渋谷凪咲「いろんなタイプがいるから、グループとして面白くなる」個性が集うNMB48で学んだ”多様性”の受け止め方

トレードマークの笑顔を封印して臨んだ映画、『あのコはだぁれ？』、迫真の演技を見せた渋谷凪咲。主役というリーダー的な立場にあって、現場ではどう周囲を牽引していったのか。渋谷凪咲流リーダー論を探った。インタビュー3本目。　#1本目 #2本目

“その立場”になったことで自覚が生まれた

夏休みの学校を舞台にした映画『あのコはだぁれ？』には、早瀬憩や山時聡真、荒木飛羽ら、期待の若手俳優たちが出演している。

主役＝座長として、どう現場をリードしていったのかとたずねると、「主役だからみんなを引っ張っていかなくちゃという気持ちはあまりなくて。でも、みなさんのおかげで、明るくて和やか、楽しい現場でした」と、渋谷凪咲は笑う。

11年間在籍した大阪・難波を拠点とするアイドルグループ・NMB48では、2018年にグループMのリーダーに就任していた。

だが、もともと人に意見をすることが苦手で、当時は「寄り添うタイプのリーダーでした。メンバーのいいところを見つけて、『ここ良かったね』って、ひとりずつ、コソコソっと伝える感じで（笑）」と、振り返る。

「でも、だんだん渋谷凪咲、個人としてお仕事をいただくようになって、先輩たちが卒業して自分がグループを引っ張る立場になった時に、言うべきことはちゃんと言わなくちゃと思うようになりました。

先輩たちがそうやって引っ張っていってくれたように、今度は私が、グループが良くなるために、みんなのために、（厳しいことも）言わないといけない。

今そういうことを言えるのは自分なんじゃないかって。なので、グループ卒業前は、けっこう意見を言わせてもらっていたと思います」

本人も自覚しているとおり、「立場が人をつくる」のだろう。

先輩の後を必死に追いかけてきた少女は、もがきながらも自分の武器となるものを見つけ、キャリアを積み重ねていくうちに、周囲から慕われ、愛されるリーダーへと成長した。

考え方が違う人同士だからこそ新しい何かが生まれる

さまざまな個性が集うNMB48では、多様性の受け止め方も学んだ。

渋谷は、周囲を気遣い過ぎるくらい気遣い、協調性を重んじるタイプ。そのため、グループとしての和にとらわれず、自分が思うままに振る舞うメンバーに疑問を感じることもあったという。

「5年くらい前のことなんですが、その時は『グループに所属しているのに、なんでそんな行動をするんだろう』と思うことがあったんです。

でも、あるスタッフさんに『いろんなタイプや違う考え方をする人がいるからこそ、グループとしておもしろくなるんじゃない？』と言われて、ハッとしました。

何が正しくて、何が正しくないかは人それぞれなのに、私は自分の正義を振りかざしていたんじゃないかなって」

そう気づいてからは、自分とは異なる思考や価値観を認め、お互いに意見を交わすことで、グループとしての新しい在り方、カラーを模索するようになったと話す。

「一緒に冒険するみたいな気持ちで探していくと、なんか楽しいなって。

自分とは違う考え方の人と交流することで、自分のなかに新しい考え方が生まれるんだなと思うようになりました」

以前渋谷にインタビューした際、「自分では気づけない自分の魅力を周りが引き出してくれることがある。だから、人からのアドバイスや意見は積極的に取り入れるようにしている」と話していた。

誰に対しても、何に対しても、フラットな気持ちで向き合い、いつしか自分の糧にしてしまう。スポンジのような吸収力を持つ渋谷は、これからもきっと、出会うことすべてをポジティブに変換し、自分の新たな魅力にしてしまうのだろう。

最後に、今後の目標を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「グループでの活動があったから、今の自分があると思いますし、これまでやってきたいろいろなお仕事が、演技をはじめ、今のお仕事につながっていると思っています。

だから、いただいたチャンスやきっかけを大事にして、全力で頑張った先に、なりたい自分が見えてくるのかなって」

ピュアと全力投球を武器に、渋谷凪咲はこれからも進化し続けるに違いない。