放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。
「職場で意見のすれ違いがあり、溝ができてしまいました。仕事上、気まずくなった同僚と、どう接するべきでしょうか?」という相談をいただきました。
僕が講師をしている3つの学校でもそうですが、コロナ明けで対面の機会が増えたことで「思わぬすれ違い」「些細な対立」も増えているようです。
そこで今週は、「同僚と気まずくなったときの対処法、考えかた」を、ほぐしていきたいと思います。
真のコミュニケーション能力は、気まずくなったときに試される
まず、同僚との対立、すれ違いが起きることは、いたって健全です。刑事ドラマの相棒同士がモメたり、バスケの名コーチが選手と口論したりするのは“同じ目的をもっている”から。
職場とは、同じ目的をもつ人の集合体なので、いわば“気まずくなることが前提の組織”。すれ違いや対立は当たり前なんです。
また、職場の人間関係が悪くなったとき、「自分はコミュニケーション能力がないのかな……」と落ち込む人がいます。
しかし僕は、いつも生徒たちに「コミュニケーション能力というのは、周りとうまくやるスキルや、打ち解ける速さのことじゃないよ。“気まずくなったとき、関係を修復できる能力”のことやで」と伝えています。
とくに職場の同僚は“気まずくなることが前提のメンバー”なので、大切なのはモメないことではなく“気まずくなったとき、どんな振る舞いでリカバリーするか?”。そっちのスキルを身につけておくほうが重要なんですね。
ちなみにコンビ芸人は、四六時中いっしょにいるので、意見がすれ違ったり、溝ができたりすることは茶飯事です。
ですが、売れっ子コンビほど、この“気まずさ”を修復する能力に長けています。
では彼らはどうやって修復しているのか? その例を踏まえつつ、次のステップに進みましょう。
歩み寄るタイミングは、「悪いことしたかな?」が浮かんだら
もし、「溝」をつくってしまった原因があなたにあるなら、自分から埋める努力が必要になります。
「向こうにも非はあった」「自分から歩み寄るのはダサい」などの葛藤もあるでしょう。
しかし、職場のイザコザのほとんどは“傷ついているのは心ではなくプライド”です。過剰なプライドは会社と自分の利益にならないので、早めに兜を脱ぎ、軟着陸をめざすことをおすすめします。
売れっ子コンビは、タレントスキルが高いぶん、プライドもやや高い傾向があります。
個性の強い2人がモメると、それなりの軋轢が生じるのですが、彼らはうまく関係を修復しています。
あるコンビに「歩み寄るタイミング」を尋ねたことがあるのですが、2人はこんな返答をしました。
「単純だよ。“あっ、悪いことしたかな?”って感情が浮かんだときは、だいたい悪いことをしたときじゃん? だから“悪いことしたかな”と感じたら、ウチらはお互い素直に謝るんだよ」
実にシンプルかつ明瞭な答えでした。
心にもないのに、カタチだけ歩み寄ってもモヤモヤは続くだけ。胸の内に「悪いことしたかな」「こっちの落ち度だな」などのサインが出たら、それを素直に実行する。このテクニックは、あらゆる対人関係において有用でしょう。
「話せば分かる」より「離せば分かる」
最後に、「溝」ができてしまった原因が相手側にあり、向こうからの歩み寄りもないときの対処法です。
こんなときは、ムリに距離をつめようとせず、仕事に差し支えのない距離感をとって共生するのがベターです。
どうせ同僚とは、毎日顔を合わせるので“話せば分かる”より“離せば分かる”ことも多いからです。
大切なのは、いくら気まずさを感じても「ぶつかっている敵」と見なさないことです。
道で人とすれ違うとき、同じ方向によけてぶつかってしまうのは“お互いが気にし過ぎている”から。一方が気にしなければぶつかることはありません。
人間関係も、一方が気にしなければぶつかりませんし、すれ違っても、またいつかどこかで、めぐり逢うタイミングが来る。そんなもんなんです。