PERSON

2025.06.23

30代で美容師からアルバイト店員へ転身、社長にまで上り詰めた、セカンドストリート・一戸綱樹とは

2025年に世界で1000店舗を突破した総合リユースショップの2nd STREET(セカンドストリート)。その代表取締役社長を務める一戸綱樹に、ロングインタビュー。30代で美容師からショップ店員に転身した意外な経歴や、セカンドストリートのビジネス戦略について伺った。全4回のうちの第1回。

世界を舞台に展開する総合リユースショップ

売る、買う、巡る。セカスト。

テレビやYouTubeでおなじみとなったこのキャッチコピー。総合リユースショップのセカンドストリートといえば、今や日本全国に店舗を構える人気のチェーン店だ。

その人気の秘密は、おしゃれなアイテムがお手頃な価格で手に入るお得感。人気ブランドの商品を低価格で購入できるとあって、若い世代からも絶大な支持を集めている。

1996年に香川県高松市に1号店をオープンして以来、その知名度は次第に他県にまで広がり、2016年には日本国内で500店舗を突破。東京や大阪、名古屋などの都市部にもエリアを拡大し、着実にファンを獲得。

2018年からは、アメリカとマレーシアに新店舗を構え、現在では海外の店舗数が100超え。台湾、タイ、香港、シンガポールにも事業を進出する、日本のリユース業界のトップランナーにまで成長している。

2025年に全店舗数が世界で1000店舗を超えたセカンドストリートは、まさに業界屈指のリユースショップといえよう。 日本の長い歴史を持つリユース文化を活かした営業スタイルは、循環型社会を実現する理想的なビジネスモデルとして、アメリカや東南アジアでも高い評価を得ており、日本を代表する企業のひとつになりつつある。

世界1000店舗を記念して店内に飾られているポスター。

30代で美容師からアルバイト店員へ

そんなセカンドストリートの代表取締役社長を務める一戸綱樹は、2001年にフォー・ユー(現・セカンドストリート)に入社。新卒ではなく34歳という“遅めの入社”には、一戸ならではの意外な理由があった。

「実は、セカンドストリートで働く前は、プロの美容師として活動していました。

北海道札幌市で生まれて、小学2年生の時に家族で上京。高校を卒業してからは、美容師を目指して高田馬場の専門学校に通いました。その後、美容師として東京で働いたのですが、家庭の都合で地元の札幌に戻ることになりまして。

また東京で仕事をするために資金を集めたいなと思っていた時期に、近所にあったセカンドストリートを見つけたんです。店内に入ると好みの洋服や雑貨、家具などが並んでいて、ここで働いてみたいと考えるようになりました」

当時はまだセカンドストリートの4店舗目だった札幌苗穂店。一戸は美容師としてのキャリアを捨て、30代でセカンドストリートのアルバイトに。今ほどの知名度がなかった会社で、ショップスタッフとして新たな道を歩みはじめた。

「別に美容師という職業が嫌だったわけではないんです。ただ今までとは違う業界を覗いてみたくなって。学生時代からファッションが好きだったので、自分の好みに合っていたんです」

その後、当時の統括マネージャーからの推薦もあり、一戸はフォー・ユーの子会社に入社。社員として札幌店の店長やエリアマネージャーを務め、少しずつ現在の地位へのキャリアを築きあげていく。

一戸綱樹/Tsunaki Ichinohe
1967年北海道生まれ。34歳で美容師からセカンドストリートのアルバイトに転職。2001年にフォー・ユー(現・セカンドストリート)に入社し、2010年にゲオホールディングスのリユース店舗運営統轄部部長に就任。2023年4月にはセカンドストリートの代表取締役社長に就任し、ゲオホールディングスの上席執行役員も兼任している。

仕事は自らを成長させてくれる場所

30代でプロの美容師からセカンドストリートのアルバイトへ転身。まさに“異例”の経歴を持つ一戸だが、今振り返っても当時の決断に後悔はないという。

逆に、あえて新しい業界に踏み切ったことで、今までにないものが見えてきたのだとか。

「セカンドストリートに巡り会えたことは、自分にとって本当によかったと思います。

アルバイトからのスタートでしたが、後に1店舗の店長を任されるようになって、エリアマネージャーやゾーンマネージャーといった段階を、少しずつでも着実に踏んでくることができた。

自分なりにしっかりと成長できたからこそ、今の社長という地位があると思っているので、僕にとって仕事とは“成長できる場”なんです」

そう微笑みながら語る一戸。社長として会社を運営するなかには、辛く厳しいこともあるだろうが、自らを成長させてくれる仕事は、一戸にとって“愉しみ”のひとつになっている。

「僕は、『なんのために仕事をするんだろう』と悩んだことがなくて。仕事は当然するものだと考えているので、あまり苦痛に感じたことがないんです。なので、経営者として大変なことがあっても、楽しみながら仕事をしています」

人生の成功への道はひとつではない。自らが成長できる場で、目の前の仕事に打ち込んでこそ、見えてくる景色がある。そう感じさせてくれる一戸の言葉からは、セカンドストリートの成長の秘密が隠されているのかもしれない。

※2回目に続く

今も月に平均4〜5回は実際の店舗にお忍びで訪れてスタッフの働きを見ているという一戸。

TEXT=坂本遼佑

PHOTOGRAPH=古谷利幸

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