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2024.10.17

大逆転でのナンバー1評価を勝ち取った、西武・武内夏暉はまだまだ伸びる

プロ1年目で2桁勝利を達成した西武・武内夏暉がスターとなる前夜に迫った。

国学院大学時代の西武・武内夏暉。

パ・リーグの新人王当確

レギュラーシーズンが終了し、残すはポストシーズンのみとなった2024年のプロ野球。ルーキーのなかで圧倒的な成績を残したのが西武の武内夏暉だ。

開幕からローテーションの一角に定着すると、デビューからいきなり5連勝を記録。その後は疲労も考慮されて二軍で調整となる時期もあったが、最終的に21試合に登板して10勝6敗、リーグ2位となる防御率2.17という見事な成績を残したのだ。

1イニングあたりの被安打と与四球で示すWHIPも規定投球回数に到達した投手のなかではパ・リーグで2位となる0.977をマークしており、これは先発投手として超一流の数字である。

チームが49勝91敗3分と歴史的な低迷となったシーズンでこれだけの成績を残したのは見事という他なく、パ・リーグの新人王獲得は決定的と言えるだろう。

高校までは無名、国学院大2年秋の試合で一躍有名に

そんな武内は国学院大から3球団競合のドラフト1位でプロ入りしているが、常に注目度が高かった選手というわけではない。

出身は福岡県の北九州市で、高校時代は福岡県立八幡南高校でプレーしている。

長身の左投手ということで県内では少し名前は知られていたそうだが、全国的には無名で、3年夏の福岡大会でも3回戦で敗退。国学院大への進学も熱心に誘われてというわけではなく、セレクションを受けてのものだった。

国学院大は全国でもトップクラスの投手陣を誇るだけに入学直後はなかなか登板機会がなかったが、2年秋にリリーフとしてリーグ戦デビュー。そして武内の名前が一躍有名になったのが、リーグ戦デビューを果たした2年秋に出場した明治神宮大会だ。

初戦の仙台大戦ではリリーフで登板して3回を1失点、5奪三振と好投。そして続く九州産業大戦では大学で初となる先発を任せられると、8回ツーアウトまで1人の走者も出さないパーフェクトピッチングを見せたのだ。

最終的にはヒットを打たれて大記録達成はならなかったものの、被安打3の無四球完封で初先発を飾った。当時のノートには以下のようなメモが残っている。

「ゆったりと右足を二度上げる二段モーションのスタイル。テイクバックの動きが小さく、ボールの出所が見づらい。それでいて肘の位置は高く、ボールの角度ある。

(中略)

ストレートは数字以上に打者が差し込まれることが多い。シュートしながら落ちるツーシームとチェンジアップが低めに決まり、ストレートと軌道変わらず空振りとれる。

もう少し柔らかさと躍動感が出てくれば面白い」

ただ、この時に2年後のドラフト1位を予感していたわけではない。ストレートのスピードは140キロ台前半がアベレージで打者を圧倒するような勢いはなく、メモにもあるようにフォームの躍動感も物足りなかったのだ。

同学年の東都大学野球でプレーしていたサウスポーでは細野晴希(東洋大→2023年日本ハム1位)のほうが大物感があったことは確かである。

大学4年ではリーグ戦だけでなく日本代表として国際大会に出場

しかし細野がその後になかなか右肩上がりで成長できなかった一方で、武内は劇的にではないものの、着実なレベルアップを遂げることとなる。

3年春からは先発に定着すると、3年秋には4勝0敗でMVPを受賞。4年春は援護に恵まれなかったこともあって2勝3敗と負け越したものの、50回を投げて7四死球と制球力にはさらに磨きがかかり、4年秋には5勝2敗、防御率0.97と圧倒的な成績を残してベストナインに輝いたのだ。

最後のシーズンとなった4年秋で印象に残っているのがライバルとも言える細野と投げ合った10月11日の東洋大戦だ。

7本のヒットは許したもののすべて単打で最後までホームベースを踏ませず、1対0で完封勝利をマークした。この時のノートにはこう書かれている。

「リリースが安定し、特に右打者の内角にしっかり投げ切れるのが大きい。

110キロ台の大きいカーブで打者の目線を変え、130キロ台のスライダー、ツーシームはストレートと見分けがつかない。変化球の質、精度の高さは細野より確実に上。

(中略)

少し左打者の内角を狙って抜けるボールあり、甘く入るととらえられる。もう少し前に体重乗って、ボールの強さ出てくればより攻略困難になる」

メモにもあるように細かい部分で気になる点は残ったものの、この日の最速は150キロをマークしており、2年秋とはボールの力は大きくアップしていたことは間違いない。

また最終学年はリーグ戦だけでなく大学日本代表として国際大会にも出場しており、1年間フル回転で投げてきても大きく調子を落とさなかったのも高く評価されたポイントと言えるだろう。

プロ入り1年目の今シーズンも冒頭で触れたように年間を通じて安定した投球を見せており、大学時代の成長曲線を考えればまだまだここからレベルアップもする可能性も高い。

2年目となる来シーズンはさらに成績を伸ばして、タイトル争いに絡んでくることも期待したい。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=西尾典文

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