2025年に世界で1000店舗を突破した総合リユースショップの2nd STREET(セカンドストリート)。その代表取締役社長を務める一戸綱樹に、ゲーテがロングインタビュー。30代で美容師からショップ店員に転身した意外な経歴や、セカンドストリートのビジネス戦略について伺った。全4回のうちの第3回。

“一目でわかる外装”のブランド戦略
「セカンドストリートには、店舗の外装に一定のレギュレーションがあって。総合リユースショップだと、赤と青と白のカラーリングと決まっているんです」
今や日本全国で見かけるようになったセカンドストリート。有名ブランドのアイテムをお手頃な価格で購入できるとあって、広い世代に活用されている総合リユースショップだが、その人気の秘密は各店舗の“デザイン”にあった。
「同じカテゴリーの店舗でも、社内にはもう少し細かい分類があって、微妙にカラーリングが異なることもありますが、基本的には同じレギュレーションで外装を決めています。
例えば、アパレルリユースの特化店だと白と赤を基調としていて、ハイブランドを取り扱うコンセプトショップでは、高級感のあるブラックを使うようにしています」

街中を行き交う人々が一目見ただけで、セカンドストリートだとわかる外装にする。それもセカンドストリートのブランディング戦略のひとつ。
どこの地域の店舗であっても外装を見れば、なにを売っているのかが一目でわかるようにするためには、統一したデザインのレギュレーションが欠かせないのだという。
「他にも、店内の天井や壁はホワイトで統一していて、床には木目調のフロアシートを使うようにしています。
なかにはイレギュラーな店舗もあって、例えば、2024年にオープンした高田馬場店では、1階と2階の床を微妙に違うモルタル風の素材にしている。

これは使いやすい素材をこれから出店する店舗に採用するため。使いやすさを比較するための“トライアル”みたいな形で、試行錯誤しながらレギュレーションを修正し続けています」
まずはテスト店舗で導入してから、効果や運用上の課題を検証したうえで、他店舗へ供給しているという、セカンドストリートのレギュレーション。
どこの地域の店舗でも顧客に違和感を与えることなく、思う存分ショッピングを楽しんでほしい。そんな想いが込められているのだ。

店舗デザインをすべて統一するメリット
そんなセカンドストリートのレギュレーションが形作られたのは、一戸がセカンドストリートに入社してまもない2004年頃。当時は、まだ各店舗によって外装などのデザインがまちまちだったという。
「フォー・ユーがセカンドストリートを運営していた頃は、地域によって店舗の外装はバラバラでした。でも、僕がかつて勤めていた北海道の店舗が、赤、青、白の3色を使っていたら、いつしか他の店舗も同じ色を使うようになって。
ある時、各店舗を運営する子会社を合併することになり、関東で展開していた『BOOK MARKET』という古書店を、すべてセカンドストリートに作り変えることになった時、札幌店の外装をレギュレーションにすることにしたんです」

その後、日本全国に出店する店舗の外装を、同じカラーリングにすることとなったセカンドストリート。店舗のデザインをすべて同じレギュレーションに統一することには、運営する企業側にも大きなメリットがあったのだとか。
「外装や内装のレギュレーションを統一することで、新店舗の出店をスピーディーに進めることができる。いちいち店舗デザインを考える必要がなくなるし、棚やハンガーは大量生産できるので、大幅にコストを減らすこともできます。
働くスタッフたちも各店舗による違いはない方が働きやすいですよね。なので、すべての店舗のデザインを統一することは、お客様だけでなく運営側にも大きなメリットになったんです」

1967年北海道生まれ。34歳で美容師からセカンドストリートのアルバイトに転職。2001年にフォー・ユー(現・セカンドストリート)に入社し、2010年にゲオホールディングスのリユース店舗運営統轄部部長に就任。2023年4月には、セカンドストリートの代表取締役社長に就任し、ゲオホールディングスの上席執行役員も兼任している。
あえて海外のカルチャーには合わせない
そんな各店舗のデザインをレギュレーションによって決めているというセカンドストリートだが、アメリカやマレーシアなどの海外の店舗ではどうなのだろうか。
「海外の店舗も、基本的に日本と同じレギュレーションで展開しています。こちらから変に海外のカルチャーに合わせるのではなく、日本のブランドの良さをそのまま運んだ方が、海外のお客様にも喜んでいただけるはず。
でも、商品棚やハンガーは日本から輸送すると莫大なコストがかかるので、現地の工場に日本のものと同じように作れないか掛け合って、できるだけその国のなかで調達できるようにしています」
海外にもリユースショップはあるが、日本ほどのクオリティの店は少ないと語る一戸。内装にあまりコストをかけない海外のショップでは、商品がごちゃ混ぜの状態で並べられていることも多いのだそう。
個人経営の古着屋とは一味違う、セカンドストリートの“セレクトショップ”のような品格と、価値ある商品をしっかりと査定して販売するシステムは、日本だけでなく海外の顧客にも評判がいい。

「アメリカにも“古着文化”は根付いているのですが、どちらかというと“寄付”に近い形で商品を集めることが多い。
例えば、『スリフトショップ』のようなボランティア団体が運営しているお店はあるのですが、ビジネスとして成功しているリユース企業はまだ多くないので、日本の企業が参入できる余地がたくさんある。
しっかりと査定をしたうえで買い取り、わかりやすいディスプレイで商品を並べる。そんなセカンドストリートの使いやすさが、海外のお客様にも少しずつ浸透しているのだと思います」
日本で長い歴史を持つ“リユース文化”を海外にも発信していきたい。そんな想いが込められたセカンドストリートは、これからも世界を舞台に拡大していく。
※4回目に続く