放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した桝本壮志のコラム。

「桝本さんの新刊で、とても心が楽になった28歳の会社員です。私は、相手の考えていることが分からず不安になることが多いのですが、私にも言葉の酸素をいただけますでしょうか?」という相談をいただきました。
ありがとうございます。今回の拙著 『時間と自信を奪う人とは距離を置く』は、非常に多くの方から「心が楽になった」という感想をいただいております。いま息苦しさを感じている方は、ぜひ手にとってみてください。
さて、「相手の考えていることが分からず不安になる」ことは、50歳の僕にも定期的に訪れます。たぶんこの先もずっと。
ですが僕は、「やあ、またやって来たね。腰でもかけて寛いでいってよ」くらいの応対ができるようになりました。
それは、考えの分からない相手との間に「ある2つの言葉」を置けるようになったからです。
今回は、日ごろ吉本NSC生たちに伝えている、「相手の考えていることが分からず不安になったときの思考法」を、ゆっくりシェアしていきたいと思います。
①人間関係のコツは「違い」を楽しむ
まず、相手が無口で「何を考えているか分からない人」の場合は、新刊で語ったように「話せば分かるより、離せば分かる」。
私たちは相手の脳内を透視する能力は持っていないので、「物思いにふけっているのは、彼の人生の課題であって私の課題じゃない」と考え、心の距離を置くことです。
では、友好的な対話を心がけていても、相手の考えが分からず不安になるときはどうすればいいのでしょう?
僕の場合は“テーブルの上に「そもそも違う」を置いて、誕生日ケーキを眺める子供のように楽しんでいる”のです。
私たちは、目の前の議題や事象を正しく理解しようとしても、必ず個人差や価値観のズレが生まれます。
例えば、同じ政治関連のニュースを見ても「右」と「左」の考えがあるように、そもそも違うんですね。
ですが、なぜ自分と考えが違うんだ? 何を考えているか分からない!と、一方的に相手を拒絶するのは、とくに職場では得になりません。
大切なのは“人間が「右手」と「左手」を交互に出して前方へ進むように、自分の見解を語りつつ、反対側(考えが分からない人)の話にも耳を傾けて、現状を前に進めていく”こと。
人間関係における、相性がいい人、ウマが合う人というのは、同意見の人のことだけを指すのではなく、「そもそも人の考えは違うし分からない」を前提にして“その「違い」を楽しんでいける間柄”のこと。
なので、僕がいつもテーブルに置くケーキのプレートには、「ハッピーバースデー」ではなく、「あなたとは考えは違うけど、楽しむよ」という言葉が綴ってあるんですね。
②人間関係のコツは「誤解」も楽しむ
相手の考えが分からないとき、または自分の考えを分かってもらえないとき。私たちは先方を誤解したり、されたりしながら、やがて「負の感情」を生成していきます。
やってしまいがちなことは、考えが分からない人、分かってもらえない人=「悪」にしてしまうことですよね。
しかし、前述したように、人の考えは「そもそも違う」ので、最初からバチッと合わさる「理解」は困難なもの。
自然の摂理だと“誤解のない理解はない”と思考していったほうが心は軽くなるので、僕は、相手との間に置いたケーキの上に、「誤解されることから始めよう」というローソクも立てているのです。
「誤解する・された」を感情のテコにしてしまうと、私たちは「自分の気持ちに正直であろう」とするがあまり、「相手の心をくじいてもかまわない」という思考へと傾き、その言動によって、ますます誤解されることも人生のあるあるです。
たった一文字違いの「ただしい」と「たのしい」を誤解すると、まったく意味が変わってくるもの。
人間関係の「はじめの一歩」には、理解でなく誤解がある。それを楽しむ、興ととらえていく姿勢が大切ではないかと僕は考えているのです。
さあ、いまから対面する人との間に、あなたも「違いを楽しむ」「誤解も楽しむ」という2つの言葉を置いてみてください。
鋭利な言葉が飛んできて息が詰まっても心穏やかに。ゆっくり深呼吸して、ふぅ~と吐き出してみましょう。和やかにローソクの火も消えるはずです。
ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。
新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中!
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