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2024.07.16

「株はボケ防止に」「常に疑える人が資産を伸ばす」人気精神科医と88歳デイトレーダーの異色対談【和田秀樹×藤本茂④】

投資歴70年目。資産20億円を築き、88歳の今も現役のデイトレーダーとして勝ち続ける藤本茂さん。「ボケてる暇なんてあらへんで」と笑う“日本のバフェット”の元気の素に迫ります。『80歳の壁』著者・和田秀樹が“長生きの真意”に迫る連載。藤本茂さんとの対談4回目。

考える習慣が日本復活のカギ

和田 藤本さんが書かれた『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え』を読みましたが、とてもいい本ですね。株をやる人、やらない人に関わらず。

藤本 ありがとうございます。

和田 こんな一文がありました。「失敗から学び、成長しようと思わなければ、負けっぱなしの投資生活を送ることになる」と。本当にその通りだと思います。

藤本 本を書こうなんて思ったこともなかったのに。出版社の人に頼まれて「本になんてならへんやろ。誰も買わへんよ」と断ったんやけど。

和田 強引に口説かれた(笑)。

藤本 そう(笑)。「87歳でデイトレードしてる人なんていないし、面白い経験をしてるから、みんなに伝えてほしい」って言われて。案外、売れたみたいやな。12万部って言うてました。

和田 それはすごい。ベストセラーですね。

藤本 いやいや。和田先生は、1億部くらい売ってるんかな。

和田 (笑)。そんなに売れてたらもう仕事はしてません。

藤本 (笑)。まあでも、私の本を見て、シニア層がちょっと株に興味を持ってもらえればうれしいですね。

和田 興味を持ってもらうだけじゃなくて、考える習慣をつけてほしいですね。

藤本 ホンマやね。日本の金融資産は2000兆円くらいあるんです。そのお金がタンス貯金や利息も付かない銀行で眠ってる。もったいないと思いますよ。その何割かでも株式にしてれば、日本の経済もようなるんです。

和田 お金も増えるし、頭にもいい。ボケ防止になります。

藤本 人間、損したくないと思ったら頭使いますからね。ボケてられへんわ(笑)。

和田 本の中にあった次のような言葉も印象に残っています。「常にこれは本当かな、と疑える人が資産を伸ばしていくんです」と。

藤本 世間の人は、みんな人がいいのかもしれへんね。私は証券会社の人間を信じていません。彼らは自分の利益になる商品ばかり売りつけてくる。知識も私より全然浅い(笑)。

和田 自分の頭で考えることが大事、ということですね?

藤本 そう。どれだけ株の勉強をしても、すべてを見通せるわけやない。知らない情報なんて山ほどあるわけだし。今日、災害や戦争が起きたら、前提は一発で変わってしまう。考え方を変えていかないとあかんのです。誰かの言葉を鵜呑みにするんやなく、自分の頭で考えていくしかない。

和田 本当にそう思います。ニュースで見たことが「全部、本当だ」と信じてしまう人が多いですよね。コロナの時も専門家が脅すから、高齢者は「コロナは怖い」と言って、外に出なくなった。それで歩けなくなった人がいっぱいいるんですよ。

藤本 本当は、チャンスがあるわけね。コロナに対して儲けるチャンスが。

和田 (笑)。さすが藤本さん。コロナの危機でも、それを儲けのチャンスと考える。

藤本 最近は、コロナ禍で減っていた外国人観光客が増えてきたでしょ。するとインバウンドの関連株が期待できる。考えれば考えるほど、考えることが増えていくんですわ。散歩してても頭は休まりませんね。

株は心・技・体やで

和田 今はぎっくり腰で散歩も大変でしょうが、やはり歩くのは健康の基本です。

藤本 はい。株は心・技・体やからね。この言葉、テレビでしゃべったら人気がよくて。おかげで動画は127万回再生とか。ありがたいことです。

和田 株の心・技・体。具体的に教えていただけますか。

藤本 「心」は株価に一喜一憂せず、最適な行動を選べる冷静な心です。「技」は最適なタイミングで売買する技術。「体」は健康な心と体。資金面での体力という意味もあります。

和田 そのすべてが揃わないと株で成功できない?

藤本 はい。どの要素が欠けていても、いい結果は出ません。

和田 ぎっくり腰以外で、他に悪い所はないんですか。

藤本 白内障の手術は受けましたよ。

和田 それはよかったです。私は、高齢者はなるべく病院にかからなくていいと思ってるのですが、白内障の手術と補聴器だけは、すべての患者さんに勧めています。はっきりものが見えて視界が明るくなると、心も明るくなるし、頭も冴えるからです。

藤本 目や耳は大事なことやからね。一番大事。

和田 耳は悪くない?

藤本 ちょっとだけね。

和田 最近はいい補聴器が出てるので。聞こえにくいと思ったら使ったらいいです。

藤本 高橋英樹ちゃんがCM出てはりますな。あっ、先生も同じヒデキちゃんか(笑)。字が違うかな。

和田 はい(笑)。でも高橋英樹さんみたいな人でも、歳は取ってくるってことですね。だから目と耳をクリアにして、頭を使い続けることが大事です。

和田 「いかに安く買って高く売るか」が株の基本だから、悪知恵も必要なのでしょうけど。

藤本 だからこそ、世間のことに疑問を持つべきなんですよ。たとえば、日本人の投資家はウォーレン・バフェットが大好きですよね。

和田 はい。

藤本 でも私はバフェットの言うことは鵜呑みにしません。彼がファンドの経営者だからです。

和田 わかりやすく説明してもらっていいですか?

藤本 バフェットが銘柄について語るのは、自分の利益になるからですよ。人気のある自分が発言すれば、株価が上がるとわかっているんです。上がったところで売れば利益が出る。それがバフェットの狙いです。

和田 なるほど。

藤本 バフェットに限った話ではありません。だからこそ「その裏に何があるのか」を考える必要があるんです。

和田秀樹/Hideki Wada(右)
精神科医。1960年大阪市生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て現職。30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わる。『80歳の壁』『70歳の正解』など著書多数。

藤本茂/Shigeru Fujimoto(左)
デイトレーダー。1936年4月2日兵庫県生まれ。19歳から投資を始め、現在もデイトレーダーとして活躍。投資歴70年目に突入して、築き上げた資産は20億円に上る。勝つための投資哲学を公開した初の著書『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え』は12万部のベストセラーに。

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=鞍留清隆

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