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2026.04.21

夫婦喧嘩の原因。“認識のズレ”をなくす、ルールの作り方【識学】

夫婦のすれ違いや子どもの教育――家庭の悩みの多くは「認識のズレ」から生まれるという。多くの企業を変えてきたマネジメント理論「識学」は、家庭にも応用できるのか。識学 代表取締役社長・安藤広大氏が、実体験とともにそのポイントを教えてくれた。連載第5回。#部下のモチベは高めないその他の記事はコチラ

「なぜ夫婦はケンカになる?」その原因は“認識のズレ”。識学・安藤広大が教える家庭でも使えるマネジメント術

夫婦関係にも効く、識学の理論。“認識のズレ”をなくすルールの作り方

識学の理論において重要なのが、「明確なルールの設定」や「責任と権限の一致」によって、組織内の認識のズレをなくすことだ。

「例えば夫婦喧嘩も、お互いの認識のズレから起きていることが多いと思うんです。

我が家の場合でいえば、僕自身は経営者のなかではわりと土日にも家にいるほうだと思っていました。でも妻からすると、休日もあまり家にいてくれないという認識だったんですね。

じゃあ、どういう状態が家にいることなのかという定義をすり合わせたんです。今は平日は何時に帰っても問題ないのですが、土日を仕事に使うのは月2回までというルールにしています」

家事においても同様。家事は手の空いたほうがやる、という夫婦もいるが、「それが一番良くないパターンです(笑)」と安藤氏は言う。

「夫婦間でも、仕事の役割は明確にすべきなんです。責任の所在がはっきりしないと『なぜゴミを出しておいてくれないの?』『お皿を洗ってくれればいいのに…』というような気持ちは必ず発生する。我が家もかつてはいろいろぶつかることがありました」

そこで安藤家では、夫婦それぞれの役割を明確にした。

「我が家でいえば、お金を稼ぐことが僕の仕事。家のことは妻の仕事なので、妻がすべての責任者。だから僕は一切口を出さない。家で僕の唯一の仕事は、冷蔵庫の氷を切らさないことだけかな(笑)」

とはいえ、まったく家事をしないわけではない。休日の朝などに妻が疲れて寝ているときには、朝ごはんを作ることもある。

「そうなると、妻から“ありがとう”と言われる対象になるわけです。やってくれないことに不満が出るのではなく、ルールがあることで、それ以外をやってくれたことへの感謝が生まれる。そうすると、お互い気持ちよく家事ができますよね」

夫婦の役割を決めてからは、ケンカもほとんどなくなった。

「ルールを決めようと提案した当初は『家庭に識学を持ち込むな』と言われましたが(笑)。でも明確なルールがあれば、お互いの責任範囲がはっきりするので衝突もなくなるし、スムーズなんです。会社のような数十人単位でも夫婦ふたりであっても、結局は人間の集団。そう考えれば一緒だと思います」

中学受験突破のカギは、子どもにも責任範囲を自覚させること

安藤家では、子育ての責任者は奥さまが担っている。

「教育方針にズレがあれば話し合いますが、基本的には僕が口を出すことはありません」

ただ、息子さんが自ら希望したこともあり、中学受験に挑戦することになった。志望校合格という目的を達成するために親として何が必要かを考えたとき、気づいたのが親と子の関わり方にも、責任の範囲を明確にすべきということだった。

「我が家では、受験結果に親は責任を負わないと決めました。親は費用や送り迎えなどを徹底的にサポートしますが、勉強の成果に責任を負うのは受験する本人。君がやりたいならやりなさい、君がやりたいことは基本的に全部やっていいよと。その代わり結果を出すのは自分自身の責任だと伝え、親は子どもが勉強をしているか、していないかなど、そのやり方には口を出さないっていうスタンスにしたんです。

中学受験は親の努力も必要と聞きますし、子どもとの関係にとても気を配る大変な期間だと思います。でも一番問題なのは、親も一緒に責任を負ってしまう状態だと思うんです。

夫婦の役割と一緒で、親子二人ともの責任となると、衝突や責任のなすりつけ合いが生まれます。受験のためにと親も一緒になって勉強したりすると、親と子の責任範囲が曖昧になって『成績が上がらなかったら誰のせい?』とか『親がこんなにがんばっているのに、なぜあなたはがんばらないの?』という気持ちが生まれてきてしまいますよね」

もちろん、どこで線を引くのか家庭ごとのルール設定は自由だ。

「『○曜日までにこの内容を終わらせる』といった目標管理は親が設定し、やり方は子どもに任せる。理解度を1日単位でチェックする、という家庭もあるでしょう。

でもあくまでも目的を完遂するのは子ども自身という意識を持ち、お互いの責任範囲を分けることが大事です。

とはいえ、実際には受験直前でもスマホを見ていたりしていたので、僕ですらちょっとイライラしましたけど(笑)。でも結果責任は子ども本人が負うと決めた以上、最後まで親は口出さずにやらせ切りました」

結果は、無事志望校に合格。識学の基本理論のひとつでもある役割と責任の明確化は、中学受験という場面でも活きることを安藤氏自身も体験した。

そして親の意志ではなく、自分の意志で結果を出すというプロセスは、きっと子どもにとっても大きな自信になったに違いない。

「受験においても、子どもとその親の責任範囲を明確に決めることがとても大事だと実感しました。おかげで、親子ともども受験のストレスは、他の家庭より圧倒的に少なかったと思います」

安藤広大/Kodai Ando
識学 代表取締役社長。1979年大阪府生まれ。早稲田大学卒業。大学時代はラグビー部に所属し、勝敗と向き合う厳しい環境で4年間を過ごす。NTTドコモ入社後、営業としてキャリアをスタート。上場企業への転職を経てマネジメントに携わるなかで、「人のやる気」や「人間力」に依存する組織運営に限界を感じ、識学と出合う。誤解や錯覚を排した明確なルールと仕組みによるマネジメント理論に強く共感し、事業部の立て直しでその有効性を実証。2015年に株式会社識学を設立し、創業4年足らず(3年11ヵ月)東証グロースに上場。現在は延べ5,000社以上の組織改革を支援している。組織マネジメントに関する著書は『リーダーの仮面』などベストセラー多数。「がんばっている人が、正しく報われる組織を増やしたい」という思いが、識学の根底にある。

TEXT=牛丸由紀子

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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