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2025.09.02

睡眠不足でがんや肥満リスクが高まる。スタンフォード大教授が教える、グッスリ睡眠できる最新知識【まとめ】

ガンや認知症、肥満予防のためにも必要な「良質な睡眠」について語った、睡眠学の権威・スタンフォード大学西野精治教授のインタビュー記事をまとめてお届け! ※2025年7月掲載記事を再編。

西野精治教授の睡眠学

1.「夏の寝苦しさを放っておくと、がんや肥満、認知症リスクが高まる」睡眠学の権威・スタンフォード大学西野精治教授

睡眠学の権威・スタンフォード大学西野精治教授

2021年に発表されたOECDの調査では、対象となった世界33カ国の平均睡眠時間が8時間28分だったのに対し、日本は約7時間22分で最下位という結果に。さらに、厚労省の「令和元年国民健康・栄養調査」によると、日本の成人の約4割が睡眠時間6時間以下で、働き盛りとされる30代から50代にいたっては、約4割が「5時間以上6時間未満」、約1割が「5時間未満」に該当。これらのデータからも、日本人の睡眠不足はいかに深刻かが伺えよう。

とくに熱帯夜が続く今の季節は、寝苦しさから睡眠不足になりがちだ。それを、「夏だからしかたがない」と放っておくのは禁物。

「個人差はあるものの、理想的な睡眠時間は7時間程度とされています。眠れない状況が続いてしまうと、体調を崩すだけでなく、高血圧や糖尿病、肥満、アルコール依存症に薬物依存症、うつや不安神経症といった精神疾患、認知症、ガンなど、さまざまな病気のリスクが高まってしまいます」と、西野教授は警鐘を鳴らす。

睡眠は、生活習慣病や認知症、ガンといった重大な疾患と深い関係にある。それが明らかになったのは、ここ数十年のこと。

「睡眠は疲れをとり、リフレッシュするためのもの。長らくその程度にしか考えられていなかった睡眠が科学的学問として盛んに研究されるようになったのは、1950年代に、身体は眠っていても脳は活動している状態という“レム睡眠”が発見されたのがきっかけでした。

まず注目されたのは、記憶の整理と定着。当初、レム睡眠が関係していると考えられていましたが、その後研究が進み、身体も脳も休息しているノンレム睡眠時も含め、睡眠全般が記憶の整理や定着に重要な役割を果たしていることがわかったのです」

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2.「寝苦しい夏は室温25~26℃、湿度50%が理想」睡眠学の権威・西野教授。入浴、寝具、照明…最適な睡眠の条件とは

寝苦しさに悩まされる日本の夏。なかなか寝つけない、夜中に何度も目が覚める、早朝目が覚めてしまうといった悩みを抱えている人も少なくないだろう。実際、厚労省の『健康づくりのための睡眠ガイド2023』によると、四季を通じて夏が最も平均睡眠時間が少なく、冬に比べると10~40分も短くなるという。

夏の寝苦しさの一番の理由は、気温の高さにある。

「皆さんご存じの通り、赤ちゃんは眠たくなると手足がポカポカと温かくなります。これは、手足の動静脈吻合から熱を放散し、深部体温(身体内部の体温)を下げるため。日中の活動時よりも深部体温を低くすることで、脳や身体を休息モードにするのです。

ところが、日本の夏は気温も湿度も高く、熱放散がされにくいので、深部体温が下がりづらくなってしまいます。結果、なかなか寝つけない、ぐっすり眠れないといった問題が生じてしまいます」

眠るのに快適な温度は、18~26℃、湿度は50%前後とされている。夏はいずれもオーバーしているので、エアコンを活用し、適切な室温と湿度をキープしたい。

「本来は一年を通して同じ室温、湿度が理想ですが、光熱費を考えるとそうはいかないので、夏は25~26℃に設定してはいかがでしょうか。寝具は、熱や湿気がこもらないよう、通気性や放湿性に優れたものがおすすめです。寝ている間にコップ1杯分の汗をかくので、パジャマは通気性と吸湿性のある素材で、身体を締めつけないものを選んでください」

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3.ショートスリーパーはOK? 時差ボケは解消しない方がいい!? 学生の夕寝はダメ?【睡眠学の権威・西野教授】

西野教授

Q.昼夜逆転のシフトワークで、ずっと時差ボケのような状態が続いています。どうすれば、ぐっすり眠れますか?

質の良い睡眠をとるには、朝日が昇ったら目覚め、夜になったら眠るのが鉄則。人間は、日中体温が高いため活動的になり、夜は体温が低くなるため休息モードに入ります。つまり、活動と就寝時間が体温と同調しているわけです。

それに対して、昼夜逆転で活動しているシフトワーカーは脱同調と言う状況。それでは体内時計が乱れ、睡眠障害はもちろんのことホルモンバランスや自律神経にも悪影響を及ぼすのも不思議はありません。こうしたトラブルは概日リズム睡眠障害というのですが、シフトワーカーは日中働いている人に比べ、概日リズム睡眠障害を患っている人が3倍もいるというデータもあります。

とはいえ、現代社会ではシフトワークを皆無にするのは不可能。個人的には、雇う側が労働者の健康にもっと配慮し、「日中勤務を2週間行った後夜勤を2週間」のような極端な変化ではなく、「勤務時間を数時間ずつ後ろ倒しにする」など体に優しいシフトを考えることが必要だと思いますが、それも職種によっては難しい。

であれば、職場環境を整えるとか個人で対策をとるなどで、眠気を取り除いてパフォーマンスを上げたり、上手に睡眠を確保するしかありません。

方法のひとつが、光療法。夜勤中に眠くなってしまうようなら、あえてブルーライトを浴び、眠りのホルモンと言われるメラトニンの分泌を抑制しましょう。

ブルーライトは脳を直接刺激し、覚醒や気分高揚引き起こすことも明らかになっています。逆に、仕事を終えた後は、なるべく朝日を浴びないように心がけてください。眠る際は、遮光カーテンなどで光を遮った部屋で眠ることを推奨します。

また、適宜仮眠をとることも有効。生産性をあげるための仮眠をパワーナップと言いますが、最近はシフトワーカーのために仮眠室を設ける企業も増えてきて、実際に効果は上がっています。ある実験では、数日間寝ていない人に12時間ごとに2時間の仮眠をとってもらったところ、仮眠後のパフォーマンスが上がっていることが実証されたくらいです。

勤務中に2時間の仮眠は非現実的かもしれませんが、20分~30分未満の仮眠でも十分効果は期待できます。ちなみ、60分以上の仮眠は、眠りが深くなってしまい、本格的な眠りにつく際に支障が出るので避けること。仮眠は30分未満、長くとも1時間未満が鉄則です。

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TEXT=ゲーテ編集部

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