PERSON

2025.11.13

「世界との差を痛感」サンフレッチェ広島・荒木隼人が語る、W日本代表入りへの覚悟

2026年6月に開幕するサッカーW杯北中米大会を前に、日本代表入りを狙う荒木隼人(サンフレッチェ広島)は、米国遠征で痛感した「世界とのギャップ」を埋めるため、日々奮闘を続けている。2025年11月のルヴァン杯決勝では先制ゴールを決めてチームを3年ぶりの優勝に導き、MVPを受賞した。国内屈指のセンターバックの地位を確立するが、森保ジャパンではW杯日本代表入りの当落線上にいる。

「世界との差を痛感」サンフィレッチェ広島・荒木隼人が語る、W日本代表入りへの覚悟

ルヴァン杯でMVP。荒木隼人が語る「世界とのギャップ」

脳裏には2ヵ月前の残像がある。

2025年11月1日のYBCルヴァンカップ決勝の柏レイソル戦。荒木は前半25分にロングスローを頭で合わせて先制弾を決めた。攻守にフル回転して優勝の立役者となり、MVPを獲得。

「タイトルを獲れたのは素晴らしいこと」

3年ぶりとなるクラブ史上5個目の国内タイトルを噛みしめつつ、苦い経験を回想することも忘れなかった。

「あの経験は正直、悔しい思いが強くて。アメリカから帰ってきてからは、自分なりに今まで以上にいろんなことに取り組んでいます」

“あの経験”とは日本代表として参加した2ヵ月前の北米遠征。9月9日の米国戦で荒木は所属するサンフレッチェ広島と同じ3バックの中央で先発した。

森保ジャパン定着をアピールする絶好の機会だったが、試合は0-2で敗戦。Jリーグとは異なる相手のスピード感や球際の強さを痛感する結果となった。

米国戦直後の荒木の言葉が国内と世界基準のギャップを物語る。

「今回感じたのはまだまだ足らないなということ。具体的に言うと強度の部分。良くも悪くも現実を突きつけられた感じがします」

米国戦で味わった悔しさ。世界基準との差を埋めるために

国内組で臨んだ2025年7月の東アジアE-1選手権で、荒木は3年ぶりに代表復帰。香港戦と韓国戦の2試合に先発して優勝に貢献した。

アジアでの活躍が評価され、欧州組主体の9月の米国遠征にも招集されたが、国内、アジアとのレベル差は歴然だった。

10月に日本代表はパラグライと2-2で引き分け、ブラジルから3-2で歴史的勝利を収めたが、荒木は選外。 

11月にはガーナ、ボリビアと対戦するが、森保一監督は天皇杯で準決勝に残る広島、FC東京、町田、神戸の4クラブの選手の招集を見送ったため、荒木の名前もなかった。

世界との差を埋めるため、荒木は米国遠征後、自身の体と向き合った。リーグ戦、国内カップ戦、ACLE(アジアチャンピオンズリーグ・エリート)を並行して戦う過密日程のなか、フィジカル強化に着手。米国戦で感じた強度の違いを常に意識して日々のトレーニングに励んでいる。

「具体的に言うと、もっともっとフィジカル能力を上げたいなと思った。特に下半身の強さが必要だと感じたので、試合がある時でも前日くらいまでハードに追い込んだりして、苦しいなかでも意識を高く持つことを自分に課しています」

下半身強化、日々の追い込み。29歳で迎えるキャリアの正念場

サンフレッチェ広島ユースから関西大学を経て、2019年にサンフレッチェ広島入り。1年目からレギュラーを掴んだ。守備を支える生え抜きのセンターバックは伝統的に育成を重視するクラブを象徴する存在といえる。

サンフレッチェ広島のミヒャエル・スキッベ監督からも「今年すごく伸びた選手。技術面が伸び、1対1にも自信を持てている」と高く評価される。それでも日本代表定着へのハードルは高い。

森保ジャパンのDFラインは冨安健洋(フリー)、伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)、町田浩樹(ホッフェンハイム)ら故障者が続出中。22歳の鈴木淳之介(コペンハーゲン)ら若手の台頭もある。

W杯開幕が約7ヵ月後に迫るなか、荒木は言う。

「気持ち的にはもっともっとやっていかないと、と前を向いています。強度の部分でJリーグも上がってきているとはいえ、まだまだ足りない。1人でどうこうなることではないけど、自分が意識を高めてやっていければ、いい形になるのかなと思っています」

29歳。ベテランと呼ばれる年齢になっても、まだまだ伸びている実感はある。2026年夏に北中米の舞台に立つため、歩みは止めない。

荒木隼人/Hayato Araki
1996年8月7日大阪府生まれ。ガンバ大阪門真ジュニアユースからサンフレッチェ広島ユース、関西大を経て2019年にサンフレッチェ広島に入団。2022年7月の東アジアE-1選手権・中国戦で国際Aマッチデビュー。2025年7月の東アジアE-1選手権で3年ぶりに代表復帰した。国際Aマッチ通算4試合無得点。身長1m86cm、78kg。

TEXT=木本伸也

PHOTOGRAPH=スポーツ報知/アフロ

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2025年12月号

超絶レジデンス

ゲーテ12月号の表紙/Number_i 岸優太

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2025年12月号

超絶レジデンス

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ12月号』が2025年10月24日に発売となる。今回の特集は、世界中で弩級のプロジェクトが進行中の“超絶レジデンス”。表紙にはゲーテ初登場となるNumber_iの岸優太が登場。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

GOETHE LOUNGE ゲーテラウンジ

忙しい日々の中で、心を満たす特別な体験を。GOETHE LOUNGEは、上質な時間を求めるあなたのための登録無料の会員制サービス。限定イベント、優待特典、そして選りすぐりの情報を通じて、GOETHEだからこそできる特別なひとときをお届けします。

詳しくみる