PERSON

2026.03.22

余命7年・岸博幸、“恩返し”を意識すると、人生はプラスの方向に動き出す

“恩返し”を意識して行動したことで、自分が望んでいる方向に人生が動き始めたという岸博幸。岸氏が今望んでいること、人生を賭して力を注ごうとしているものとは? 2回目。

余命7年・岸博幸、“恩返し”を意識すると、人生はプラスの方向に動き出す

高市首相にコンテンツ業界との意見交換会を提案

2025年12月22日、官邸で高市早苗首相とコンテンツ業界との意見交換会が開かれた。参加したのは、日本音楽制作者連盟やコンサートプロモーターズ協会、日本動画協会といったコンテンツ業界の諸団体のトップのほか、デーモン閣下、小室哲哉さん、Awichさん、こっちのけんとさん、押井守さん、村上隆さんなど、錚々たるメンバー。

音楽や現代アートなど、日本が誇る素晴らしいコンテンツをもっと海外に出したいとかねてから考えていた高市首相が、どんな課題があり、どういった支援が必要かを、アーティストたちに直接聞くために開かれた会なのだが、この会の準備と実現に僕も関与させてもらった。

アニメやマンガは今や世界を席巻する、日本の主要コンテンツになっている。それに対して音楽、いわゆるJ-POPは今ひとつ世界で普及していない。音楽が大好きで、2006年に経産省を退官した後に音楽業界にお世話になってきた僕としては、忸怩(じくじ)たる思いをずっと抱いてきた。

K-POPが今、世界中で受け入れられている要因のひとつは、国策として国が全面的にサポートしたから。素晴らしいポテンシャルを秘めた日本の音楽も、国が支援に乗り出すことで、世界市場を拡大して日本の主要産業のひとつになるはず。

ハードロックを聴き、ドラムを叩く高市さんは、もともとコンテンツ分野への関心が高い政治家。クールジャパン担当大臣時代の2023年に、当時5兆円だった日本のコンテンツ産業の海外市場を10年後に20兆円に増やすことを目標に掲げたくらいだ。その高市さんが首相となり、この施策を本格的に進めたいと考えていたので、話は一気に進み、年末の予算編成が忙しいなかでも会合が実現した。

高市政権は、今年度補正予算に関連予算として、コンテンツ予算としては例外的に大きな規模となる550億円超を確保し、コンテンツを届ける国際流通プラットフォームの強化や海外展開を見据えたコンテンツの製作支援などを盛り込むなど、具体的に動き始めたところだ。僕も民間人として新しいアプローチを提案し、コンテンツ政策をより良くするのに貢献していくつもりだ。すでに自分のなかではさまざまなアイデアが生まれていて、今からワクワクしている。

岸博幸
岸博幸/Hiroyuki Kishi
1962年東京都生まれ。1986年に一橋大学を卒業し、通商産業省(現経済産業省)に入省。小泉内閣で竹中平蔵大臣の秘書官等を務めた後、2006年に経産省を退官。現在は慶應義塾大学大学院教授や企業・団体の社外取締役等を務める傍ら、メディアでも活躍。2023年夏、多発性骨髄腫罹患を公表。2024年春、“人生の期限”を意識したことで変わった人生観、仕事観などを綴った『余命10年』を上梓。

坂本龍一と音楽業界への恩返し

僕は、経産省からニューヨークの国際機関に派遣された1990年代後半に現地で知り合ったのをきっかけに、故・坂本龍一さんにずっと可愛がっていただき、大変お世話になった。経産省を辞めた後、エイベックスに雇ってもらえたのも、坂本さんのおかげ。僕にとって大恩人のひとりだが、恩返しをする機会がないまま、先に天国へと旅立ってしまった。それがずっと心に引っかかっていた。

エイベックスとは20年以上仕事をさせていただき、収入はもちろん、貴重な体験をさせていただいたり、音楽業界のさまざまな方に可愛がっていただいたりと、大いにお世話になった。狙って仕掛けたわけではないけれど、高市政権の目指すコンテンツ、特に音楽の世界市場を大きく拡大させるのに微力ながら貢献できれば、結果的に音楽業界への恩返しになるのではないか。そして、坂本さんへの恩も、少しは返せるような気がしている。

こんな風に、“恩返し”をキーワードに動くと、不思議といろんなことがうまく回る。僕が2025年の参議院選に出馬したのは、国会議員になりたいからではなく政策を変えたかったのと、石破政権の支持率が低くて自民党に圧倒的に不利と言われていた参院選に出ることで、私がもっともお世話になった菅義偉元総理(当時は自民党副総裁)に恩返ししたかったからだが、力不足で落選してしまった。

でも、今回、音楽業界への恩返しのために汗をかき、衆院選に立候補しなかった結果、コンテンツ政策に関われる機会を得られた。もし衆院選に立候補して当選していたら、一回生議員は党の雑巾掛けの仕事ばかりなので、政策をダイレクトに変えることなど無理であったことを考えると、国会議員という立場が欲しかったのではなく、政策を変えたかった僕としては非常にありがたいし、自分は運が良い、というか良くなっているなあと実感している。

これからは、民間人として、自分の問題意識の高い分野で、日本を良くするために力を尽くしたいと思っている。

余談だが、2025年のクリスマスシーズン、久しぶりに家族旅行でフランスに行ってきた。2025年7月の参院選に立候補したことで、そもそも家族には大きな迷惑をかけたし、その後体調が思わしくなかったことで8月は休養に務めたため、夏休みは子ども達をどこにも連れて行くことができなかった。

なので、家族への恩返しではないが、せめてもの罪滅ぼしと思い、僕が大好きで家族にも一度見せたかったストラスブールのクリスマスマーケットを目的にアルザス地方に行き、ついでにヨーロッパが初めての子ども達のためにパリにも滞在した。想像していた以上に家族が喜んでくれた。円安の影響で、出費が凄まじい金額になったのは本当に痛かったが(苦笑)。家族への恩返しになったので、良しとしないといけないのだろうなあ。

※3回目に続く

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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