海外を飛び回る仕事のおかげで、体内時計を整える術すべを知ったという森田恭通氏。自身に不眠の悩みはないものの、ベッドルームをデザインする立場から、睡眠の環境にはかなりの持論を持つ。デザイナー森田恭通の連載「経営とは美の集積である」Vol.25。
睡眠の悩みを解消し、パフォーマンスを最大限に!
昨今、朝までぐっすり眠れない、寝つきが悪い、寝ても疲れが取れない。さらには、睡眠時無呼吸症候群と診断される方もいらっしゃいます。
しかしながら、僕の辞書に“不眠”の文字はなく、ありがたいことに朝までぐっすり。休日など油断すると12時間ぐらい寝てしまうことも(笑)。これは仕事で世界中を訪れるうちに、環境や時差に左右されず、どこでも寝られるよう自分自身を鍛えた結果なのかもしれません。もうひとつは奥さんのおかげ。睡眠を大事にしなければいけない職業ゆえに、夕食は極力早めに済ませ、日付が変わる前にベッドに入る。そんな彼女と生活をともにするうちに、僕自身の睡眠は大きく改善されました。
何より睡眠は長さより質です。いかに深く眠れるか。睡眠ギアで僕が自信を持ってお薦めするのは米国MOLDEXの耳栓Spark Plugs®です。奥さんと一緒にありとあらゆるものを試した結果、これが今のところのベストです。とても柔らかい発泡ウレタンフォーム素材なので、耳に挿入すると、変な圧迫感や痛さもなく、ぴたりフィット。僕も使っていますが、耳栓をすると外気の音がシュッと消え、眠ることに集中できるような気がします。
またコブクロの小渕健太郎くんに教えていただいたBOSEのSleepbuds™もお薦めです。睡眠のために設計されたワイヤレスイヤフォンは、ノイズをブロックし、アプリと連動してヒーリングサウンドなどが約50曲聴けます。これをつけると自然のなかで寝ているような気分に。音もいいので気に入っています。
そして眠りの環境といえば、やはりベッドルームです。僕がプランさせていただく際は、とにかくリラックスできるデザインを心がけます。横たわった時、目に光源が入らないよう、上からの照明をできるだけ減らし、下から上がるふわっとした光にすると人はリラックスします。また眠りにつくまでの光は、自分の横、つまりベッドサイドの灯りと、そこより後方のヘッドボードに光があれば十分。もし眠る時の灯りを替えたいという人は、ろうそくの灯りのような色、温度をイメージするといいですね。住宅の設計は太陽の位置を念頭において考えることが多いのですが、ベッドルームは朝日が入ってきた時に気持ちのいい部屋が好ましく、壁の色はホワイトから生成りの色みを提案することが多いです。黒い空間もいいのですが、目覚めのことを考えると、起きているのに身体が夜と感じやすく、長い目でみると逆効果なのではないかなと僕は思います。さらに五感を刺激しすぎず、脳が心地よいと感じることも重要。例えば、微香のアロマディフューザーやヒノキやヒバのチップ、お茶の葉など、ご自身の好きな香りを用いることでリラックスしやすい環境が整います。また、触感には寝具が大きな役割を担います。僕がヘッドボードなどの家具をデザインさせていただいた「heavenly® bed X GLAMOROUS co.,ltd.5style」のウェスティンとシモンズが共同開発したヘブンリーベッドは「これはヤバい」と気に入ってくれる人が多いようです。
睡眠の影響は身体へ如実に現れ、何より仕事のパフォーマンスに影響を与えます。仕事の効率を最大化するためにも、睡眠をおざなりにせず、「質」を意識してみてはいかがでしょうか。
Yasumichi Morita
1967年生まれ。デザイナー、グラマラス代表。国内外で活躍し、2019年オープンの「東急プラザ渋谷」の商環境デザインを手がける。その傍ら、’15年よりパリでの写真展を継続して開催するなど、アーティストとしても活動。オンラインサロン「森田商考会議所」はこちら。