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2021.05.27

大学2年の春、菊池涼介はまだ名手ではなかった【スターたちの夜明け前】

どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。連載コラム「スターたちの夜明け前」第5回は広島カープの菊池涼介を取り上げる。【第4回 糸井嘉男(阪神タイガース)】

中京学院大時代の菊池涼介 (c)日刊スポーツ/アフロ

2009年4月4日・岐阜県学生野球リーグ 中部学院大戦

現在のプロ野球でセカンドの名手と言えば、ほとんどの人が菊池涼介(広島)の名前を挙げるのではないだろうか。定位置を獲得した2013年から昨年まで8年連続でゴールデングラブ賞を受賞。’14年にマークした535補殺は二塁手としてのシーズン歴代最多記録であり、昨年は二塁手として史上初となるシーズン無失策という大記録も打ち立てている。広大な守備範囲と堅実さを兼ね備えたそのセカンド守備は、長いプロ野球の歴史の中でもナンバーワンと言っても過言ではないだろう。

そんな菊地だが、アマチュア時代は決して有名な選手だったわけではない。高校時代には目立った実績はなく、大学は岐阜県学生野球リーグに所属する中京学院大へ進学。同校は吉川尚輝(巨人)が在籍していた’16年に全日本大学野球選手権で初出場初優勝という快挙を果たしているが、全国大会の出場はこの1回だけであり、菊地が在籍していた当時は全国でも完全に無名のチームだった。筆者が菊池のプレーを初めて見たのは’09年4月4日に行われた中部学院大との試合だが、この時も菊地がお目当てだったわけではない。かつて中日のスカウト部長を務めた野球解説者の法元英明さんから中京学院大の池ノ内亮介(元広島)というピッチャーが150キロを投げると教わったことがきっかけである。この頃は今ほど150キロを投げる投手は多くなく、しかも全国大会に出場していない地方の大学という物珍しさもあって長良川球場に足を運んだのだった。

この試合で当時2年生だった菊池は3番、ショートで出場。相手の中部学院大には後にプロ入りする小豆畑眞也(元阪神)が7番、キャッチャーとして名を連ねているが、当時は2人とも完全に無名の存在である。スタンドには巨人のスカウトが1人だけということもこの試合の注目度をよく物語っていた。菊地はこの試合で5度の守備機会があったが、2回にはエラーも記録しており、決してそのプレーが特別目立っていたわけではない。フットワークの良さには見るべきものはあったものの良くも悪くもプレーが軽く、全体的に雑な印象が残っている。バッティングもタイムリーを含む2安打を放ったが、バットの無駄な動きが気になり、この時点では菊地がプロ入りするとは夢にも思わなかった。

日本代表候補合宿で高レベルのプレーに触れて大成

そんな菊池を見直したのが2年後に行われた大学日本代表候補合宿のことである。この時のメンバーには同学年では鈴木大地(楽天)、1学年下では白崎浩之(元オリックス)、高田知季(ソフトバンク)など中央球界では既に名をはせている選手が参加していたが、その中でも菊池の守備のスピードはフットワーク、ハンドリングとも圧倒的に際立っていたのだ。菊池は筆者が初めてプレーを見た2年春のリーグ戦後にも日本代表候補合宿に参加しており、後にその時に高いレベルのプレーに触れたことが自身の意識向上に繋がったと語っているが、まさにその言葉を裏付けるようなプレーを実践していたのだ。一方でバッティングに関しては2年前と変わらずバットが大きく動く癖が気になり、その年のドラフトで2位指名された時は正直その順位の高さに驚いたが、圧倒的な守備力と大学での成長スピードを高く評価した広島スカウト陣の慧眼(けいがん)は見事という他ない。

改めて振り返ってみると、菊池を大きく変えたのは2年の大学日本代表候補合宿だったことは間違いない。残念ながらこの時の代表合宿は現地で見ることはできなかったが、菊池にとっては初めて全国のレベルに触れた機会であり、その経験をプラスに生かしたことによって菊池の将来が大きく変わったと言えるだろう。そういう意味では筆者が初めてプレーを見た2年春のリーグ戦は、まさに菊池にとって夜明け直前の時期であり、そんな時期の姿を見ることができたのは個人的にも大きな財産である。菊池の持っていたポテンシャルの高さがあったことは当然だが、このように誰かに認められて引き上げられ、高いレベルに触れることで才能が開花した例は少なからずあるはずだ。今後も菊池のように磨けば光る”原石”が、1人でも多く大舞台で輝くスターへと変貌していくことを期待したい。

【第4回 糸井嘉男(阪神タイガース)】

Norifumi Nishio
1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

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