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2023.03.16

WBC大活躍、ヌートバー「好きな言葉は“兄弟”」

カーネクストWBC1次ラウンドB組を1位突破した侍ジャパン。日系選手として初めて侍ジャパンに選出されたラーズ・ヌートバー外野手の奮闘に注目が集まっている。走攻守に存在感を示すだけでなく、ムードーメーカーとしてもチームに欠かせない存在だ。ビジネスパーソンが見習うべき実践的行動学とは。MLB担当として現場で取材するスポーツニッポン柳原直之記者が解き明かす。

ラーズ・ヌートバー選手と通訳の水原一平氏。

ラーズ・ヌートバー(左)と通訳の水原一平氏(右)。

大谷翔平も惚れ込む、侍ジャパンの起爆剤

2023年3月10日の韓国戦後、初のヒーローインタビューを受けるヌートバーが右拳を突き上げ、吠えた。

「ニッポン、ダイスキ! ミンナアリガトウ!」。4万1629人の大観衆からは「タツジ」コールが湧き起こった。

1m90cm、95kgで左打ちの大型外野手。父はアメリカ人でミドルネームは「タツジ」。昨季14本塁打の長打力と選球眼の高さが魅力で、外野ならどこでも守り、返球が最速96.5マイル(約155キロ)を計測した強肩が売りだ。

コロナ禍でマイナー戦が全て中止となった2020年は、航空宇宙企業で肉体労働をしていた苦労人ながら性格は明るく、打席に入る際や好プレー時に地元ファンから「ヌーーーート!」と呼ばれることでおなじみの人気者。栗山監督が「彼と話したら、もう100%全員が好きになる」と予言した通り、すぐにチームに馴染んだ。

試合前のセレモニーでは、他の選手同様に君が代を歌う。来日前に母・久美子さんに教えられ「まだ全部は歌えないが、取り組んでいる最中だ」と語りながら、しっかりと本番までに間に合わせてきた。

日本で出会った好きな言葉は「兄弟」。WBC開幕前の2023年3月5日、大阪の焼肉店で侍ジャパンチーム全員による決起集会が開かれ、「兄弟」という日本語を教わった。

「日本に誰も知り合いがいなかった僕を快く受け入れてくれた。僕にとっては意味のある言葉。僕を家族の一員として受け入れてくれた」

韓国戦直前のベンチではナインから「タツジ!」と呼ばれ、円陣の声出し役を務めたこともあった。中堅手としての度重なるファインプレーや、走塁時の全力疾走はもちろん、何事にも一生懸命な姿がナインの、ファンの心を打った。

ヌートバーを語るうえで忘れてはならないのは、「ペッパーミル」のパフォーマンスだ。コショウを「ひく」「Grind」という言葉には「コツコツ粘り抜く」という意味もあり、昨季は所属チームのカージナルスでヌートバーを中心に好プレーが飛び出すたびにベンチや塁上でコショウをひくように手を回すパフォーマンスが流行。大会前に「望んでくれたら、ぜひやりたい」と話していたが、今や信じられないくらい浸透している。

二刀流・大谷翔平もヌートバーの人間性に惚れ込んでいる1人だ。大会前に同じ代理人事務所の鈴木誠也から「ヌートバーをよろしく」と頼まれていたが「僕が居なくても十分チームにとけ込める。そういう人間というか人柄だと思う。何も心配することはない」と断言していた。

1次ラウンド全4試合で1番で出場し、14打数6安打、打率.429と打線をけん引。負けたら敗退の2023年3月16日の準々決勝・イタリア戦でまずはアメリカ行きのチケットをもぎ取り、ヌートバーがアメリカで侍ジャパンをもてなす姿も見てみたい。

ラーズ・ヌートバー/Lars Nootbaar
1997年9月8日、カリフォルニア州エルセグンド生まれ。高校時代はアメリカンフットボールでQBとしても活躍。南カリフォルニア大から2018年ドラフト8巡目(全体243番目)指名を受けカージナルスに入団。2021年6月にメジャーデビュー。ミドルネームは「テイラー・タツジ」。1m90cm、95kg。右投げ左打ち。 

<著者>柳原直之/Naoyuki Yanagihara
1985年9月11日、兵庫県西宮市生まれ。関学高を経て、関学大では準硬式野球部所属。2008年に三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)入行後、転職し、2012年にスポーツニッポン新聞社入社。遊軍記者、日本ハム担当を経て2018年からMLB担当としてエンゼルス大谷翔平選手を中心に取材。

TEXT=柳原直之

PHOTOGRAPH=AP/アフロ

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