PERSON

2025.08.13

『ゲーテはすべてを言った』21世紀生まれ初の芥川賞作家・鈴木結生インタビュー「ゲーテは苦手⁉」【まとめ】

ゲーテはすべてを言った』で第172回芥川賞を受賞した作家・鈴木結生さんのインタビュー記事をまとめてお届け! ※2025年2月掲載記事を再編。

新芥川賞作家・鈴木結生【まとめ】

1.新芥川賞作家・鈴木結生「ゲーテは苦手」。それでも題材に選んだ理由

鈴木結生さん『ゲーテはすべてを言った』インタビュー

西南学院大大学院に在籍し英文学を専攻する鈴木結生さんは現在23歳。ゲーテ文学の愛好家やゲーテを語る世代の方々には「若い」と思われるだろう。まずは鈴木さんにゲーテとの出合いについて聞いた。

「僕は父親が牧師というクリスチャン家庭に生まれました。だから、身近な本といえば、まず『聖書』。物心ついた頃から『聖書』を読んでいました。それから、ごく自然に『聖書』につながる文学作品を読むようになった。ダンテ『神曲』とか、ゲーテ『ファウスト』とか。『ファウスト』は潮出版社が出していたゲーテ全集に収録されたものが好きでした。1冊の中に『ファウスト』の第1部と第2部、加えてゲーテが若い時に書いた『ウル・ファウスト』も入っていて、値段的にお得でいいなって感じていたんです(笑)」

『ファウスト』はゲーテの代表作のひとつとして知られるが、難解な表現が多く、「読むのを途中で断念した」という声もよく聞く。

「第2部は特に難しい。でも、『ファウスト』の枠組みは基本的に『聖書』のヨブ記。だから、クリスチャン家庭に育った僕にとって、全然わからないというほどのことではなかった。当時、僕はシェイクスピアが好きだったので、文中の酒場にシェイクスピアの物語に出てくるキャラクターが現れたり、シェイクスピア作品の引用が出てきたりすると、すごくうれしくなりました。『ファウスト』は繰り返し読んだ一冊です」

だが、その後、鈴木さんがゲーテ作品にハマることはなかった。ゲーテは「今でも苦手な作家」だとも言う。

【続きはこちら】

2.鈴木結生が芥川賞『ゲーテはすべてを言った』執筆のために読んだ本は500冊!

鈴木結生さん『ゲーテはすべてを言った』インタビュー

ゲーテ研究の第一人者・博把統一は家族で出かけたレストランで、紅茶のティーバッグに書かれたゲーテの名言「Love does not confuse everything, but mixes.」に出合う。いかにもゲーテが使いそうな言葉であるが、統一は「本当にゲーテ自身が発したものなのだろうか」と疑問を抱く。その謎解きを軸に小説『ゲーテはすべてを言った』のストーリーは進んでいく。

「ティーバッグのエピソードは実際にあった出来事。父が手にしたゲーテの名言を僕に見せて、“この言葉はどの本に書いてあるの?”と聞いてきた。わかりませんでした。この謎を解決したいとずっと思っていましたが、なかなか手をつけられなかった。謎を解決するには、ゲーテの全集を読破しなければならないですから。そろそろ取りかかってみようと思ったのが、『ゲーテはすべてを言った』を書くきっかけです」

そこから『ゲーテはすべてを言った』を書くためのインプット作業が始まった。図書館に通い、目の前にゲーテの著作や論文、関連書籍、派生文学作品などを積み上げる。本を読みつつ、気になったフレーズをノートにメモ。その姿は「およそ読書とはいえない、美しくないものだった」と鈴木さんは言う。

「1作書くにあたり、関係する本を数百冊は読みます。『ゲーテはすべてを言った』執筆のために読んだ本は500冊。昨年はこの小説を含め2作書いたから、1年間で1000冊ほど読みましたね。僕は“せっかくの時間を損したくない”という思いが強い。読書と創作の両方を同時にできれば、時間が節約できて一挙両得。仕事と趣味を両立できる利点はそこにあると思います」

【続きはこちら】

3.芥川賞『ゲーテはすべてを言った』作家・鈴木結生が薦める、ゲーテ入門本とは

鈴木結生さん『ゲーテはすべてを言った』インタビュー

父親が牧師というクリスチャン家庭に生まれた鈴木結生さん。幼い頃から『聖書』に親しみ、ごく自然に聖書につながる本を読み始めたという。その流れのなかで読んだ『ファウスト』がゲーテ初体験の一冊。ゲーテを読むなら、まずは代表作『ファウスト』から始めるべきなのだろうか。

「いいえ、それはお薦めしません。僕はクリスチャン家庭という環境もあって『ファウスト』から入りましたけど、『ファウスト』は『聖書』の知識がないと理解できない箇所が多い。ゲーテ入門にふさわしいのは、新潮社から出ている『ゲーテ格言集』。ゲーテの全著作と、警句、格言のなかからの親しみやすい言葉が選ばれており、手軽にゲーテの感性や知性に触れることができます」

ゲーテの名言集や格言集は多数出版されているが、なかには“怪しいもの”も多い。鈴木さんが薦める新潮社の『ゲーテ格言集』は、ヘルマン・ヘッセとも交流があったドイツ文学者の高橋健二が言葉の選定・翻訳を担当。出典も明記された信頼できる一冊だ。

【続きはこちら】

TEXT=ゲーテ編集部

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2025年9月号

陶酔レストラン ゲーテイスト2025

ゲーテ2025年9月号

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2025年9月号

陶酔レストラン ゲーテイスト2025

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ9月号』が2025年7月25日に発売となる。食に人生を懸ける 秋元康小山薫堂中田英寿見城徹の“美食四兄弟”が選ぶ、圧倒的にスペシャルなレストランを一挙紹介。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

GOETHE LOUNGE ゲーテラウンジ

忙しい日々の中で、心を満たす特別な体験を。GOETHE LOUNGEは、上質な時間を求めるあなたのための登録無料の会員制サービス。限定イベント、優待特典、そして選りすぐりの情報を通じて、GOETHEだからこそできる特別なひとときをお届けします。

詳しくみる