HEALTH

2024.09.26

必要なのは脳活じゃなく「脳休」。睡眠不良、うつ、脳の“働きすぎ”が不調を招く【脳休瞑想のススメ①】

約4割が睡眠負債を抱えているとされる日本。その原因のひとつに、無意識下でも脳がつねにめまぐるしく動き続ける「デフォルト・モード・ネットワーク」がある。脳の動きを80%制御すると言われる「脳休瞑想」を開発した、グラヴィティヨガ協会理事講師の神谷よしみ氏に話を聞いた。『聴くだけで快眠、疲労回復! 脳休瞑想』より一部抜粋して紹介する。

脳休瞑想
Unsplash / KOMMERS ※画像はイメージ

「脳休」が不眠改善やストレス解消につながる 

日本は「不眠大国」の一面を持っています。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、睡眠時間は加盟33か国中、ワースト1位。国としての経済損失はおろか、慢性的に睡眠不足の状態が続くことで脳や体に大きな影響を及ぼす「睡眠負債」が問題視されています。

必要な睡眠時間は人によって異なりますが、本来6〜8時間が適切な睡眠時間と考えられ、6時間以上の睡眠確保が目安になります。ところが、厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」によると、1日の平均睡眠時間は、6時間以上7時間未満であると答えた人がもっとも多く、さらに、6時間未満の割合は、男性37.5%、女性40.6%と、4割前後の人が睡眠負債を抱えている可能性があります。

慢性的な睡眠不足が起こる原因の1つとして、現代のストレス社会が挙げられるでしょう。私たちはパソコンやスマートフォンの普及による情報過多な状況に加え、仕事や家事、育児などやることが山積みで、どんどんストレスを溜めています。

その間、脳は無意識下でもつねにめまぐるしく動き続け、睡眠時以外は休んでいません。このせわしなく働いている脳の状態を「デフォルト・モード・ネットワーク」といいます。この状態が過剰になると、脳疲労による倦怠感、睡眠不良、うつ病など、さまざまな問題を引き起こすことに。きちんとした睡眠がとれないと、体はもちろん、脳も休んだことにはなりません。

そもそも私たちの体は、脳からの指令を受けて体を動かす「運動神経」と、呼吸や血液循環などを無意識に調整している「自律神経」の2つによって生命活動が支えられています。このうち自律神経は、全身の活動を活発化させる「交感神経」と、休息させる働きをもつ「副交感神経」に分かれています。

1日の動きでいえば、日中は交感神経が優位になり、夜は副交感神経が優位になるのが規則正しいリズム。しかし、睡眠不足やストレス過多など、不規則な生活が続くと自律神経のバランスが崩れてしまいます。また、自律神経は、睡眠時も交感神経と副交感神経がバランスよく働くことで、良質な睡眠へとつながるのです。

「脳休瞑想」は心を内観(自分の意識やその状態を自ら観察すること)し、デフォルト・モード・ネットワークを断ち切り、高ぶった交感神経をおさえることを目的に作られました。呼吸に意識を向け、その呼吸の流れや動きをフックに集中力を持続させて、「瞑想状態=脳を休める状態」へと導いていきます。

瞑想には、マインドフルネスストレス低減法、座禅などいろいろな種類がありますが、正しく行うためには積極的なトレーニングが必要なものも少なくありません。その点、「脳休瞑想」は、誰でも簡単に瞑想状態へ導かれるように構成されています。

考えてみてほしいのですが、私たちの脳は日々めまぐるしく動いているとはいえ、そのほとんどは「ぼんやりとした雑念」にとらわれていると思いませんか? 少し先の予定や、過去にあったことばかりが頭を占め、本当に大切なことや、ちゃんと考えたいことになかなか向き合えない……。そんな悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。

その点、「脳休瞑想」の脳波測定の実験では、瞑想中に余計な考え事がストップし、脳の神経活動をおよそ80%抑制するという結果が得られています。ですから、瞑想は質の高い睡眠につながるだけでなく、本来見つめるべきことに向き合える時間にもなるでしょう。

また、近年、認知機能の低下予防などを目的とした、脳に刺激を与えて活性化させる「脳活」がブームです。脳を活性化させることはもちろん大切ですが、その前にしっかり脳を休ませることこそが重要であるということを忘れないでください。

ぜひ、「脳休瞑想」で脳を休ませることを日々に取り入れ、良質な睡眠を得て、自分の本心に向き合う時間にしてみてください。

「脳休瞑想」とは?

「脳休瞑想」は音とナレーションの力によって、働きすぎの脳の活動を80%抑制し、自律神経のバランスを整え、心身の不調を軽減する瞑想法です。

<「脳休瞑想」で期待できる効果>
▪ 眠りの質が高まり元気になる
▪ 睡眠導入剤に頼らず寝られるようになる
▪ 頭がスッキリし、前向きになる
▪ うっかりが減り仕事がはかどる

「脳休瞑想」による脳波解析① 瞑想状態の証明がされた

脳休瞑想
グラフ解説 /オレンジの線は「アルファ波」。とてもリラックスした状態。ブルーの線は「ベータ波」。言葉に聞き入るなど、集中している状態。緑枠の箇所は、アルファ波とベータ波が上下に分かれ空白が現れることで、深い休息状態にあると推測。

現実と眠りの中間を行き来する感覚を伴う、瞑想状態にあると考察された。このデータと被験者の記憶は一致しており、被験者(女性・30代・会社員)は体が軽く感じ、疲れが取れた感覚を得られたと回答。

「脳休瞑想」による脳波解析② 脳神経の活動が80%抑制された

脳休瞑想

グラフ解説 /①は脳休瞑想前の開眼周辺視(1分間の平均値)の脳波パワーを、左脳・右脳それぞれの「シータ波・アルファ波・ベータ波・ガンマ波」の周波数帯域別の分布をグラフ化したもの。

開眼周辺視の状態①④を脳のアイドリング状態にたとえると、グラフ面積が大きくなれば脳の活動率が高い状態となり、面積が小さくなるほど脳への負荷が小さくなる。よって、休息している状態であると考えられる。特記すべき点は、脳休瞑想中(②③)の脳波全体のパワーが瞑想前、開眼時(①)数値と比較して、75〜80%も低燃費化していることであり、まさしく「脳の活動を休めている状態」であると考えられる。また、瞑想後の開眼周辺視状態④も瞑想前と比較して27%も低下していることがわかった。

「脳休瞑想」による脳波解析③ 幸せホルモンが出ているとわかった

脳休瞑想

グラフ解説 /脳波全体の帯域を「リラックス」「Alpha-2」「思考の脳波」の3つに分けて、それぞれの脳波帯域の変化を観察(3つのグラフの数値を足すと100になるが、絶対値ではなく「比率」での解釈)。「①脳休瞑想前」「②③脳休瞑想中」「④脳休瞑想後」それぞれの脳波帯域の分布を示したもの。

Alpha-2帯域は別名「幸せホルモンと呼ばれるセロトニン分泌を促す脳波帯域」と呼ばれており、脳休瞑想を実施している間は、このAlpha-2帯域の脳波が突出して優位に出現していることを確認。また、①と④は思考帯域(ベータ波・ガンマ波の平均値)が優位になっており、一般的な日常の数値として観察。

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脳休瞑想
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神谷よしみ
体力に自信の無い方でも続けられる「グラヴィティヨガ」をはじめ、椅子、壁を利用したヨガプログラムを開発。現在は、日本臨床運動療法学会の下部組織、「Exercise is Medicine Japan」(EIMJ)との取り組みの中で「薬になるヨガプログラム」を開発し、啓蒙を行っている。

COMPOSITION=石田由美

AUTHOR=グラヴィティヨガ協会

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