ゲーテ読者に薦めたいとっておきの1冊をピックアップ! 今回は滝田洋一の『古典に学ぶ現代世界』をご紹介。

滝田洋一 著/日本経済新聞出版 ¥1,210
先人が遺したゾクゾクするような予言の書
ジブリ映画で再び脚光を浴びた戦前の小説『君たちはどう生きるか』や『風立ちぬ』。映画『君の名は。』の着想のひとつとなった小野小町の和歌を収めた『古今和歌集』。ヒットコンテンツには古典を源泉にした作品が多くあり、私たちエンタメ界の人間は「古典から学べ」と言われながら育つ。
本書は、現代人が抱える問題解決のヒントを古典に求め、そのキーワードを鮮やかにたぐり寄せた名著の探求書だ。アダム・スミスの『国富論』から三島由紀夫の『文化防衛論』まで34冊以上の名著には、息をのむような現世と酷似した社会課題が語られている。外交問題、核戦争の脅威、人間にとって代わる機械(AI)など、その射程は広く、先人が遺した提言や教訓は色あせることなく、むしろ輝きを放ちながら胸に迫ってくる。そんな過去と現代の対話を可能にするのは、“通訳”を担う本著者の膨大な読書量、そして時代を読む確かな洞察力に他ならない。
今夏、日本が大災難に見舞われる「7月5日の予言」を描いた書籍が社会現象となり100万部を突破した。しかし私は、本書こそゾクゾクするような予言の書であり、目を向けなければならぬ必読書ではないだろうかと感じ入った。
桝本壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として数々の人気番組を担当。NSC(タレント養成所・吉本総合芸能学院)の講師も務めており、令和ロマンをはじめ、多くの教え子をM-1に輩出している。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中!

