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2024.08.11

なぜすぐ怒るの…? 脳科学的「イライラしている妻」の対処法

「女性は感情的だ」「妻が最近怒りっぽくて困っている」「子供ができてキレやすくなった」「家にいると居場所がない」。妻を持つ男性のこうした悩みは、昔から絶えない。なぜ女性はすぐ怒るのか? 3万人以上に脳科学的ノウハウを講演してきた脳科学者・西剛志がその真相を紐解く。

勝者の思考
Unsplash / Afif Ramdhasuma ※写真はイメージ

結婚年数を経るほど、女性の態度は悪化しやすい

「妻が感情的で困っている」。私も現場でいろいろな相談を受けます。妻の言動にストレスを受けているという話もよく聞きます。

これに関して、日本で夫婦186組を調べた面白いリサーチがあります(*1)。

それは、結婚して1〜14年(結婚初期)に比べると、15〜29年(結婚中期)になると、妻の夫への態度が悪化していく(マイナスな態度が増えていく)という事実です。一方で、夫の態度は一時的に下がりますが、長期的にはあまり変化しないことがわかっています。

日本では女性のほうが結婚年数が経つほど、夫への態度が一般的に悪化していく傾向にあるようです。

なぜ、このように女性の態度は悪化していく傾向にあるのでしょうか?

男性は悪気なくプチネグレクトをしている!?

この原因として考えられるのが、「結婚中期以降になると、妻は夫から無視(威圧)されていると感じており、共感してもらえていないと感じている」という事実です(*1)。

・目の前のスマホに夢中で話しかけられても目を向けない
・今日の夕食は何がいい? と聞かれても「何でもいいよ」と答える
・仕事が忙しく、子供や家事は妻まかせ
・記念日をすっかり忘れてしまっている

そんな悪気なくやっている些細な男性の行為が、妻が自分に関心を向けられていない感覚(プチネグレクト)を感じさせている可能性があるのです。

こうしたプチネグレクトでストレスが積み重なると、脳の司令塔である「前頭前野」が疲弊しやすくなり、イライラやキレやすくなる原因となります(*2)。

前頭前野は、マイナスな感情の炎を消火するため、妻の怒りを未然に防ぐためには、前頭前野を満たしてあげることが大切なのです。

妻にキレられないための4つの処方箋

それでは、前頭前野を満たして、妻から受ける大惨事を未然に防ぐためにはどうすればよいのでしょうか?

1.リフレクティブ・リスニングを徹底する

まず1つ目の有効な方法が「リフレクティブ・リスニング」です。これは「反射的傾聴法」とも呼ばれ、学術的にも効果が立証されている傾聴の技術です(*3)。

ルールはシンプルで、「相手が言ったことをそのまま反射して返す」だけ。

「今日は友人の〇〇ちゃんに会ってきた」と言われたら、「ふーん、そうなんだ」ではなく、「そうなんだ、〇〇ちゃんに会ってきたんだね」と言ってみます。

すると、脳は自分のことを話すと報酬系が活性化するため(*4)、リフレクティブ・リスニングをされると、脳が快感を感じて前頭前野を含めた脳の広い部分が満たされる効果が期待できます。

集合写真を見るとき、私たちは自分を真っ先に見ますが、脳が、最も関心のある自分を認めることで、リラックスして安心できるのです。

2.夜の議論は避ける

 過去を振り返ってみると、妻がキレやすいのは夕方以降に多かったということはなかったでしょうか?

これは「マインドアフターミッドナイト」という現象と呼ばれており、もともとブリストル大学が英国54の都市に住む8億のツイート(70億語/旧Twitter)を4年にわたり調べた結果、早朝は論理的な言葉が多く、就寝前は感情的で衝動的な言葉が多くなることを発見しました(*5)。

前頭前野の活性はストレスで減っていくことから、朝に前頭前野の活性が満タンでも、一日いろんな出来事を体験していくと、夕方以降にはどんどん目減りしていきます。

そのため、朝よりも夜のほうが、小さなことにイライラしやすくなってしまう傾向があるのです。

夜はちょっとした言葉や行為が大きな炎に展開するかもしれませんので、相談するなら朝や休日のお昼にするのがベターかもしれません。

3.成功体験を一緒に喜ぶ

男性は結婚初期よりも結婚中期のほうが、リアクションが減っていく傾向にあることが報告されています(*1)。つまり、相手をほめたり、ねぎらったり、「ありがとう」と感謝を伝える頻度が減ってしまうということです。

カルフォルニア大学の研究では、79組のカップルを調査した結果、大小を問わずパートナーのうまくいった成功体験によく反応したほうが、幸福度や関係性の持続度に大きく影響することがわかっています(*6)。

「今日はホテルで美味しいケーキ食べてきたの!」と言われて「ふーん、そうなんだ」と返すのではなく、「ホテルで美味しいケーキ食べれたんだ! よかったね!」と伝えることが成功の秘訣と言えるでしょう。ポイントは、大小を問わず、どんな小さなことでも喜んであげることです。

4.メールで問題を指摘しない

米国のブリガム・ヤング大学の研究では、相手を指摘する際は、テキストメッセージは相手に大きなストレスを与えて関係性を悪化させてしまうことが指摘されています(*7)。パートナーと何か話し合いたいときは、メッセージよりも対面で話すことが、関係性を維持するために大切な習慣です。

脳の性差は世界でもいろいろな議論がありますが、2024年2月にAIが脳画像だけで90%の精度で男女を区別できるという発表がありました(*8)。もしこれが本当であれば、人間の目では確認できなかった微細な脳の構造の差が男女で存在することを意味しています。男女関係の理解のためにも、今後の研究にも注目です。

脳科学者・西剛志「勝者の思考」
西剛志/Takeyuki Nishi
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて2万人以上に講演会を提供。『世界仰天ニュース』『モーニングショー』『カズレーザーと学ぶ。』などをはじめメディア出演も多数。TBS Podcast「脳科学、脳LIFE」レギュラー。著書に20万部のベストセラーとなった『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』など海外を含めて累計36万部突破。

<参考文献>
(*1)Miduho KASUI, “Characteristics of Husband-Wife Communication and How These Characteristics Differ Depending on How Long the Couples Have Been Married ”日本家政学会誌 Vol. 65 No. 250 ~ 56(2014)
(*2)Heatherton, T. F., & Wagner, D. D. (2011). Cognitive neuro- science of self-regulation failure. Trends in Cognitive Sciences15, 132–139.
(*3)Braillon A, Taiebi F. Practicing "Reflective listening" is a mandatory prerequisite for empathy. Patient Educ Couns. 2020 Sep;103(9):1866-1867.
(*4)Tamir D.I., & Mitchell J.P. “Disclosing information about the self is intrinsically rewarding”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2012, Vol.109(21), p.8038-43
(*5)Dzogang F, Lightman S, Cristianini N. Diurnal variations of psychometric indicators in Twitter content. PLoS One. 2018 Jun 20;13(6):e0197002. 
(*6)Gable, S. L., Gonzaga, G. C., & Strachman, A. (2006). Will you be there for me when things go right? Supportive responses to positive event disclosures. Journal of Personality and Social Psychology, 91(5), 904–917. 
(*7)Schade, L. C., Sandberg, J., Bean, R., Busby, D., & Coyne, S. (2013). Using Technology to Connect in Romantic Relationships: Effects on Attachment, Relationship Satisfaction, and Stability in Emerging Adults. Journal of Couple & Relationship Therapy12(4), 314–338. 
(*8)Stanford Medicine News Center: https://med.stanford.edu/news/all-news/2024/02/men-women-brain-organization-patterns.html

TEXT=西剛志

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