英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第274回。
確定申告が近づき、領収書の整理を憂鬱に思っていたら…
普段、お煎餅の空き缶に、領収書やあとで処理しようと思っている経理系の書類をぶち込んでいます。年の後半になってくると「そろそろあの缶を開けて整理しなければ」と思いはじめ、けれどやらずにそのまま年を越し、確定申告前ギリギリで泣きながら処理することが多い私です。
しかしこの缶の中を開けてみれば「あ、この案件、請求書を送り忘れているじゃん」「え? 見積書と金額違わない?」など、気づいてしまうこともあります。
何かに気づいてしまった場合は、そこから作業ややりとりが生じますので、本来であれば少なくとも月1くらいでこの缶を開けてチェックしないとならないのです。
缶を開けなければいけない、明日こそ、と毎日思いながらすでに11月。
そんな焦る気持ちを英語ペラペラの韓国人に話したところこう言われました。
Open a can of worms.
直訳したら「芋虫の入った缶を開けろ」です。
私の缶に入っているのは、請求書の控え、見積書、領収書ほか経理系の書類です。芋虫なんて入っているわけありません。
「あ、ごめん。最近覚えたフレーズだから使ってみたくて」
とその韓国の方は笑って、意味を教えてくれました。
can of worms=難しい問題
開けると芋虫がうじゃうじゃ出てくるような缶、というこの直訳。いったん取り組みはじめたら次から次へと問題が出てきて、大変困難な状況になる、ということを表しています。あえてその缶を「開けろ」と言っているのは、「難しい問題に立ち向かいなさい」ということでしょう。
“Open a can of worms.”の使い方
ケンブリッジの英英辞典にはこんな例文が出ていました。
Corruption is a serious problem, but nobody has yet been willing to open up that can of worms.
直訳すると「汚職は深刻な問題だが、誰もその問題に取り組もうとしていない」となります。一度その缶を開けてしまうと、「あの人も、この人も汚職している」「あの企業もか」とわかって、問題がどんどん大きくなっていってしまうため、誰も糾弾していない、という意味合いです。
私の領収書の缶とはスケールが違いすぎますが、これが本来のこのフレーズの正しい使い方でしょう。芋虫がどんどん出てくる気味の悪い缶、つまり一度開けてしまうと、どんどん問題が噴き出す、「パンドラの箱」みたいなものでしょうか。
Open a can of worms.
そう言われて私もやっと重い腰を上げて缶の領収書をまとめ「あ、この経費は〇〇社に請求しなければいけないものだった」というものをいくつも発見。
「あの、〇ヵ月前の経費なんですが、今から請求してもいいでしょうか」と方々に迷惑をかけつつ連絡をしています。すべての災が飛び出したあと、パンドラの箱の底にあるのは、希望。そう信じて今はひたすらに缶の中を整理中です。