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2024.09.07

ネガティブ思考に引き込む“脳のクセ”をジャンケンで直す!? 「プラスの出力」ワークとは

2023年、107年ぶりの甲子園優勝を果たした慶應義塾高校野球部。その背景に“負け知らず”のメンタル術があったのをご存じだろうか? 同野球部のメンタルコーチを務める吉岡眞司氏は、まず「自分の心の状態を知ること」が大事だと話す。ビジネス、ダイエット、受験など、あらゆる分野に活用できる“必ず目標達成ができるようになる”秘訣を『強いチームはなぜ「明るい」のか 』より一部を抜粋・再編集して紹介する。【その他の記事はコチラ】

『強いチームはなぜ「明るい」のか 』
Unsplash / Fadilah Im ※画像はイメージ

脳は「失敗」や「イヤなこと」ほど記憶している

そもそも、心の状態というのは、自分の力でコントロールできるものなのでしょうか。
答えは「できる」です。
そして、そのカギを握るのが、「言葉・動作(態度)・表情」の3つの要素です。

私たちが普段何気なく発している言葉や動作・表情は、無意識のうちに目や耳がキャッチし、脳に届けられ、心の状態に影響を与えます。

たとえば、イヤなことが起きたり、思いどおりにならないことがあったりすると、無意識のうちに「だめだ!」「なんでだよ!」などとマイナスの言葉をつい口にしてしまう、ふてくされた態度や浮かない表情が出てしまうことがあると思います。このような言動や表情は、そのまま自分の目や耳から脳に伝わり、心の状態に悪影響をおよぼします。その結果、心の振り子がマイナス方向に振れて、パフォーマンスを発揮しにくい状態になってしまうのです。

それでは、なぜマイナスの言葉・動作・表情が、心の状態に悪影響を与えてしまうのでしょうか。それは以下のような仕組みです。

私たちの脳には、過去の経験・体験を、そのときの感情とセットで無意識のうちに記憶するという特徴があります。「失敗した」体験と、「恥ずかしかった」「イヤな思いをした」という感情がセットになって、記憶データとして脳の中に蓄積されていくのです。そして、マイナスの言葉を口にすると、「あのしんどかったときについ発してしまった言葉だ」という脳の記憶データに結びついてしまい、そのときの状況や感情が鮮明に呼び起こされてしまいます。そのため、マイナスの感情に苛(さいな)まれてしまうというわけです。

それからもう一つ、脳には「プラスよりマイナスのことを優先的に記憶する」という特徴もあります。そもそも人間はネガティブになりやすい傾向があります。「私ってどうしても物事をマイナスに考えてしまう癖がある」と嘆く人がいますが、人間である以上それは当たり前のこと。私たちは、誰もが普通にマイナス思考になってしまうような脳を持ち合わせているのです。

脳は耳に入った言葉を「誰が言ったのか」関知しない

さらに、私たちの脳には「言葉を『誰が言ったのか』は関知しない」という特徴もあります。つまり、耳に入った言葉に対して、それを発したのが自分なのか、目の前の人なのか、それとも見ず知らずの第三者なのかを、脳は関知せず一つの音声データとして処理をするのです。

たとえば、近くにいる自分とは何の関わりもない赤の他人が、マイナスの言葉を発している(怒鳴っている、悪口を浴びせているなど)状況に出くわし、その言葉をたまたま耳にしたとします。そのとき、あなた自身はその人とは無関係であるにもかかわらず、あなたの脳は自分に向けて発せられた言葉と錯覚して受け取ってしまい、ネガティブな感情になってしまうのです。

逆に、あなたが会社のある部署のリーダーだとして、自分の部下に「なんでできないんだ!」と𠮟責したとしましょう。すると、その「なんでできないんだ!」という𠮟責の言葉は、近くに居合わせたほかのメンバーの耳にも入ります。すると、その言葉を耳にしたメンバー全員の脳に、過去に自分がその言葉を言われたときのマイナスの記憶と感情が呼び起こされ、結果としてチーム全体にネガティブな空気がまん延してしまいます。

それだけでなく、「なんでできないんだ!」という言葉を発したあなた自身も、自分の耳でその言葉を聞くことで、さらにネガティブな感情を高めてしまうのです。

ジャンケンで負けても「よっしゃ!」と叫んで喜んでみる

このように、私たちは自分が口にした、あるいは周囲から聞こえるネガティブな言葉によって、知らず知らずのうちに、心の振り子がマイナスに振れた状態になってしまうわけです。

では、心の振り子をプラスに振るにはどうすればよいのでしょうか? 
答えは簡単で「逆」のことをする、つまりポジティブな言葉で、脳内にプラスのイメージや感情を呼び起こせばよいのです。

「あ、今、気分が今ひとつ上がらないな」と思ったら、口先だけでもよいのでプラスの言葉を口にしてみる。普段から、事態や状況を問わず、このようなプラスの出力を心がけると、脳が勝手に肯定的な錯覚を起こし、心をポジティブな状態にセルフコントロールすることができるわけです。

このような心のセルフコントロール術として、私がメンタルサポートをする方々に、最初に実践してもらう「プラスの出力」のワークがあります。
2人1組で、ジャンケンをします。勝った場合はもちろんですが、負けても、あいこでも、腕を突き上げながら大きな声で「よっしゃ!」と叫んで喜ぶのです。

「負けたのに『よっしゃ!』はおかしいのでは?」と思うでしょう。でも、いいのです。
この「プラスの出力」での重要なポイントは、たとえ論理的につじつまが合っていなくてもかまわないということです。言葉そのものの意味はさておき、大きな声でプラスの状況のときに発する言葉を口にし、脳に届けることでポジティブな感情を呼び起こすことができるのです。

TEXT=吉岡眞司

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