“推し時計”を持つ、遠藤航氏、トム・ホーバス氏、加藤シゲアキ氏のエピソードをまとめて紹介! ※2024年8月号掲載記事を再編。
1.日本代表・遠藤航がハマっている腕時計「他の選手がつけていなくて、俺らしい」
ひとりだけ「時計の針」が逆回りしている。
世界三大時計とも称されるスイスの名門時計メゾンのひとつ、ヴァシュロン・コンスタンタン。時計界において唯一無二の存在感を放つその時計を遠藤航が選ぶのは、ある意味で必然だったのかもしれない。
遠藤のサッカーキャリアは多くの人にとって常識外れだ。サッカー界のトレンドは、若手至上主義。早ければ10代から欧州主要リーグでプレイし、選ばれた者だけがビッグクラブにステップアップしていく。もちろん、そこで活躍できるかはわからない。
初めてのビッグクラブがイングランドプレミアリーグの超名門・リバプールであり、それが30歳での移籍とあって、遠藤のキャリアは驚きをもって受け止められた。
「確かに、30歳でリバプールに行けたという意味では日本サッカー界にも少しは勇気を与えられたかな、とは思います」
ピッチ上とは裏腹の、柔和な笑顔で振り返る遠藤。サッカー日本代表のキャプテンであり、2023 -’24シーズンのリバプールでの活躍で自身の質を証明したが、そもそもJリーグからヨーロッパへ渡るのも遅かった。
「あの時は25歳だったかな。ギリギリのタイミングだったとは思いますけど、だからといって変に力が入ったかといえばそうでもないですね。今回のリバプールでもそうですけど、より高いレベルでプレイするなら、年齢を重ねていたほうが活躍できるチャンスがある、とも考えていたので」
多くのクラブが若い選手を欲するのはマーケットの話。ひとりの選手として考えれば、多くの時間を生き、たくさんの経験をしてきたほうがいい。遠藤はそう言い切った。「だから遅咲きという言葉も変だな、と思いますけどね」
こともなげに常識をひっくり返すような言葉を発すると、また笑った。
2.バスケ、トム・ホーバスと腕時計「厳しい試合をともに戦ってきた相棒」
2024年7月26日に開幕するパリ五輪。8強入りを目標に掲げるバスケットボール男子日本代表を率いるのが、トム・ホーバスだ。
女子の日本代表を指揮した2021年の東京五輪では、男女含めて日本バスケ史上初の表彰台となる銀メダルを獲得。五輪後に男子日本代表ヘッドコーチに抜擢されると、2023年のW杯でアジア最上位となり、パリへの出場権を勝ち取った。
その戦いを指揮するなかで常に側にあったのが、IWCの「アクアタイマー・クロノグラフ」だった。
単なる腕時計以上の存在で、幸運を呼びこむアイテム。ホーバスが左手首に巻いた「アクアタイマー・クロノグラフ」を愛おしそうに見つめながら話す。
「この時計はグッドラックチャーム(幸運のお守り)です。IWCの時計は洗練されていて、シンプルで美しい。試合中に熱くなった時も、この時計を見ると不思議と落ち着くんです」
3.加藤シゲアキ、目立ちすぎず、上品でどんな場面でも違和感ない愛用時計とは
30歳を過ぎた時、年齢にふさわしい腕時計が欲しいと思った。
「そのころ朝の番組をやっていて、そこでつける時計はどんなものがいいのかを考えたんです。目立ちすぎて、時計にばかり目がいくのはよくない。目立ちすぎず、上品でどんな場面でつけていても違和感ない時計。いろいろ考えていたら、グランドセイコーに行き着いたんです」
アイドルと作家、二足のわらじで歩んできた加藤シゲアキ。2023年に発表した長編小説『なれのはて』は、直木賞候補に挙がるなど高い評価を受けた。30代に入り作家としてもキャリアを重ね、それまでとは違うステージでの活動も増えていったという。
「スーツとかフォーマルを着る機会が増えました。そういう時でもグランドセイコーなら問題なくつけていける。TPOを選ばない時計。20代がつけるのはちょっと渋いけど、30代ならしっくりなじむと思ったんです」
愛用するのは、グランドセイコー「SBGA293」。高精度のスプリングドライブを搭載し、シンプルながらも細部にこだわったモデルだ(現在は製造終了)。
「クラシックな感じで、とにかく正確。安心感のある時計です。大人なら1本はグランドセイコーを持つべき。もう6年くらい使っていますけど、人生に必要な時計だと感じています」