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2023.02.09

【ソフトバンク・周東佑京】育成ドラフトからWBC代表まで上り詰めた"神走塁"の原点とは

2023年3月9日に一次ラウンドが開始されるWBC(ワールドベースボールクラシック)。出場する侍ジャパン全30人がいよいよ正式に発表された。世界一奪還を目指すスター揃いの代表メンバーのなかで、"突出した俊足"を評価され選出されたのがソフトバンク・周東佑京(しゅうとう・うきょう)だ。今回は、"神走塁"で球界を沸かせている周東がスターとなる前夜に迫る。連載「スターたちの夜明け前」とは……

写真:日刊スポーツ/アフロ

日本の切り札となるまで"俊足"を極め続けた学生時代

2023年1月26日、3月に行われるWBCに出場する侍ジャパンのメンバー30人が発表された。大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)、村上宗隆(ヤクルト)などスター選手揃いだが、そのなかで一芸が評価されて選出されたのが周東佑京だ。育成ドラフト2位でのプロ入りながら2年目の2019年に支配下登録されると、翌'20年には世界記録となる13試合連続盗塁を樹立し、50盗塁で盗塁王にも輝いている。

そんな周東だが育成ドラフトでのプロ入りということからも分かるように、早くから注目されるような選手だったわけではないが、高校時代から光るものを持っていたことは確かである。初めてプレーを見たのは'13年夏の群馬大会準決勝、対前橋工戦だ。ちなみにこの日のお目当ては対戦相手である前橋工の原沢健人(元・SUBARU)で、周東の存在を知っていたわけではない。しかし試合前のシートノックから東農大二のショートを守る周東の動きに目を奪われることになる。

当時のプロフィールは176㎝、65㎏とまだまだ細身だったが、とにかくプレーのスピードが他の選手とは明らかに違っていたのだ。グラブさばき、ファーストへ一直線で届くスローイングも高校生離れしたものがあった。実戦でも4度ゴロを処理する機会があったが、すべて流れるような動きでさばき、三遊間の深い当たりに対しても余裕を持ってアウトにしている。試合結果は東農大三が3対2の接戦で前橋工を退けているが、周東の守備がなければ展開は異なったものになっていた可能性は高い。

打順は2番を任されており、非力な感は否めなかったものの、最大の武器であるスピードは当時から素晴らしいものがあった。特にその足が光ったのが6回のワンアウト一塁で迎えた第3打席だ。周東の放った打球は平凡なセカンドゴロとなり、ダブルプレーでチェンジかと思われたが一気に加速して一塁を駆け抜けて併殺を阻止して見せたのだ。一塁までの到達タイムは4.00秒を切ればかなりの俊足と言われているが、この時の周東のタイムはそれをはるかに上回る3.95秒をマークしている。脚力に関しては当時からかなりのレベルにあったことがよく分かるだろう。

一芸を極め続け、日本一の俊足に

そんな周東のスピードは大学で更に磨きがかかることになる。進学した東農大北海道オホーツクでは1年からレギュラーをつかむと、4年間で全国大会に4度出場。アマチュア時代の周東を最後に見たのは4年春に出場した全日本大学野球選手権の対福井工大戦だ。周東はこの試合で1番、サードで出場。第1打席でいきなりセンターオーバーのスリーベースを放つと、三塁到達タイムは10.98秒をマークしたのだ。ちなみに三塁への到達タイムは12.00秒を切れば俊足と言われており、11.00秒を切る選手はなかなかいるものではない。当時のノートにも「脚力はプロでも上位。セカンドを回ってから更に加速しているように見え、ストライドの長いランニングフォームは迫力十分」と書かれている。

ではこれほど目立つ選手がなぜドラフトでは低い評価となったのだろうか。理由はやはり非力なバッティングにあったと思われる。高校、大学を通じて周東のプレーを4試合見たが、長打は前述したスリーベースだけ。大学4年時のプロフィールを見ると180㎝、78㎏となっており高校時代よりは大きくなっているが、まだまだ細く見えたのは確かである。また高校時代は目立っていた守備も動きのよさは変わらなかったものの、スローイングの強さは高校時代より物足りないものがあり、プロ入り後に右肩の手術を受けている。もし守備だけでも高校時代の輝きがあれば、支配下での指名も狙えたのではないだろうか。

ただプロ入り後の順位は低くても、持ち味を磨いて侍ジャパンにまで上り詰めたのは見事という他ない。侍ジャパン初選出となった'19年のプレミア12では4盗塁をマークするなどチームの優勝にも大きく貢献しているが、2023年3月のWBCでも代走の切り札として躍動する姿を見せてくれることを期待したい。

Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

連載「スターたちの夜明け前」とは……
どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てる!

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スターたちの夜明け前

どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。

TEXT=西尾典文

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