高校卒業時はプロ志望届を提出しながらも指名漏れ。それから社会人野球を経てドラフト1位でDeNAに入団し、今や中心選手へと近づきつつある。2026年シーズン、打撃開花の兆しを見せる度会隆輝。現場で見てきた成長の軌跡を振り返る。

DeNA待望のスター候補。度会隆輝が示す“打撃開花”の兆し
近年、“投高打低”の傾向が強くなり、若手の野手がなかなか育たないと言われているプロ野球。そんななかで2026年シーズン、打撃開花の兆しを見せているのが度会隆輝(DeNA)だ。
今季初スタメンとなった3月29日のヤクルト戦でホームランを含む3安打の活躍を見せると、その後は外野のレギュラーに定着。打順も中軸を任されてヒットを量産し、いずれもセ・リーグで3位となる59安打、打率.281という見事な成績を残しているのだ。
野手の世代交代が課題となっていたチームにとって、待望のスター候補誕生と言えるだろう。
横浜高校時代の評価は? 天才と呼ばれながら抱えていた課題
そんな度会は、ヤクルトで長くユーティリティプレーヤーとして活躍した度会博文を父に持ち、兄の基輝も社会人野球でプレーしていた野球一家に育っている。
その才能は早くから評判となっており、小学校6年時には年末に行われている12球団ジュニアトーナメントのヤクルトスワローズジュニアに選出。中学時代は強豪の佐倉リトルシニアの中心選手として全国大会で優勝を果たし、U15侍ジャパンとして国際大会にも出場している。
高校野球関係者の間でも注目を集める存在となり、全国でも屈指の強豪である横浜高校に進学することとなった。
初めてそのプレーを現場で見たのは1年夏に出場した甲子園、愛産大三河との試合だった。
度会はこの試合で7点をリードした9回のツーアウトから代打で出場。初球をとらえていきなりライト前ヒットを放っている。1年生でいきなり代打での初球を打ってヒットにできるというのは並の選手ではないと言えるだろう。
ただ、その才能がそのままプロ入りにつながったわけではない。
1年秋からはセカンドのレギュラーとなったが冬に右足を骨折。2年春に出場した甲子園も代打で1打席立っただけでライトフライに倒れ、チームも初戦で明豊に敗れている。そして3年時には新型コロナウィルス感染拡大の影響ですべての公式戦が中止となったのだ。
プロのスカウト陣にアピールできる数少ない機会が練習試合であり、筆者が足を運んだ2020年6月27日に行われた桐生第一との試合では3本のヒットと犠牲フライを放つ活躍を見せたが、あらゆる点で物足りなさを感じたのも確かである。
当時のノートにはこう書かれている。
「体つきは大きくなりパワーはついたが、力むとヘッドが遅れてミスショットも目立つ。左中間への打球が伸びるのはさすが。体を開かずに上手く振り出せる。
ただ、引っ張ろうとするとスムーズにヘッドが抜けずに、引っかけ気味。セカンドの守備もプレーのスピード感がなく、センスで何とかこなしている印象」
プロのスカウト陣からも当時の度会について高く評価する言葉はあまり聞かれなかった。実際、高校卒業時にはプロ志望届を提出したものの指名漏れとなり、社会人野球のENEOSに進んでいる。
ENEOSで別人のように進化。ドラフト1位へ駆け上がった転機
度会に対する評価が大きく変わったのは、社会人2年目になってからだ。
毎年3月に行われているJABA東京スポニチ大会の開幕ゲームとなった三菱自動車倉敷オーシャンズとの試合、1番、ライトで先発出場すると、1回の第1打席でいきなり内角のストレートをとらえてライトスタンドに飛び込む先頭打者ホームランを放って見せたのだ。
構えは高校時代と比べても大きくなり、スイングの迫力とヘッドスピードが格段にアップしていたのを覚えている。
そして、高い評価を確固たるものとしたのがこの年の7月に行われた都市対抗野球での活躍である。全5試合に先発出場すると、21打数9安打、4本塁打、11打点の大活躍でチームの優勝に大きく貢献。MVPにあたる橋戸賞を受賞したのだ。
決勝戦でもこの年の社会人でトップクラスの高い評価を得ていた東京ガスの益田武尚(現・広島)からスリーランを放っているが、この試合を記録したノートには以下のようなメモが残っている。
「ヘッドの走りは抜群で、140キロ台後半のストレートに対しても全く力負けすることなく引っ張ることができる。フォロースルーの大きさも福留孝介(元・中日など)を彷彿とさせるスイング。小さい変化の速いボールに対しては少し課題残るが、内角にも外角にもスムーズにバットが出て広角に打てるのも持ち味。走塁と守備の意識も高校時代とは別人」
高校3年時とは大きく成長したことがこのメモからもよく分かるだろう。高校からレベルの高い社会人に進んでわずか1年と少しでこれだけ結果を残せる選手はなかなかいるものではない。プロからの評価も当然急上昇し、翌年のドラフト会議では3球団による1位競合の結果、DeNAに入団することとなった。
プロ入り後、2025年までの2年間は期待されながらもなかなかレギュラー定着を果たせずにいたが、3年目の2026年大きく成績を伸ばせたのは、ポテンシャルの高さだけでなく、あらゆる面で改善があったことは確かだろう。
冒頭でも触れているように近年は打者の苦戦が目立つだけに、次代を担う打者として今後さらなる成長を見せてくれることを期待したい。
■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

