11年間所属したNMB48を2023年末に卒業し、活動の幅を広げている渋谷凪咲が、2024年7月19日公開の学園ホラー『あのコはだぁれ?』で映画初主演を果たした。トレードマークの笑顔を封印して臨んだ“新たな挑戦”への想いに迫る。インタビュー1本目。 #2本目 #3本目
夏のぞくぞくワクワクする2時間、私にください!
夏休みの学校で行われた補習授業、男女5人の生徒が参加するはずが、教室にはもうひとり、“あのコ”がいた。不気味な歌声に誘われるように起こる不可解な死、そして、次々と起こる怪奇な現象。
『呪怨』シリーズや『ミンナのウタ』などを手がけたジャパニーズホラーの名手、清水崇監督の最新作『あのコはだぁれ?』。主演を務める渋谷凪咲が演じるのは、補習授業を担当する臨時教師、君島ほのかだ。
連続ドラマ出演などはあるものの、本格的に映画に出演するのは初めて。しかも主役だ。オファーを受けた際、プレッシャーはなかったのだろうか。
「もっと演技の仕事をしたいと思ってNMB48の卒業を決めたので、夢のようなお話でした。プレッシャーを感じる暇すらないくらい、1日1日、周りの方と自分を信じ、全力を尽くすことだけを目的に駆け抜けた気がします。
撮影は1ヵ月ちょっとでしたが、作品に関わったみんなで一緒に、いろんなことを乗り越えて、ひとつのものを作り上げた時間は、青春がいっぱい詰まっていて。
人生で何度も青春を感じられるなんて、このお仕事は本当に素敵だと改めて思いましたし、ずっとワクワクが止まらなかったです」
台本に書かれていないのに自然と涙が出てきた
とはいえ、今回演じた役は、普段の明るく、ほんわかした雰囲気の渋谷凪咲とは対極の存在。得体の知れない恐怖を抱え、シリアスで思いつめた表情など、“これまでに見たいことがない渋谷凪咲”がいた。
「実は撮影前に、演技を基礎から学ばせていただいたんです。その先生から教わったのが、撮影中に自分の目の前で起こっていることを、自分の物語として信じ込めるかが大事だということ。
信じ込むためには、自分の中にあるものをいったん全部抜かないといけないんですが、そのための呼吸法も教えていただきました。30分くらいかけて、自分の呼吸だけに集中すると、頭も体もからっぽになってくるんです。
そうすると、自分でも思わなかったような感情が湧いてきて。先生からは『それは心が素直になっている証拠』と言っていただいたんですが、そうやって普段は抑えている自分の感情を知ることも大切だなと感じました」
映画のなかで、渋谷演じる君島ほのかが、恐怖を前に涙を流す場面がある。
それは、台本に書かれていたわけではなく、目の前で起こっていることを、渋谷が“自分の物語”として捉え、自然と湧き起こってきた感情を表現した結果だ。
「(そのシーンで対峙した)役者さんの演技がすごくて、悲しさだったり怖さだったり、いろんな感情が出てきて、気づいたら泣いていて。
自分でも、このシーンで泣いているのは変だなと思ったんですけど、監督に『素直な感情なのだからそのままでいいんですよ』と、OKをいただきました」
役になり切る。映画初主演にして、渋谷は演技の真髄に近づいたのだろう。
「ホラー映画って怖いんですけど、観終わった後に緊張から解放された気持ちよさがあると思いますし、穏やかな日常を『今って幸せなんやな』って改めて感じるきっかけになるんじゃないかなって思います。
この夏のホラー映画といえば『あのコはだぁれ?』だねと言ってもらえる作品になっていると思うので、ぞくぞくワクワクする2時間を、私にいただけたら嬉しいです」