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2023.10.02

スピード出世した芸人が消えやすいのはなぜ? NSC人気講師の考えるタイパ主義の弊害

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位の桝本壮志のコラム。

タイパ=正しい!?

「タイパ」。最近、よく目や耳にするワードですよね?

タイムパフォーマンス(時間対効果)を表す略語で、僕が講師を務めるNSCの生徒たちも、いろんなタイパ生活を送っています。

  • 倍速視聴。ながら見
  • ウーバーや冷凍食品を利用
  • リモートワークできるバイトを選ぶ
  • メリットのない飲み会には行かない……etc.

しかし、最近はメディアやネットで「タイパ=正しい」という風潮が強くなり気味。それによって、「ただ時短すればいい」「楽して、稼ぐ手法」と勘違いしている人や、時間に追われて「タイパ疲れ」している若者を量産してしまっています。

さらに、若者のライフスタイルを吸収しようと、会議、商談、ゴルフなど、何でもタイパに結びつけて思考しているリーダー世代が、この風潮に拍車をかけていることも忘れてはいけません。

言わずもがなタイパは“使った時間に対して、どのくらい効果や価値があるか?”なので、個人差があって当然です。脚本家を目指す人が、セリフが聞き取りづらい1.5倍速で見ても効果は薄いですからね。

そこで今週は、「タイパ=正しい」と受け入れる前に押さえておきたい“僕なりの時間哲学”を約1分でお届けしたいと思います。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。

1.日本人がタイパすべきは「終了時間」

先日、40代の番組プロデューサーに、「最近、朝活をして効率よく時間を使っているから、朝9時から会議ね」と言われました。

朝活もタイパ思考も素敵ですが、日本人にありがちなのは“開始時間に厳しく、終了時間にルーズ”なこと。会議に遅刻するとガミガミ言うのに、会議が延びることや残業には悪気がない。

電車もバスも時間通りに来る国なのに、仕事は時間通りに終わらないか、そもそも終了時間を伝えない。

タイパに励む前に、特にリーダー世代は、この妙な慣習に気づき改善するべきでしょう。

2.タイパに操られるとタイパが悪くなる

スピード出世した若手芸人を、「いつの間にか見なくなったな」と感じることがありますよね。

彼らは、実力がなかったわけではありません。豊臣秀吉の「一夜城」のように、本来はじっくりやる“基礎工事”に時間を割けず、芸人としての“骨組み”が弱いまま風雪にさらされたからです。

芸能界でも会社でも“効率よくポジションや権力を得た人は、落ちるときのスピードも速い”。しかも一度、名前が売れたあとに落ちると、リカバリーは一苦労。かえってタイパもコスパも悪くなるのです。

なので、タイパ主義に染まり過ぎて「遠回りすること」「ムダだと感じる時間を過ごすこと」=「悪い行い」と考えるのは早計。

僕の経験則でも、“ムダ”だと感じていた体験や失敗が、のちのち自分のメンタルの決壊を防ぐ“ダム”になったことは多いからです。

3.「やりたいことだけやって生きる」の本質とは?

タイパと同時期に繁殖したセリフが「やりたいことだけをやって生きていく」という定型表現です。

たしかに、やりたいことだけやれるとタイパは良いでしょう。しかし僕は、この続きがあると思っています。

「やりたいことだけやって生きる」ということは、“やめた方がいいことをやめる”とセットになって初めてタイパが良くなるのです。

例えば、もしあなたが職場やコミュニティで、根拠のない陰口を言われていたとしても、“言いたいヤツには言わしておく”と心に決め、余計な反応をしたり、失礼な人間のために「何であんなこと言うのだろう?」と、気にする時間をゼロにすると、“言い返したいことを言わないでおく”という平穏な時間が訪れる。これも立派なタイパなんです。

こういった“やめるべき時間の見直し”はたくさんあるので、ゆっくり目を向けていきましょう。

今週も貴重なお時間をありがとうございました。

また来週お会いしましょう。

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連載
桝本壮志コラム

放送作家を中心に活躍する傍ら、NSC(吉本総合芸能学院)の講師として10年連続で人気投票数1位を獲得している桝本壮志さんのコラム。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

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