2023年12月にNMB48を卒業した渋谷凪咲の快進撃が止まらない。話題の学園ホラー映画『あのコはだぁれ?』の主演に抜擢されたのをはじめ、バラエティ番組、CM出演やファッション誌専属モデルなど、各方面からオファーが押し寄せる理由に迫る。インタビュー2本目。 #1本目
「自信がない自分を認めて、それを原動力に前に進みたい」
2012年にNMB48第4期生としてデビューし、2014年3月リリースのシングル「高嶺の林檎」で初選抜。2019年にはチームMキャプテンに就任するなど、11年間中心メンバーとして走り続けてきた渋谷凪咲。
もっとも本人は、「最初は歌もダンスもポンコツで、コンプレックスの塊でした」と振り返る。そして、スキルを磨き、経験を重ねた今も「まだまだ自信がありません」と。
「グループにいた11年間、いろんな目標を掲げ、ありがたいことに叶った目標もたくさんありました。でも、そこがゴールかと思ったら、また次の課題が出てくるし、上には上がいると思い知らされる。自分はまだまだだなと、常に思わされ続けています。
でも、いろんなジャンルですごい才能を持った人がたくさんいる世界で、周りと比べてばかりいたら、自分が壊れてしまうというか……。だから、得意なことを見つけて、そこで自分ができる最大限のことをやるしかないのかなって。
それに、自信が持てないのは、きっと私の性格なんだと思います。自信をもって突き進んでいる方を見ると、かっこいいなと思うけれど、たぶん私にはできない。
ただ、自信がないからこそ、周りの方の意見を素直に受け入れられたり、努力し続けられたりするのかなという気もしていて。だから、“自信がない自分”をちゃんと認めて、それを原動力に前に進んでいきたいと思います」
いまや代名詞のひとつとなった大喜利にしても、クイズ番組での珍回答を、「まるで大喜利だね」と共演者がイジってくれたことがきっかけで、本人は大喜利の何たるかも知らなかったと明かす。
「バラエティ番組に出始めた頃は、右も左もわからないからとにかく全力でいくしかなくて、空気を読めていない行動もいっぱいしていました。
それを周りのみなさんがおもしろがって、笑いに変換してくださったことが、今につながっているんだと思います。自分が知らないところで、いろんな方にフォローしていただき、支えられている。本当にありがたいです」
勝手につくった自分のイメージに縛られていた
周囲が思わずフォローし、応援したくなる。そうさせる理由は、渋谷のどんな時も謙虚に、真摯に取り組む姿勢にある。映画初主演となった『あのコはだぁれ?』も、「とにかく1日1日、全力を尽くすことだけを目標に」取り組んだ。
「演技指導の先生から、『目の前で起こっている虚構を、自分の物語として信じ込むことが大切』と教わったんですが、信じ込むには、自分が純粋でいなくちゃいけないし、真剣でないといけないと解釈しました。
“純粋さ”と“信じる”ことは、私の基礎になっていることだし、人生で一番大切にしていること。それは、お芝居でも大事なことなんだなって」
この演技指導では、自分の素直な感情との向き合い方も学んだ。
自他ともに認めるトレードマークは笑顔。だからこそ、どんなに疲れていても、いつも笑顔を絶やさずにいたが、自分の感情をストレートに表現することの大切さに気づかされたという。
「私、自分で自分にプレッシャーをかけて、頑張り過ぎてしまうところがあるんです。
疲れた顔をしたら『なんや残念やな』って思わせてしまうかもしれない。しんどいって思ってしまうと本当にしんどくなっちゃう気がして、その感情を抑えつけてしまったり。それは、私が勝手につくった自分のイメージで、周りの方から言われたわけではないのに。
この映画を通じて、お芝居って、自分のなかにある素直な感情をあらわにするものだって学べたおかげで、自分の気持ちを抑え過ぎず、ちゃんと受け止めてあげようと思えるようになりました。自分が勝手に着ていた重い鎧を脱いで、素直な状態の自分でいられるようになったかもしれません」
コントや大喜利など、新しい扉を開けるごとに、それまでとは違う表情を見せ、周囲を魅了してきた。演技という扉もまた、新たな渋谷凪咲の魅力を開花させてくれたようだ。