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2023.05.18

斎藤佑樹に対応できなかった!? 復活したベテラン、カープ・秋山翔吾の大学時代

坂本勇人などが苦しんでいるなか、開幕からヒットを量産し、鮮やかに復活したベテラン選手がいる。広島カープの秋山翔吾だ。広島カープを盛り立てる35歳、秋山翔吾がスターとなる前夜に迫った。連載「スターたちの夜明け前」とは……

秋山翔吾

開幕からヒットを量産

150キロを投げる投手が珍しくなくなるなど、年々レベルが上がっている野球界では一度成績を落としたベテラン選手が再び活躍するのは以前よりも確実に難しくなっている印象を受ける。

しかしそんななかで、2023年鮮やかな復活を見せているのが秋山翔吾だ。

3年ぶりに日本球界に復帰した2022年は44試合に出場して打率.265に終わったが、35歳となった今シーズンは開幕からヒットを量産。ここまでリーグトップの42安打、リーグ2位の打率.396をマークするなど見事な成績をおさめているのだ(2023年5月4日終了時点)。

斎藤佑樹らには対応できなかった大学1年生時代

そんな秋山は横浜創学館高校の出身で、神奈川県内では少し名前の知られた選手だったが、全国的には無名の存在だった。

初めてそのプレーを見たのは八戸大(現・八戸学院大)に進学した直後に出場した2007年の全日本大学野球選手権、対別府大戦だった。

1年生ながら1番、センターとして出場したものの、結果は4打数ノーヒットに終わり、のちに西武でチームメイトとなる岩尾利弘(当時2年)との対戦でも三振に倒れている。脚力とヘッドスピードの速さは目についたものの、打撃はまだまだ粗削りだった。

その年の11月に行われた明治神宮大会でも2試合で内野安打1本に終わっている。この大会で対戦した関西国際大の伊原正樹(元・オリックス)、榊原諒(元・日本ハム、オリックス)、早稲田大の斎藤佑樹(元・日本ハム)、大石達也(元・西武)は全員が後にプロ入りしており、そういったレベルの高い投手にはまだまだ対応できないというのがこの時の秋山だった。

1年生でトップバッターを任されていることもあってこちらも特に注目していたが、当時のノートにも「大型でスピードあり、スイングの強さもあるが、速いボールには差し込まれる。バットを2回引いてトップを作り、無駄な動きも目立つ」と課題についての記録が残っている。

秋山翔吾のターニングポイント

そんなイメージが一変したのが4年春に出場した2010年の全日本大学野球選手権だ。初戦(2回戦)の佛教大戦では前の試合で2安打完封勝利をあげていた大野雄大(現・中日)からもヒットを放つなど2安打をマークするなど全3得点に絡む活躍でチームの勝利に大きく貢献。

この大会で優勝した東洋大に敗れた準決勝でも乾真大(元・日本ハム、巨人)からセンターにホームランを放っている。1年時にはことごとく抑えられた全国レベルの投手、しかもサウスポーを打ち崩しているという点に大きな成長が感じられるだろう。当時のノートにも以下のようなメモが残っている。

「下級生の頃と比べても明らかに体が大きくなり、しっかり鍛えてきたことがよく分かる。ゆったりとした大きな構えでタイミングをとる動きは小さく、ボールを長く見ることができる。サウスポーの乾に対しても崩されることなく、理想的なミートポイントでとらえてセンターへホームラン。パワーも申し分ないが、スイングの軌道も理想的で、技術で運んだホームランに見える。(中略)体格は立派だがライトの守備の動きは重苦しさが全くなく、低くて速いスローイングの正確さも光る。打撃だけでなく守備、脚力でも目立ち、外野手としての総合力が高い」

このメモを見ても1年生の時から大きく進化していることがよく分かるはずだ。体重は1年時と比べて4㎏増加しているが、プレーのスピードは全く変わっておらず、全力疾走する姿も強く印象に残っている。大学生の場合、1年からレギュラーとして活躍していても上級生になると苦しむというケースも珍しくないが、秋山はリーグ戦の結果に満足することなくレベルアップを目指してきた結果が4年時の活躍に繋がったことは間違いないだろう。

そしてその姿勢はプロに入ってからも変わることはない。結果を残すことはできなかったが、メジャー・リーグに挑戦したのもその向上心をよく表しており、35歳を迎えた現在も打撃技術は更に磨きがかかっている印象を受ける。前述した大学時代に対戦した選手たちのほとんどがユニフォームを脱いでいるなかでも、ここまでの活躍を見せているのは見事という他ない。

本人もあと500本を切った通算2000本安打達成に意欲を見せているが、もし達成となれば大学時代にプレーしていた北東北大学リーグからは初の快挙となる。地方リーグ出身の野手としては同学年の柳田悠岐(ソフトバンク)や1学年下の菊池涼介(広島)なども活躍しているが、ヒットを打つことに関してはやはり秋山がトップランナーであることは間違いないだろう。今後もその卓越した打撃技術で多くのファンを沸かせる活躍を見せてくれることを期待したい。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

連載「スターたちの夜明け前」とは……
どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。

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スターたちの夜明け前

どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=アフロ

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