舘ひろしは、今年76歳を迎える。それでもなお、“ミスター・ダンディ”の色気と存在感は衰えを知らない。俳優生活50年。石原プロイズムを受け継ぎながら、新たな挑戦を続ける舘ひろしは、今何を思うのか。若さを保つ秘訣から、仕事論、人生観までを聞いた。インタビュー後編。 #前編

若さの秘訣は「モテたい」という気持ち
取材場所に現れた舘ひろしの圧倒的なオーラに、その場にいる誰もが目を奪われた。切れ長の目にスッと通った鼻梁、色気のある低い声に、スーツを粋に着こなす長い脚。その色気と渋み、カッコよさは、76歳という年齢がにわかには信じられないほどだ。
「いやいや、それなりにくたびれてきていますよ。体力もだんだん落ちていますしね」と、本人は謙遜するが、“永遠のミスター・ダンディ”は今なお健在。
運動はゴルフをたまにするくらいで、食事もとくに節制せず、ジャンクフードも好きと公言しているが、若々しさと魅力を保つ秘訣はいったいどこにあるのだろう。
「やっぱりモテたいと思うと、自然と背筋も伸びるし、身なりにも気をつかいます」
“運だけ俳優”舘ひろしが50年愛され続ける理由
舘が俳優としてデビューしたのは1976年、2026年でキャリア50年を迎える。
「50年も同じことを続けてきたのかと思うと、我ながら驚きますね。僕自身は、50年経ったという意識はあまりないんですよ。50年前と比べれば、多少お芝居はうまくなったかもしれないし、容姿だってどんどん変わってきたとは思います。でも根本的な部分は、芝居を始めた頃のままなんです。
芝居がうまいわけではない僕がこれだけ長く続けられたのは、ありがたいことに皆さんが声をかけてくださったおかげ。運が良くて、人とのご縁に恵まれたからだと思っています。僕は、 “運だけ俳優”ですね」

1950年愛知県生まれ。1976年に俳優としてデビューし、1982年に出演したドラマ、『西部警察』をきっかけに石原プロモーションに所属。1986年、柴田恭兵とW主演したドラマ『あぶない刑事』で大ブレイクを果たし、以降、アクションからコメディ、ラブロマンスと幅広い作品で活躍。1984年リリースの『泣かないで』で、NHK紅白歌合戦にも出場を果たす。2018年公開の映画『終わった人』で第61回ブルーリボン賞主演男優賞、第42回日本アカデミー賞優秀主演男優賞のほか、第42回モントリオール国際映画祭最優秀男優賞を受賞するなど、海外でもその演技力が高い評価を受ける。2021年、石原プロモーション解散に伴い、舘プロを設立。近年の主な出演作に『ヤクザと家族 The Family』『ゴールデンカムイ』シリーズ、『港のひかり』『あきない世傳(せいでん)金と銀2』などがある。
そう言って笑うが、芸能界は運だけで50年続けられるほど甘い世界ではない。長きにわたって第一線で活躍し続けてきたのは、舘に、次々と運を引き寄せる力、「また一緒に仕事をしたい」と思わせる魅力があってこそだ。
「うーん…どうなんでしょう。自分ではよくわかりません。あれこれ考えず、流れに身を任せてやっていたら、いつのまにか50年経っていました。
ただ、スタッフとの関係は大事にしてきたつもりです。僕には、主役が作品を引っ張るという感覚はまったくないんです。俳優も、作品をつくる役割のひとつ。スタッフの皆さんと一緒につくり上げるもの。だから、当然スタッフや共演者のみなさんをリスペクトしていますし、現場が常に楽しい雰囲気になるよう、みなさんの間をとりもつのが自分の役目だという気がしています」
相手をリスペクトするという姿勢は、インタビュー中にも垣間見えた。
誰に対しても丁寧な言葉を使い、相手の目をまっすぐに見て、真摯に答えてくれる。かといって、こちらを緊張させるわけではなく、常に柔らかな微笑みを浮かべ、時にジョークを交えながら、その場の空気を和やかにしてしまう。その振る舞いには、英国式文化を好んだ祖父から「紳士たれ」と育てられた影響もあるのかもしれない。
「挑戦しないとつまらない」
2021年、舘は新たなチャレンジに踏み切った。
40年近く所属してきた石原プロモーションの解散に伴い、舘プロを設立。故・石原裕次郎氏や渡哲也氏が培った“石原プロイズム”を受け継ぎながら、彼らが情熱を注いだ映画づくりにも挑んでいる。2024年公開の『帰ってきた あぶない刑事』では出資を行い、2025年公開の『港のひかり』は製作委員会にも参加した。
「もともと僕は、ものをつくるのが好きなんです。建築家を目指し、大学は建築学科に籍を置いていたくらいですから。もしかしたら、芝居をしたくて役者をしているというより、作品をつくることに携わりたくて、この仕事を続けているのかもしれません。小規模でもいいから、いつかは自分の手で映画を1本つくれたらいいなと思っています」
挑戦することは好きか。そう問うと、舘は「好きですね」と即答した。
「僕にとって印象深いのは、『パパとムスメの7日間』(2006年放映の連続ドラマ。舘演じるパパと新垣結衣演じる女子高生の娘の人格が入れ替わってしまう7日間を描いたコメディ)への出演ですね。
それまでの僕のイメージからすれば、あれは冒険というか、やってはいけない作品。内股で、『キャッ!』とかやるわけですから(笑)。でも、おかげで、それまでとは縁がなかったような女子高生や女子大生にも観てもらえるようになりました。転機になったとまでは言いませんが、思い切ってあの役を演る勇気があって良かったと、今でも思っています。
いくつになっても、挑戦に不安はつきものですし、怖さもあります。でも、成功すればとてつもなく嬉しいし、楽しい。失敗したら最悪ですけど……、そうなったら、なるべく早く忘れるに限りますね。僕、忘れるのもけっこう得意なんですよ」
そう言って、おちゃめな笑顔を見せる舘。大スターのオーラをまといつつも、飾らず自然体。ダンディだけでなく、チャーミングという“武器”も備えた舘ひろしは、最強だ。

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