PERSON

2025.06.24

ゲオとの合併、コロナ禍や海外進出の苦戦…、セカンドストリートが世界1000店舗を達成したビジネス戦略とは

2025年に世界で1000店舗を突破した総合リユースショップの2nd STREET(セカンドストリート)。その代表取締役社長を務める一戸綱樹にロングインタビュー。30代で美容師からショップ店員に転身した意外な経歴や、セカンドストリートのビジネス戦略について伺った。全4回のうちの第2回。

追い風となった「ゲオ」との吸収合併

今では世界に1000店舗を構える人気リユースショップにまで成長したセカンドストリート。1996年にフォー・ユーという会社を立ち上げたことが始まりとされるが、現在はゲオホールディングスの子会社として運営されている。

セカンドストリートの代表取締役社長を務める一戸綱樹が、ゲオ(現・ゲオホールディングス)に入社したのも、2008年にフォー・ユーが連結子会社化した時。入社してすぐにリユース店舗運営統轄部の部長を任された。

「やはりゲオホールディングスと合併したことは、セカンドストリートにとって“追い風”になりましたね。そこで資金力が一気に上がったので、店舗数を大幅に伸ばすことができました」

そんなセカンドストリートが、急激に店舗数を増やしはじめたのは、2010年の手前頃。レンタルビデオ店「ゲオ」との併設店がきっかけだった。

「2013年に、正式にゲオに吸収合併されることになったのですが、それまではゲオのレンタルビデオの店舗に、古着を販売していた『ジャンブルストア』というブランドを併設させるプロジェクトを進めていました。

しかし、ゲオの店舗にスペースを空けてもらって、同じ店舗内で古着を販売しはじめたけれど、来店されるお客様はレンタルビデオを求めているので、店内に古着が並べられていても興味は薄い。

異なる業種のブランドをひとつに統合したことで、マーケティング戦略を組むのが難しくなっていたんです」

レンタルビデオ店との合同営業は、セカンドストリートとって苦戦することも多かったと語る一戸。古着とレンタルビデオを同じ店舗に併設にしたことによって、お店の方向性が少しわかりづらい印象になっていたのかもしれない。

一方、ゲオとの協業で新しいエリアへの進出を果たしたセカンドストリートは、その後も総合リユースショップとして出店規模を拡大。2016年には500店舗を突破する一大事業にまで成長を遂げている。

一戸綱樹/Tsunaki Ichinohe
1967年北海道生まれ。34歳で美容師からセカンドストリートのアルバイトに転職。2001年にフォー・ユー(現・セカンドストリート)に入社し、2010年にゲオホールディングスのリユース店舗運営統轄部部長に就任。2023年4月には、セカンドストリートの代表取締役社長に就任し、ゲオホールディングスの上席執行役員も兼任している。

コロナ禍を救ったオンラインストア

2020年に世界的な混乱を巻き起こした新型コロナウイルスの感染拡大。飲食店をはじめ多くの企業や商店を苦しめたパンデミックだったが、セカンドストリートもその渦中で悪戦苦闘していた。

「当時は、社員だけでも1900人ほどいたので、全社員の給料を保証するのは大変なことでした。古着などを扱う総合リユースショップは、まだ“生活必需品”とまでは言えないので、東京都からの休業要請に従うしかなく。

最初は未知のウイルスにどう対処していくか悩みましたが、他の経営陣とも連携しながら慎重に議論を重ね、自分たちにできることを見つけようと、暗中模索のなかで頑張っていました」

そんなセカンドストリートを救ったのが、オンラインストアでの商品販売。街中の店舗を開けられない状況のなか、社員一丸となってECでの事業拡大に力を入れることで、どうにかコロナ禍での経営悪化を防いだ。

「それまで流通倉庫で商品を撮影して、オンラインストアに写真をアップしていたのですが、コロナ禍では各店舗の従業員が商品を撮影して、直接オンラインストアに出品できるシステムを構築しました。

閉店している店舗のスタッフたちも、オンラインストアならお客様と対面せずに販売ができる。まさにセカンドストリートの窮地を救う打開策でしたね」

現在、セカンドストリートのオンラインストアは、掲載アイテム数が140万点を超えている。

海外進出のカギは“SNS”の活用

そんなコロナ禍での経営危機をどうにか乗り越えた一戸は、2023年4月にセカンドストリートの代表取締役社長に就任。日本全国に806店舗を抱える大企業の経営者になっていた。

その頃には、セカンドストリートも海外に55店舗を展開するまでに成長。しかし、アメリカやマレーシア、タイ、台湾での事業拡大には、国や文化の違いという大きな障壁が立ちはだかっていたと語る。

「一番大きな障壁は、やはり法律の違いですよね。中古販売に対する法律が国によって違うので、それをどう対処して事業を拡大していくのか。あとは、安定的に買い取りの量を確保できるかが、会社にとって大きな問題でした。

いくら商品が売れても、買い取りの数が少なければ、お店として立ち行かなくなってしまう。国や地域によって人気のある商品も違うので、お客様のニーズにしっかりと答えられるかと、どこか不安な部分もありました」

中古品の買い取りという文化が根付いていない地域で、どう衣料品に特化したリユースショップを経営していくのか。その糸口となったのが“SNS”を使ったマーケティング活動だ。

「海外でもSNSの影響力は大きいので、買い取りのやり方やメリットはInstagramやFacebookで紹介。ときには、有名なインフルエンサーに出演してもらい、セカンドストリートの魅力を広くアピールしました。

もはや海外で知名度を上げるには、SNSを使うしかないのではないか、というくらいまで世界共通のツールになっている。世代や国境を超えてアプローチできるSNSは、グローバルビジネスの強い味方だと思います」

2025年には、香港とシンガポールにも新店舗を出店したセカンドストリート。これからもさらなる進化を遂げていくリユースショップは、今後もより広い世界へ向かって事業を拡大していくのだろう。

※3回目に続く

TEXT=坂本遼佑

PHOTOGRAPH=古谷利幸

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2025年8月号

100年後も受け継ぎたいLUXURY WATCH

ゲーテ2025年8月号

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2025年8月号

100年後も受け継ぎたいLUXURY WATCH

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ8月号』が2025年6月25日に発売となる。今回の特集は、“100年後も受け継ぎたいLUXURY WATCH”。表紙はNumber_iの神宮寺勇太さん。あくなき探究心が見つけた語り継ぐべき名品とは。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

GOETHE LOUNGE ゲーテラウンジ

忙しい日々の中で、心を満たす特別な体験を。GOETHE LOUNGEは、上質な時間を求めるあなたのための登録無料の会員制サービス。限定イベント、優待特典、そして選りすぐりの情報を通じて、GOETHEだからこそできる特別なひとときをお届けします。

詳しくみる