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2023.05.27

CPAP治療で必要となる費用は? 保険は適応される?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療として推奨されるCPAP療法。検査や毎月かかる費用はどれほどなのか? 保険適用になるのか医療費控除の対象になるのか? 治療コストについて睡眠時無呼吸症候群の研究・治療を行う医療法人みなとみらい理事長・田中俊一医師に話を聞いた。

CPAP

Unsplash/Marek Studzinski

CPAP療法は診断基準を満たせば保険が適用される

寝ている時に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群(SAS)は自分では気づけないこともあり、治療はもちろん、検査も診断も受けていない“潜在患者は”、日本で200万~900万人はいるという推計がある。

睡眠時無呼吸症候群の症状が悪化すると動脈硬化や心疾患系の疾患、糖尿病などの発症リスクが高まるので、いびきがひどいと言われたとか、朝起きても熟睡感がない、すっきりしない、疲れやすいなどの自覚があれば専門の医療機関の受診をしたほうが良い。検査により睡眠時無呼吸症候群と診断されれば保険適用で治療が受けられる。

保険適用条件の目安となるのは、睡眠時に、10秒以上呼吸が止まる回数が1時間あたり何回あるか。1時間に5回未満なら異常なし。5回以上になると睡眠時無呼吸症候群(軽症)と診断され、保険適用で治療が可能になる。1時間に20回以上は中等症にあたるので、CPAP療法の適応となる。

「実感としてですが、40~50代の約半数は無呼吸の症状があると思います。そして年齢とともに症状は進みますから、75歳以上の8割近くは無呼吸症候群ではないでしょうか。睡眠時無呼吸症候群と診断されれば保険治療ができますし、自費の自由診療であれば中等症に至らなくても、予防的に治療が受けられます」(田中医師)

医療法人みなとみらい理事長 田中俊一

田中俊一/Shunichi Tanaka
医学博士。国際医療福祉大学、横浜市立大学教授を経て2008年から医療法人みなとみらい理事長。日本糖尿病学会専門医研修指導医。4年前からは、銀座クリニックで病気でない人を対象に「パーソナル ウェルネスドクター」として、年単位のスケールで健康度の評価とその増進のための医療を提供している。自身も予防的にCPAPを6年前から継続使用し「よい睡眠」を筆頭に、健康によいことはすべて実践することで100歳現役を目指している。

CPAP治療で必要となる費用

では実際、睡眠時無呼吸症候群の検査とCPAP療法で必要となる費用とはどれくらいなのか? 引き続き田中医師に尋ねた。神奈川県のみなとみらいクリニックの例になるが、保険診療なので全国どこの医療機関でも大差なく受けられる。

<検査にかかる費用>

■簡易検査「パルスオキシメトリー検査」
スクリーニングとして、自宅で血液中の酸素飽和度を測定する。コロナ禍で身近になったパルスオキシメーターを使い、ひと晩の睡眠状態を測定することで睡眠時無呼吸の状態にあるかどうかがわかる。測定器であるパルスオキシメーターはクリニックから貸し出し可能。

費用:約300円(健康保険3割負担時。通常は初診の検査に含まれる)

■精密検査「睡眠脳波検査(PSG検査)」
簡易検査の結果、睡眠時の無呼吸が疑われる場合は睡眠状態の精密測定を行なう。「PSG(ポリソノムグラフィー)、終夜睡眠ポリグラフ検査」といい、就寝中の脳波、眼球運動、呼吸、心電図、筋電図、いびき、血液中の酸素飽和濃度などを、ひと晩連続して測定・記録し、睡眠時無呼吸症候群かどうかを診断する。 また、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を確認する。

睡眠の深さもわかりやすくグラフ化される。浅い眠りで眼球がキョロキョロ動く状態がレム睡眠。深い睡眠で眼球もまったく動かないノンレム睡眠は、深さによって3段階(N1、N2、N3)に分かれている。睡眠時無呼吸症候群の場合、もっとも深い眠りN3が得られていないことが多いという。このN3のときに全身の修復ホルモンが分泌されるというから、眠りが浅いことの影響の大きさが想像できる。

「睡眠時無呼吸症候群の診断はPSG検査がスタンダード。その人の睡眠状態がわかるので、適した治療提案が可能になります」(田中医師)

PSG検査で睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸(AHI)が5未満なら、睡眠時の呼吸状態に問題はないと判断される。5~15回未満は睡眠時無呼吸症候群の軽症だが、高血圧や糖尿病のリスクは有意に高くなる。どんな治療をするかは計測データに沿って医師と相談となる。15~30回未満は中等症でCPAP療法が推奨される。30回以上は重症。心臓や血管の病、2型糖尿病のほか、突然死を併発するリスクがある。

検査は1泊となるが、夜に寝るだけで食事も出ない。みなとみらいクリニックでは「夜間検査」という扱い。「入院」として扱う医療機関もあり費用に関わるので確認しておきたい。

費用:約13,000円(健康保険3割負担時)

■治療検査「タイトレーション検査」
診断確定後に行う検査。CPAPを装着した状態でPSG検査を行うことを「タイトレーション検査」という。CPAPによって睡眠時の無呼吸状態や睡眠の改善状況を測定、診断する重要な検査だ。これにより、的確な設定や調整を行える。

費用:PSG検査と同等程度(約13,000円、健康保険3割負担時)
※入院費・個室利用料が発生する医療機関もあるので要確認

<CPAP機器をレンタルする場合の費用>

保険適用のため3割負担となり、自己負担額は約5,000円/月(健康保険3割負担時)程度。受診時の診療費、指導管理料も含まれる。2ヵ月に1度の受診でCPAPの調整と、悪化してないかどうかの検査も行う。
 

<CPAP機器を購入する場合の費用>

CPAPは自費で購入することも可能だ。

「現在5種類くらいありますが、CPAPはマスク内に風が出てくるだけではなくて人工呼吸器に近いものです。安くて機能もよいというものはありませんから、よく説明を聞いて、自分に合うものを選んでください」(田中医師)

機種によるが、料金は30~40万円くらいが目安とのこと。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群の検査・診断には、睡眠状態の精密測定のためのPSG検査を行う。これが13,000~30,000円程度。中等症以上と診断されてCPAP治療を行うなら、機器をレンタルする場合で、診療費、指導管理料を含めて月5,000円程度。どちらも保険適用になる。いびきや熟睡感など、自身の睡眠に「おや?」と思う部分があるのなら、実際に検査を受けてみるのは有効だろう。
 

Q&A

CPAPの医療費は毎月いくらくらいかかる?

CPAP療法の診療費、指導管理料も含めて約5,000円/月(健康保険3割負担時)。保険適用外(自費)は1ヵ月約15,000円。
 

CPAPの保険適用基準はどのくらい?

「PSG(ポリソノムグラフィー)、終夜睡眠ポリグラフ検査」で、睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を確認し、睡眠時無呼吸症候群かどうかを診断する。5回以上は睡眠時無呼吸症候群と診断され、保険適用で治療ができる。

5回未満は正常。
5~15回未満は軽症。高血圧のリスクが高くなる。
15~30回未満は中等症。ここからCPAP療法が推奨される。
30回以上は重症。心血管の病気、2型糖尿病の発症リスクがある。
 

CPAPの保険点数はどのくらい?

CPAP治療は保険適用で1,350点、3割負担で4,050円程度。ただし診察料(再診料等)は別途発生する。
※在宅医療で行う場合は別
 

CPAPは医療費控除できる?

医療費控除の対象になる。会計時の領収書は保管を。
 

CPAPに関する記事はこちら

TEXT=海野由利子

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