テレビ番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』や、霜降り明星のYouTube『しもふりチューブ』などを担当する気鋭の放送作家・白武ときお氏。2024年10月に、自身が仲間とともにゲームデザインを担当したボードゲーム『サンレンタン』が発売されたことを記念してインタビューを実施。第1回は、白武氏の感性を培ってきた両親の教育について。
映画はコミュニケーションの共通言語
「父は、京都にある和食器メーカーのデザイナーでした。会社員として企業に勤めていたのですが、『サラリーマンではない、なにか一芸に秀でた人になってほしい』と子供の頃はよく言われたのを覚えています」
21歳でテレビ番組『学生才能発掘バラエティ 学生HEROES!』(テレビ朝日系)の放送作家としてデビューを果たし、23歳の時に『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)の『笑ってはいけないシリーズ』に若手作家として参加。現在はYouTubeやラジオ、舞台の演出など幅広く活躍する白武ときお氏は、そう昔を振り返る。
父親はプロダクトデザイナー、母親は洋服づくりが趣味の専業主婦という家庭で育った白武氏は、幼少期から周りと違うモノを親から与えられていたという。
「小学生の頃は、みんなランドセルを使っていたのですが、両親がダサいと思っていたのかこっちの方がいいと薦められ、ひとりだけ無印良品のリュックサックで登校していました。
筆箱や裁縫セットなども、当時は男の子向けのドラゴンのデザインが流行っていたんですが、親から『カッコよくない』と言われたこともあり、無印良品で売っている無地のポーチを使っていました。周りから少し浮いていたかもしれません」
“好きなもの”のきっかけを与えてくれた両親
子供の頃から自宅にある映画やアニメのビデオをよく見ていたという白武氏は、高校時代には年間500本以上のDVDを鑑賞するようになっていた。そんな映画やアニメに熱中し始めたのも、実は両親から受けた影響が大きかったという。
「家に『ミスタービーン』や『トムとジェリー』のビデオがたくさんあって、そればかり見て育ちました。僕が好きそうなアニメの放送日になると母親が教えてくれて。『ONE PIECE』や『名探偵コナン』も放送初回から見ていましたね。他にも、『ハリー・ポッター』のような大作やアカデミー賞、カンヌ映画祭の受賞作が決まると、父親が映画館に連れて行ってくれました」
また、読書家である白武氏が本を好きになったのも、父親がきっかけだった。
「中学生の頃には、父が読んで面白かった本を紹介してくれて。東野圭吾さんとか村上春樹さんなど、いろいろなジャンルの本を読むうちに文学の世界にも惹き込まれていきました」
映画の名シーンでイメージを共有する
映画に関しても高校卒業時には、“世界の名作映画”と言われるベタな作品はほぼ見尽くしていた。そんな白武氏にとって、最も印象深かった作品はなんだったのか。
「リドリー・スコット監督の『ブレードランナー』です。荒廃した近未来の“ディストピア”のイメージ、ビジュアルに衝撃を受けました。これまで見た色んなモノの源流がここにあるんだ!と。映画界はもちろん、それ以外のジャンルにも大きな影響を与えた、サイバーパンクの草分け的な存在だと思います」
他にも、黒澤明監督の作品や『スター・ウォーズ』シリーズなど、数々の名作映画に影響を受けてきたという白武氏は、今でも映画評論サイトを見ては話題の映画をチェックしているという。
また、これまで見てきた映画の知識が放送作家としての仕事において、重要なコミュニケーションツールにもなっている。
「高校時代に見た映画の知識は、今の仕事の基盤になっています。例えば、番組でコント的なものやセットのイメージを伝える時、同じように理解できていると思っても全員頭の中にあるものはあやふやです。なので『あの映画に出てくるシーンみたいに』と具体例や参考画像を見せて、周りの人とイメージ共有していく。
そんな感じで、年の離れた人たちと打ち合わせをする時にも昔の映画を知っていれば、自分のアイデアをより具体的に説明することができる。たとえ名作と呼ばれていないものでもさまざまな映画のシーンを知っておくと、イメージのストックとして役に立つこともあります」
幅広い世代に向けた企画を作り出す白武氏にとって、映画は人とのコミュニケーションにおける大切な共通言語のひとつ。勉強については基本的に放任主義だったが、さまざまなカルチャーを教えることには熱心だったという両親の影響は、今の白武氏の仕事にもしっかりと息づいている。