日本フットサルリーグ(以下、Fリーグ)の松井大輔理事長は、フットサルとサッカーが垣根を越えてともに発展する未来を思い描く。自身の現役時代の経験から両競技の技術、戦術を学ぶことが、フットボーラーとしての成長につながることを実感している。ブラジルやスペインのように、幼少時代から二刀流で選手を育成する環境づくりを目指す。#1 #2

フットサルからサッカーに還元できることは多い
フットサルコートの広さはサッカーの約4分の1。その中で両チーム合わせて10人の選手がしのぎを削る。サッカーよりもボールに触る機会が増え、狭いスペースでプレーするため、より正確な技術や判断のスピードが求められる。
現役時代の松井大輔理事長はサッカーで独特のリズム、華麗な足技を駆使したドリブラーとして活躍。日本代表として2010年W杯南アフリカ大会にも出場した。キャリア終盤にはフットサルにも挑戦。サッカーとの二刀流を経験したことで、ふたつの競技の親和性を実感している。
「実際にフットサル選手としてプレーをしてみて、もう少し早くフットサルをやっていたらよかったなと思いました。ブラジルをはじめ、いろんな国でフットサルからサッカー選手になっている例は多い。フットサルがサッカーに還元できることはたくさんあると感じています」
ブラジルのロナウジーニョやネイマール、ヴィニシウス、スペインのイニエスタといった超一流のプレーヤーたちが、少年時代にフットサルで技術を磨いたことは有名。3度の欧州CL制覇を誇る名将グアルディオラ監督はフットサルチームの練習に通い、フットサル戦術を自らのサッカーに取り入れたことでも知られる。
1対1、2対2、3対3など局面での駆け引きや戦術はサッカーより緻密な部分もある。
「(サッカーの)日本代表選手を育成するのにフットサルは大事だと考えています。幼少期にフットサルを経験している、していないでは、ポジションの優位性に対する考え方なども違ってくる。技術もそう。知っている技術はプレーに出せるけど、知らないことは出せない。新しいものを受け入れないと進化できない時代に来ていると思います」
フットサル経験者が多いスペインの強さ
日本ではサッカーとフットサルを切り離して考える傾向が強い。松井は少年少女が自然とふたつの競技に取り組める環境を整備することを理想としている。そのためにFリーグの知名度アップは不可欠。両方の競技を知る指導者の育成なども課題となる。
「フットサルとサッカーを分けて考える必要はないと考えています。幼少期からサッカーもフットサルもやった方がいい。子供たちがいろんな刺激を受けることが将来的にプラスになることは間違いない。子どもたちが自然と両方に取り組める環境をつくり、成長するにつれてどちらの競技に進むかは子どもたち自身が考えればいい。ブラジルもスペインもポルトガルも14~15歳まではみんなフットサルをやっている。フットサルとサッカーをフットボールとしてひとつにしていかないと先進国に置いていかれてしまいます」
2024年夏のパリ五輪のサッカーで日本代表は、準々決勝でスペインに0-3で敗れた。松井はその試合のスペインのプレーの端々にフットサルで育まれた技術、戦術の要素を感じていた。
「パリ五輪で日本とスペインが対戦しましたが、スペインの選手はボールを受ける前から優位なポジションをとれている選手が多い。またボールを持った時に自分ではがせる選手が多い。フットサルIQもサッカーIQも必要。両方の知識があるだけで全然違うので、日本代表が強くなるためにはいろんなことを知らないといけない。昔は感覚でできた時代もありましたけど、今はそういう時代じゃなくなっていると思います」
フットサルの発展は自身を育ててくれたサッカーの強化にもつながる。フットボールの価値を高めるために、Fリーグの先頭に立って精力的に活動する日々が続く。
松井大輔/Daisuke Matsui
1981年5月11日京都府生まれ。9歳でサッカーを始める。2000年に鹿児島実業高から京都パープルサンガに加入。フランスのル・マン、サンテティエンヌ、グルノーブルなどで活躍し、ロシア、ブルガリア、ポーランドなどでもプレーした。2021年にY.S.C.C.横浜フットサルと解約し、2022年1月にはJ3のYSCC横浜にも加入し、サッカーとフットサルの二刀流に挑戦。2024年2月現役引退を発表した。横浜FCサッカースクールコーチと、浦和レッドダイヤモンズのアカデミーのロールモデルコーチなどを経て、2024年6月にFリーグ理事長に就任。