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2025.06.26

ハイブランド、アウトドア、インテリア…世界1000店舗突破するセカンドストリートのコンセプト戦略とは

2025年に世界で1000店舗を突破した総合リユースショップのセカンドストリート(2nd STREET)。その代表取締役社長を務める一戸綱樹に、GOETHEがロングインタビュー。30代で美容師からショップ店員に転身した意外な経歴や、セカンドストリートのビジネス戦略について聞いた。全4回のうちの第4回。

あえてターゲットを絞るコンセプトショップ

『リユース市場データブック2024』(リユース経済新聞社刊)によれば、2025年には3兆2,500億円の市場規模になると予測されている日本のリユース市場。しかし、海外のマーケットを合わせるとその経済規模は計り知れない。

そんな日本のリユース市場のなかで、国内最大手として君臨するセカンドストリートは、海外にも100店舗以上を出店するグローバル企業。老若男女に愛される総合リユースショップとして、今も業界屈指の売上を伸ばし続けている。

一方で、昔と比べて人々の“古着”に対する抵抗感が薄れてきていると言われているが、より多くの消費者にリユース商品の魅力を感じてもらうためには、ターゲット層に合わせたお店づくりが重要だと社長の一戸は語る。

「若い世代を取り込んでいくには、ターゲット層に合った商品を提供することが大切。大型の店舗であれば、オールジャンルの商品を並べるようにしますが、都市部にある狭い店舗などでは商品を絞っていく必要がある。

なので、一部の店舗ではコンセプトショップとして、特定のジャンルに絞った商品を並べているんです。例えば、高円寺店ではヴィンテージアイテムを多く取り揃えるなど、地域やお客様の年齢層に合ったお店づくりを心がけています」

ただ店頭に商品を並べるのではなく、若い世代のニーズに合わせて、店舗のコンセプト自体を変えていく。出店する地域の文化や年齢層に合わせたお店づくりは、企業のブランディング戦略としても大きな意味を持つ。

さらに、ラグジュアリーブランドを多く取り扱う、「三条河原町通店」や「神戸三宮センター街店」などのコンセプトショップを展開したことで、ハイエンドなアイテムを求める消費者層も獲得。企業としてのイメージも変化させてきた。

「もともとセカンドストリートには、ハイブランドを手頃な価格で買えるというイメージがあったのですが、どちらかというとカジュアルな路線で展開してきたので、ラグジュアリーなお店とは少し違う印象だったんです。

でも、これからはラグジュアリーな領域にも踏み込んでいくべきだと思い、それまでのセカンドストリートのイメージを変えるべく、外装にも変化を加えながらコンセプトショップの出店に力を入れてきました」

商品のジャンルを絞ることで消費者のニーズにダイレクトに答えることができるコンセプトショップ。それはセカンドストリートにとって、顧客の期待を上回るサービスの提供に欠かせない存在なのだ。

一戸綱樹/Tsunaki Ichinohe
1967年北海道生まれ。34歳で美容師からセカンドストリートのアルバイトに転職。2001年にフォー・ユー(現・セカンドストリート)に入社し、2010年にゲオホールディングスのリユース店舗運営統轄部部長に就任。2023年4月には、セカンドストリートの代表取締役社長に就任し、ゲオホールディングスの上席執行役員も兼任している。

“セカストインテリア”の誕生秘話

今では、メンズ向けのファッションのみを取り扱う「新宿店」や、ハイプストリート&ラグジュアリーに特化にした「スペイン坂店」など、日本各地にコンセプトショップを構えるセカンドストリート。

他にも、2013年からアウトドアグッズの専門店を運営しており、2019年からは楽器専門店ブランド「セカスト楽器」をオープンさせた。

そんなセカンドストリートの多様な店舗のなかでも、特に個性的なのが家具・家電専門店「セカストインテリア札幌八軒店」だ。道内最大級のスペースと商品数を誇る家具と家電の専門店は、一戸にとっても大きな挑戦だったという。

「家具や家電などの大型の商品は、店舗が狭いとどうしてもスペースが限られてしまう。また、販売した数よりも仕入れた数の方が上回ってしまうと、店舗の在庫に滞留する商品が増えていってしまう。

そこで、広い物件を家具と家電の専門店としてオープンすれば、より多くの商品を店頭に並べることができ、買い取りと販売の回転率を上げられると考えました。

特に、家電はずっと倉庫に置いておくと経年劣化してしまい、故障や不良品などの原因になってしまうこともある。価値のある商品をできるだけスピーディーに店頭に並べ、しっかりとお客さんに見てもらえるようにしたかったんです」

スキーウェアなどのアウトドア用品の需要が高い北海道は、以前からセカンドストリートのなかでも売り上げが高い地域のひとつ。創業間もない頃からエリアを拡大してきた北海道では、消費者にとっても親しみのあるショップだった。

そんな北海道の地に誕生した「セカストインテリア札幌八軒店」は、2025年3月にオープンしたばかりだが多くのメディアに取り上げられ、今もたくさんのお客が訪れているという。

セカンドストリートのこれから

すでに世界で1000店舗を突破したセカンドストリートだが、これからさらに事業や店舗数を拡大していくと語る一戸。今後のセカンドストリートはどう変わっていくのだろうか。

「今はまだ世界で1000店舗ですが、2029年3月までに国内だけで1000店舗を突破したいと考えています。もちろん競合他社も同じ市場のなかで発展していくと思いますが、私たちはこれまでのビジネス戦略を大切にしていきたい。

また、世界的にサステナビリティが広がっている時代なので、これから“リユース”は人々の生活の一部になってくるはず。年に1回しか来店されないお客様を、どうやったら2回、3回と増やしていけるか、それが今後の課題ですね」

かつては趣味のひとつとして考えられていた“古着”だが、今では一大市場にまで成長している。2030年に市場規模が4兆円を超えると予想されているリユース業界は、まさにこれからが見どころなのだろう。

「お客様に『ありがたい』と思ってもらえるようなお店に、セカンドストリートはなっていかないといけません」。

「お客様が住んでいる地域によって、出店している店舗のスタイルも違う。総合リユースショップにしか訪れたことがないお客様には、『専門店やコンセプトショップもありますよ』とアプローチをしてみる。

お客様ひとりひとりの行動履歴などを見ながら、ワン・ツー・ワンで対応できるような、すべてのニーズに答えられる企業にしていきたいです」

経済が不景気の状態であっても、上質な商品がお手頃な価格で手に入るリユースショップ。それは、いつまでも消費者の味方として存在し続けるのかもしれない。

TEXT=坂本遼佑

PHOTOGRAPH=古谷利幸

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