる最初期のタキメーターベゼルには、その他のベゼルにはない275の数字が刻まれる。
文字盤の6時位置にある“ダブルスイス”と呼ばれるふたつの「SWISS」表記や、長く細い時・分針、これらも“ル・マン”ならではの特徴だ。
なお、クリームホワイト文字盤はクロノグラフ秒針がブルースチールのものも存在する。
また、夜光塗料にトリチウムを使用していることを記した12時位置のアンダーバー表記は、アメリカに向けて出荷された製品に入っていたという説が有力で、一方スイスなどのヨーロッパに出荷された製品には入らなかったと言われている。
今回の“ル・マン”は最も希少なクリームホワイト文字盤かつ、インダイヤルがエイジングしたトロピカルダイヤルという逸品。ベゼルを含め、パーツの整合性は完璧に近い。写真の左に並ぶ“セカンド ル・マン”と比べるとディテールの違いがより分かるはずだ。
そして、このクリームホワイト文字盤のファースト“ル・マン”とブラックダイヤルのセカンド“ル・マン”は、当時の保証書も付属している。
マニアックな手巻きデイトナのなかでも異彩を放つ、クリームホワイト文字盤の“ル・マン”。ヴィンテージロレックスの奥深さを感じることができる傑作中の傑作である。
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