約4割が睡眠負債を抱えているとされる日本。その症状にはさまざまなタイプがあるが、心身の健康において一番問題視されているのが「入眠障害」だ。帝京大学医療技術学部主任教授の佐藤真治氏に「入眠障害」の弊害と、スムーズな入眠のためのポイントについて聞いた。『聴くだけで快眠、疲労回復! 脳休瞑想』より一部抜粋して紹介する。
「脳休瞑想」で “いまに集中”し健康的な睡眠を目指す
睡眠に関わる病気のことを一般的に「睡眠障害」と言い、「不眠症」「過眠症」「睡眠時随伴症」の3つに分けられます。そのうち不眠症とは、健康を維持するのに必要な睡眠時間が量や質の面で不足していること。いわゆる「眠れない」と自覚して悩んでいる状態です。
同じ「眠れない」という悩みを持つ人でも、その症状はさまざま。寝つきが悪い「入眠障害」、就寝途中で何度も目が覚めてしまう「中途覚醒」、朝早くに目が覚め、その後眠れなくなる「早朝覚醒」などがあります。なかでも、心身の健康において一番問題なのは入眠障害です。
日本睡眠学会では、入眠障害とは「寝つくまでの時間が普段より2時間以上多くかかる状態」と規定されています。そもそも、なぜ「入眠」が重要なのでしょうか? そこには睡眠時の体の仕組みが関わってきます。
睡眠時は、脳波や体の状態によって「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類に分類されています。「レム」とは、目を閉じたまぶたの下の眼球が動いている状態のこと。レム睡眠のときは、交感神経が優位に働き、体は休んでいながらも脳が活発化し、夢を見ながら日中の情報を整理しています。そのため、睡眠不足だと記憶力や集中力の低下につながります。一方、ノンレム睡眠のときは、体も脳も疲労回復のために休息していると考えられ、副交感神経が優位な状態です。
レム睡眠とノンレム睡眠は一定のサイクルを繰り返します。入眠すると、まずノンレム睡眠から始まり、一気に深い睡眠へ。1時間ほどで眠りが浅くなり、レム睡眠へと移行。周期は90〜120分間隔で変わり、睡眠時間の後半になるとノンレム睡眠の持続時間が短くなり、目覚めの態勢へと移っていきます。良質な睡眠のポイントは、寝てから最初の1〜2時間のノンレム睡眠のときに、いかに深い眠りに入れるか。だから、「入眠」が大切というわけです。
では、どうしたらスムーズに眠れるのか。私はその最大のポイントは“いまに集中”することだと考えます。そもそも、人間が眠れない主な理由として、次の3つが挙げられます。
①「お腹が空いてエネルギーバランスが崩れている」
②「不規則な生活でサーカディアンリズム(体の基本的な機能の約24時間周期のリズム)が崩れている」
③「不安や心配事を抱えている」
おそらく最初の2つは解決策がすぐに浮かぶでしょう。一方、不安や心配事を取り除くことは難儀に感じるかもしれません。
しかし、こう考えてみてください。不安の源泉は、主に未来と過去に存在すると。不安や心配事は「過去にあんなことがあったから失敗してしまうかも」「明日はこれをしなければならない」などが積み重なったもの。つまり、不安や心配事は実際に起こっていることではなく、過去への執着や未来への欲望から、脳が勝手に作り出したものにすぎません。そう考えると、「いま限られたこと(目の前の現実に起こっていること、体の状態)」に意識を向けていくうちに、不安や心配事は気にならなくなっていくと言えるのです。
また、私たちは日々、自分の意思で行動しているように考えがちですが、実際は脳が意思決定する前に筋肉が動き、無意識に行動が決まっています。頭で理解するよりも前に、体が教えてくれているのです。
この2点において、「脳休瞑想」に2つのことが期待できると考えます。
1つめは“いまに集中”する状況を作り出し、不安から安心へと気持ちを切り替え、入眠へのハードルを低くすること。
2つめは心と体に耳を澄まして直感の精度を上げていくうちに、体が心地よい状態を覚えて穏やかな幸福感が蓄積されること。
実際に、「脳休瞑想」を行っている参加者の脳波を調べたところ、幸福感と関連し、「幸せホルモン」と呼ばれる神経伝達物質のセロトニンが分泌される可能性が高いことが発見されました。
また、なかなか眠りにつけないとそれで不安になりますよね。でも、眠れないからといって必要以上に不安を抱くことはありません。私たちは、起きて活動している状態が普通であると考えがちですが、人間以外の動物は寝ている状態が普通です。エネルギー(食事)を取り入れるために起きているにすぎません。人間も生理現象で必ず眠りに落ちるのです。それでも、これまで説明してきたように、やはり良質な睡眠は心身の健康を担うカギ。そのためにも、「脳休瞑想」をうまく活用してみてはいかがでしょうか。
「脳休瞑想」とは?
「脳休瞑想」は音とナレーションの力によって、働きすぎの脳の活動を80%抑制し、自律神経のバランスを整え、心身の不調を軽減する瞑想法です。
<「脳休瞑想」で期待できる効果>
▪ 眠りの質が高まり元気になる
▪ 睡眠導入剤に頼らず寝られるようになる
▪ 頭がスッキリし、前向きになる
▪ うっかりが減り仕事がはかどる
「脳休瞑想」による脳波解析① 瞑想状態の証明がされた
現実と眠りの中間を行き来する感覚を伴う、瞑想状態にあると考察された。このデータと被験者の記憶は一致しており、被験者(女性・30代・会社員)は体が軽く感じ、疲れが取れた感覚を得られたと回答。
「脳休瞑想」による脳波解析② 脳神経の活動が80%抑制された
開眼周辺視の状態①④を脳のアイドリング状態にたとえると、グラフ面積が大きくなれば脳の活動率が高い状態となり、面積が小さくなるほど脳への負荷が小さくなる。よって、休息している状態であると考えられる。特記すべき点は、脳休瞑想中(②③)の脳波全体のパワーが瞑想前、開眼時(①)の数値と比較して、75〜80%も低燃費化していることであり、まさしく「脳の活動を休めている状態」であると考えられる。また、瞑想後の開眼周辺視状態④も瞑想前と比較して27%も低下していることがわかった。
「脳休瞑想」による脳波解析③ 幸せホルモンが出ているとわかった
Alpha-2帯域は別名「幸せホルモンと呼ばれるセロトニン分泌を促す脳波帯域」と呼ばれており、脳休瞑想を実施している間は、このAlpha-2帯域の脳波が突出して優位に出現していることを確認。また、①と④は思考帯域(ベータ波・ガンマ波の平均値)が優位になっており、一般的な日常の数値として観察。
無料で試せる体験版「脳休瞑想」
「脳休瞑想」アプリをダウンロード
佐藤真治
大阪産業大学人間環境学部教授を経て、2019年より帝京平成大学健康メディカル学部教授に。2021年、帝京大学医療技術学部教授に就任。日本心臓リハビリテーション学会評議員、日本体力医学会評議員などとして活動中。